[携帯モード] [URL送信]

第一章 異端の力
其の4

 イリアはソラに電話をしようとするも、幼馴染の体質を思い出し電話をしないことにする。そう、ソラは朝が弱いのだ。だからこそ電話をするより、直接起こしに行った方が効果的。

(いきなり行ったら、ソラ驚くだろうな。でも、起こしてあげないと。うん、行ってみよう)

 考えた後の行動が素早いイリアは踵を返し、駅とは逆の方向へ足を進めた。脳裏に浮かぶのは、不機嫌な表情を浮かべるソラ。これは、幼い時から変わらない。それに、愚痴も加わるだろう。


◇◆◇◆◇◆


 イリアの訪問があることも知らず、暖かい日差しを浴びながらソラはベッドに横になっていた。枕に顔半分を埋め、規則正しい寝息をたてている。一度友人から「寝顔が子供みたいだ」と、言われたことがあった。確かにその寝顔は実年齢より若く、少女のように見える。

 そして下手をすれば、十代前半だと認識されてしまう。それほどソラは、童顔だった。昨日は帰宅後そのまま寝てしまったらしく、服装は私服のまま。しかしこれは、いつものことである。

 その時、チャイムが鳴らされた。ソラはその音に半分瞼を開くと、時間を確認する。七時半――いつもなら熟睡し、眠りについている時間であった。心地よい安眠を阻害され不愉快になり、チャイムの音を無視する。無視していれば相手は留守だと思い、帰ってくれると思ったからだ。

 案の定数回鳴らされた後、チャイムの音は鳴り止んだ。そのことにソラは安堵の表情を浮かべると、再び深い眠りにつくことにした。しかし次の瞬間、先程とは違いドアが叩かれた。

(誰だよ、いい加減にしてくれ)

 気持ち良い気分を害され、布団をスッポリと被ってしまう。だがその音は、一向に止まらない。すると、急に音が鳴り止んだ。今度こそ諦めてくれたのだと思い、眠りに入ることにする。

 だが、再びチャイムの音が鳴り響いた。さすがにここまでやられると、無視することはできない。

 ソラは生欠伸をしながら身体を起こすと、迷惑な相手を確認することにした。ドア近くに設置されたパネルを操作し、訪問者を映し出す。画面に現れたのは、何とイリアであった。

(朝から、迷惑行為を……)

 急に憂鬱になり、出るのを止めようかと思ってしまう。だが、チャイムの音は続く。ソラは寝癖がついた髪を掻きつつ、ドアを開けることにした。イリアの性格を考えると、開けてやらなければ開けるまでチャイムを鳴らすだろう。それに近所迷惑になり、文句を言われるのはソラ自身だ。

「おはよう。あっ! やっぱり、まだ寝ていいたんだ。朝だというのに、早く起きないと不健康だと思うよ。それに、友人と会うのが午前からだったらどうするの? 相手に、とても失礼になるでしょ。ソラって、そういう部分が駄目なのよね。他のことは、シッカリしているというのに」

 ドアを開けると同時に、第一声がこれであった。朝から説教を聞かされると思ってもみなかったソラは、不機嫌な表情を作る。先程のチャイムやノックといい、清々しい朝が台無しであった。しかし、イリアは気にしていない。それどころか、自分の言いたいことのみを喋っていく。

 それは、日頃のイリアから想像できない早口。朝から舌が滑らかだと、思わず関心してしまう。それも、一回も噛まず息継ぎなしで喋り続けていた。だが息継ぎなしというのは流石に苦しかったらしく、肩で息をしていた。それも酸欠状態で、顔は真っ赤に染まっていた。


[前へ][次へ]

4/24ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!