Luke + Guy 一緒に歩こう ルークが動けない身体になってしまった話 普通にシリアスです 「ルーク、待たせたな!」 「おっせーぞガイ!」 病院のベッドの上でぼんやりと窓の外を見ていたルークは、病室に訪れたガイの姿を見て悪態を吐きつつも笑顔を見せた。 「悪ぃ悪ぃ!ちょっと道が混んでてな。だがお望みの物はちゃんと買ってきたぜ?」 そう言ってガイは手に持っていた物をルークに渡した。それは今時の若い子が読みそうな漫画や雑誌だ。ルークはそれを嬉々として受け取り、早速読み始めた。 ガイはそんなルークの姿を見て、悲しそうに顔を歪ませた。 (…この歳で友達と外に遊びに行けないなんて、どれほどつらいだろうか…) ガイは動かないルークの足を見つめ、理不尽な運命を呪った。 ガイとルークが共に遊びに出掛けた際、ルークが不慮の事故に遭った。夏休みで久々にガイとたくさん遊べる。ルークがそう、笑顔で言ったその日に。 歩行者の方の信号は青だった。ガイもルークもそれを確認して渡った。そこに、自動車が突っ込んできたのだ。ガイはルークを庇おうと手を精一杯伸ばしたが間に合わず、ガイの目の前で、ルークは自動車に突き飛ばされた。原因は、運転手の脇見運転だった。 ルークはすぐに病院へ搬送され命を取り留めた。しかし喜んだのもつかの間、告げられた言葉は――下半身麻痺ということだった。リハビリをすれば動くようになると言うが、まだ中学生のルークにこの事実を受け止めることができるのだろうか。ガイが何よりもまず心配したのがそのことだった。感受性が豊かでまだまだ子供だ。しかし、話さなければならない。残酷な事実を告げなければならない。ガイは意を決して、ベッドの上で過ごすルークに話した。 「なあルーク。……足の、ことなんだが」 「――わかってるよ。もう、動かないんだろ、俺の足」 「…っ!!…知って、いたのか」 ガイは目を見開いた。真実を告げるまではつらい思いをさせないように、そう気を付けていたのに。ルークは「知ってたよ」と悲しそうに呟き、話を続けた。 「俺、最初はしばらくすると治って、また歩けるようになるんだと思ってた。でも、皆の態度でわかったよ」 見舞いに来てくれてたガイが、いつもどっか悲しそうな顔してて、それで確信した。そうルークは苦笑いを浮かべながら言った。ガイは、ルークに対してどうしても隠すことができていなかったのだ。ガイは複雑な表情を浮かべ、ルークを見つめた。ルークはそんなガイを見て、悲しそうに、笑顔を浮かべながら話を続けた。 「ガイには今までもずっと迷惑かけてたのに、更に迷惑かけることになるなんてな。俺さ、将来はガイに迷惑かけないようにして、今度は俺がガイを助けてやろうって、…思ってたんだぜ」 ルークはそう言って、自嘲の笑みを浮かべた。そして悲しそうに、続けた。 「なのに…余計に迷惑かけることになっちまってさ…下半身麻痺ってことは、排泄とかも…面倒見てもらわなきゃいけないんだろ?そんなの、気持ち悪いだろ…?小さい子ならともかく、俺、中学生だぜ?気持ち悪いに決まってる…!!」 「ルーク、そんなことは」 「うるさいッ!!」 ルークが大声を上げてガイの言葉を遮った。そのことにガイは驚き言葉を失った。ルークがこんな大声を上げるのは初めてで…こんなに悲痛な表情を浮かべているのも、初めてだった。 「もういいよ!ガイはいつだって俺を励ましてくれて、慰めてくれて、俺がガイに嫌なことをしても、大抵は許してくれて…ほんとは嫌だったんだろ?!だったら嫌だって言ってくれれば良かったのによ!!そうじゃなきゃ、俺、馬鹿だからわからねえんだ…!だから俺、馬鹿なりに考えたんだけど…ッ」 そこで言葉を切ると、ルークの眼からとめどなく涙が溢れ出した。その涙はあまりに綺麗で、汚れを知らなくて。ガイはその涙を拭ってやりたくなったが、ルークの言葉を待った。 そして、ルークが言った。 「今の俺が、ガイに迷惑をかけずに済むには……っ…死ぬしかないんだ……ッ」 その言葉を聞いて、ガイは視界が怒りのあまり真っ赤に染まった。どうしてそんな結論を出すんだ。本当におまえは馬鹿だ、ルーク! 「この……馬鹿野郎がッ!!!」 気付けば俺はルークを殴っていた。それからルークに吐き捨てるように言っていたのを覚えているのだが、何を言っていたのかは覚えていない。感情のままに言ったのだろう。 死ぬのなんか許さない。死んでしまえば楽になれるだろう。だけど残された者はどう思う?