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第一章 異端の力
其の7

 無理に近い頼みに、困惑してしまう。イリア自身、あまり幼馴染に無理難題を言う行為は行わない。しかし相手は、こういう時に限って“友達”という言葉を使う。普段はそのように思ってもいないというのに、友人といって簡単に済ませてしまうのは嫌なものであった。

 腕を組み、真剣に考え込む。どうにかして、二人に諦めてもらうしかない。上手くいって会ってくれるということになったら、イリアはそのように仲を取り繕えばいいのかわからない。それにもし幼馴染の機嫌を損ねてしまったら、取り返しのつかないことになってしまう。

「紹介って言われても忙しそうだし、ダメだと思うし。それに、恋愛に興味ないって言っているから」

「そうなの? そのような男ほど、純情なのよ。だから大丈夫。安心して。別に、イリアの幼馴染みを取ろうと言っているわけじゃないの。ただ、どんな人なのか会ってみたいだけ」

「そうそう、もったいぶらないでね。で、その彼って何歳でどのような仕事をしているのかしら? 同じ、アカデミーの生徒? それとも、会社員? 個人的には、他の職業がいいわ」

 話が恋愛の方向に進むにつれ、真相を聞きだそうとする。今すぐ逃げだしたいイリアであったが、服を掴まれ帰してはくれない。プライバシーと訴えても、二人には関係ないようだ。

 友人達には、彼氏はいない。だからこそ、イリアに男の幼馴染がいるということが面白い対象となってしまう。半分は、嫉妬心からくるものだろう。女の恋愛に対しての感情ほど、恐ろしいものはない。

 故に、ピリピリとした殺気が走った。


◇◆◇◆◇◆


「……どうして私だけ」

 意識が過去から現実に引き戻された瞬間、最初に呟いた言葉はそれであった。結局根掘り葉掘り聞かれ、イリアはそれについて答えてしまった。二人にプライバシーという言葉は、存在しない。ただ自分の好奇心を満たしてもらえればいいという、本当に迷惑タイプだ。

 ――幼馴染は、二人が好きだと言っている職業です。

 その職業を知った途端、友人達は黄色い悲鳴を上げ、顔の原型が崩れるほど喜びはじめた。その理由は、とても簡単。イリアの幼馴染が、連邦所属の軍に所属していたからだ。アカデミーの生徒の間では、軍人はとても人気があった。結婚したい相手ナンバー1という程に。

 イリアが通うアカデミーと連邦とは、深い繋がりがあった。共同研究という名目の下、様々な研究を行っている。その為、連邦の関係者がアカデミーに出入りすることも珍しくはない。

 無論、その中に軍関係者が混じることがあった。そのことを利用し、軍人にメールアドレスを聞く凄い生徒もいるらしい。それは女子生徒だけに限らず、男子生徒も人目を憚かり声を掛けていたりする。

 相手が男の場合は上手くいくことが多いが、女となるとどうも上手くいかない。規律が厳しい中に身を置いているので、そのような行為に興味がない。というのが理由だろう。だが、上手くアドレスを聞き出したとしても結ばれることは滅多にない。互いに忙しく、自然消滅になってしまう。

 イリアは「何故、これほど人気があるの?」と、クラスメイトに聞いたことがあった。すると返ってきた理由とは「かっこいいから」というシンプルな答えに、驚きを覚えたことを思い出す。

 また中には、違う答えもあった。それは「軍服とルックスが合っているから」という惚気に近いものであった。要するに、軍人だったら何でもいいということになってしまうだろう。

 ふと、幼馴染みの軍服姿を思い出す。確かにクラスメイトの言葉のようにかっこいいが、本人の前でそのようなことを言ったら、どのような答えが返ってくるか……多分、素っ気ない返事が返ってくるに違いない。


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