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Luke + Guy
いたいのいたいのとんでいけ
屋敷時代メイン。ほのぼのを目指したはずだった作品
お題お借りしました→保護者ガイ同盟




あれは誘拐されたルークが屋敷へ帰って来て間もない頃、歩行練習をしていた時だ。ルークを俺から少し離れた場所に立たせ、そこから俺がいる所まで歩かせ辿り着いたらまたそこから、といった地道な練習方法だ。

「みぎ、ひだり、みぎ」

「そうだ。その調子だぞルーク」

「ひだり、みぎ」

今回は順調に歩けている。今日はいつもより練習が早めに終わるのではないかと思った時だった。あともう少しで俺の元へ着けると思ったせいか、ルークが少し急いだだけでリズムが狂ってしまい、彼は見事なまでに転倒。痛みなのか悔しさなのかはわからないが泣き出してしまった。

「う、わあああんがいいいい!」

「おいおい大丈夫かルーク?擦りむいちまったか?」

泣きじゃくるルークの膝を確認したが傷はなかった。どうやら打っただけで済んだようでその痛みでルークは泣いているのだろう。
しかし普通なら怪我をする心配のない場所で練習をさせるのではないだろうか。そういったところから公爵からはルークに対した愛情をまるで感じなかった。公爵にとって今のルークは人形でしかないのだろうか。
そんなことを考えながらルークの膝を優しく撫でてやった。しかしいつまで経っても泣き止む様子はない。そこで困った俺は幼い頃にヴァンによくやってもらっていたことを思い出した。

「そうだルーク!魔法の呪文、教えてやろうか」

「うええ…、ま、ほう?」

「ああ。それを唱えるとな、痛みがあっという間に引いちまうんだ」

「…ほんとに?」

「ホントだよ。一回しか言わないからよく聞くんだぞ?」

そう言うとルークはこくりと頷いた。彼の瞳はまだ涙に濡れていたが、魔法の呪文に興味を持ち目を輝かせていた。
それから俺が一言。

「いたいのいたいのとんでいけー!…どうだ?痛み、引いただろ?」

「…うん!もういたくないよ!おれ、もうだいじょうぶ!」

するとルークは先程まで泣いていたのが嘘だったように笑顔になり、自分が立っていた場所へと戻り再び練習を始めた。確かに魔法の呪文と言えるのではないだろうか。たった一言で子供は痛みが引いたと思い込むのだから。



それから数年が経ち、軟禁されていたルークは結局外出できるようになった。剣を振るい、戦うようになった。だから、いつ重傷を負ってもおかしくはなかった。

「グランドクロス!」

「ブラッディハウリング!」

仲間達が次々と敵を倒していく。もちろん俺も前に出て斬り裂いていく。そしてもう少しで戦闘が終わるといったところでルークの背後から敵が襲い掛かった。ルークは油断していて防ぐにも間に合わない。俺も剣を振るうには間に合わない。だから俺は、

「ルーク!」

「え…!」

とっさに地面を蹴ってルークを庇うように敵の前へ飛び出る。そして敵の刃が俺の身体を斬り裂いた。痛みには慣れたものだが、今回は少し傷が深い。予想より血が噴き出したのだ。そう冷静に状況を把握しながらも俺はそのまま倒れ込んだ。意識はしっかりしていて、すぐ仲間達の声が聞こえた。
その敵はすぐにルークに倒され、ティアが急いで俺の元へ駆け寄り治癒術を施してくれた。傷はみるみるうちに治っていき、残ったのは血の跡だけになった。まだ少しの痛みは感じるが。

「ガイ!あなた馬鹿?!」

「そうだよガイ!俺避けれたかもしれないのに…!」

「はは…悪いな皆」

俺はそう笑みを浮かべて立ち上がった。ティアが慌てて静止の声を掛けてきたが平気だと言って剣を鞘に戻した。ルークはというと申し訳なさそうな顔をしている。その後ろからアニスが可愛らしいツインテールを揺らし尋ねてきた。

「ガイ、ほんとに大丈夫なの?」

「ああ、平気さこれぐらい!皆もそんなに心配しないでくれ」

「…それならいいですが。では、行きましょう」

「ガイ、無理はなさらないでね」

「わかってるよ」

そして俺達は再び歩き出した。皆が俺より前を歩く。しかしルークは俺の隣から離れようとはしない。

「何か言いたそうだな、ルーク」

「あ…うん。ごめんな…俺が油断してたから…」

「ルークが気に病むことじゃないさ。それに、今度から気をつければいいだろ?」

「…ああ」

ルークは俯いたまま返事をした。その声色はどこか悲しそうで気弱に感じた。きっと先程のことを気にしているのだろう。断髪をしてからと言うもの、気にするなと言っても気にする卑屈野郎になったから。
するとルークは意を決したように顔を上げ俺に向かって。

「いたいのいたいのとんでいけー!…でなんて飛ばねえけどさ…」

「…!ルーク、覚えていたのか」

「当ったり前だろ!歩行練習のときよく言われてたんだからさ」

「歩行練習だけじゃないけどな」

「で、でもさ、ちょっとはマシだろ?」

「ああ、ありがとうルーク」

ルークの優しさに触れ嬉しくなると同時に、心なしか痛みが少し引いた気がした。いつの間にかルークはこんなにも成長していたのかと、母親の心境になった。
俺もルークと同じことを言った。

「ルーク。いたいのいたいのとんでいけー」

「な、何だよ?俺どこも痛くねえぞ?」

「心、痛いんだろ?」

「え、あ…うん。…ありがとな、ガイ」

「どういたしまして」

ルークの心の痛みも、いつかなくなってしまえばいいのに。だから俺はまた唱える。魔法の呪文を。




いたいのいたいのとんでいけ




お題を見て思い付いた話です。
ルークはガイに教えてもらったいろんなことを忘れてないような気がします。くだらないことでもきっと。ルークにとっては全てが大切な思い出なんでしょうしね
2012.7.4 加筆修正


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