ずっと悲しみながら生きていかなきゃいけないんだぞ。それが嫌なら、必死にリハビリして歩けるようになって、皆を笑顔にしてみせろ。俺も手伝うから。だから生きろ。死ぬなんて悲しいこと言うんじゃない。 きっとそんなことを言ったはずだ。俺はルークに生きていてほしいから。何よりもルークが大切だから。そしてルークは、また歩けるようになるため、生きることを決意した。 それから今まで、ルークは何度も挫けかけた。…いや、挫けたのだ。あまりのつらさに周りに当たり散らしたこともあった。死にたいと漏らしたことも、事故の時に死んでいればよかった、と口にしたこともあった。今まで当たり前にできていた事が突然できなくなって、もどかしくて…動かない足を殴ったりもした。その度に俺はルークを励まして、時には怒鳴った。 一番酷かったのは、ルークがカッターを手にして、…自分の腕を切ろう時だ。どうしたらいいかわからなくなったのだろう。それほどリハビリがつらく、死にたくて、生きたかったのだろう。 「何してるんだルーク!腕を切ってもなんにもならないだろ!!」 「ガイ…おれ、もうわかんねぇ…みんなを笑顔にしたいって、そう言ったけど…約束したけど…つらいんだ…!」 ルークはそう、涙を流し、震えながら言った。その姿を見るのがあまりにつらくて、悲しくて。俺はルークをぎゅっと抱きしめて、安心させるように言った。 「…大丈夫だ。俺がいる。大丈夫だから…もう、そんな馬鹿な事はやめろ。そんな事をしても、おまえだけじゃなく、おまえの周りにいる人が傷付くだけだ」 「ガイ…」 「つらければ吐き出せばいい。俺が一緒に背負ってやるからさ。一緒に生きよう、ルーク」 そう言って抱きしめたままルークの頭をくしゃりと撫でてやると、ありがとうと言ってわんわんと泣いた。 それから時は過ぎ、1年が経った。この1年でつらいことがたくさんあった。しかし楽しいことも嬉しいこともあった。ルークの友達が見舞いに来てくれて、その度に俺を手伝ってくれたり、ルークに笑い話や楽しい話をしてくれたり。他にもルークに勉強を教えてくれたりしてとても助かったし、疲労していた俺を労ってくれたり励ましてくれたりもして…ルークは本当に良い友達を持った。 「ガイ、…いつもありがとうな」 今日のリハビリが終わり、病室に戻ったところでルークが突然礼を言った。 「突然どうしたんだよ」 「いや…なんか言いたくなってさ。いっぱいつらい思いもさせちまったし…」 「何言ってんだ!つらいことも一緒に背負うって言っただろ!」 俺は笑いながらそう言って、ルークの背中を軽く叩いた。 ルークが笑顔を見せてくれるだけで、俺は嬉しかった。だからつらくても頑張れたのだ。いや…本当につらかったのはルークなのだから、弱音なんて吐いてたまるものかと。俺はそう思い歩んできたのだ。 「…そうだったな。足は動かないけど…目は見える。耳も聞こえる。ガイの姿が見えて、ガイの声が聞こえるだけで、俺は安心するんだ」 ルークは穏やかな笑みを浮かべながらそう言って、俺の手を取った。 「こうして腕も動く。感覚だってある。温かいガイを…感じることができる。今はまだおまえと一緒に歩くことはできないけど、いつか歩けるって信じてる。ガイも信じてくれてる。だから俺は…頑張れる、生きていられるんだ」 「ルーク…」 「いつもそばにいてくれて…ありがとう、ガイ」 ルークは照れ臭そうに笑みを浮かべてそう言った。ルークのその言葉を聞いた俺は、思わず涙腺が緩んだ。そんなふうに想ってくれていたなんて。 俺の様子に気付いたルークが茶化すように言った。 「なんだよ、ガイ涙目になってんぞ!泣きたい時は泣けばいいってガイいつも言ってんじゃねーか、泣けばいいだろ!」 「う、うるさいな!そういうことじゃねえんだよ!全く…」 俺はそう言って片手で両目を覆った。本当に泣いてしまいそうだ。だがまだ泣くところではない。俺が泣くのは、ルークと共に歩けるようになった時だ。 俺はルークを見つめ、言った。 「…ルーク、歩けるようになるまで…いや、歩けるようになっても、ずっと一緒に頑張ろうな!」 「ああ!頼むぜ、ガイ!」 一緒に進もう 結構シリアスな話でした〜書いてて悲しくなったw 最初はルークの足は二度と動かないって設定だったんですけどそれだとあまりに悲しすぎるってことで変えました ちなみにルークには両親がいない設定なのでガイが親友兼親や兄の役割を果たしてます 2011.9.14 [古][新] [戻る] |