Luke + Guy
渦巻く感情
屋敷時代のふたりですが黒ガイがいます。まだルークを殺そうと思っているときのガイが。
ルークが全て真っ白の状態で屋敷に帰って来てからしばらく経った。あの頃に比べると成長したものだ。あいつは何も知らない赤子同然だったのだから。
「ルーク、もう寝る時間だぞ」
「はーい!」
そう言ってルークは無邪気な笑顔でベッドへと飛び込んだ。成長したと言っても精神的にはまだまだ10歳に満たしていないが。それでも歩くことや言葉など必要最低限のことは随分覚えた。
「えへへ、ふかふかー!」
「こらこら跳びはねるな。ほら、早く寝るぞ」
まだはしゃぐルークを落ち着かせ、ベッドに寝かせる。子供はいつだって元気だとこいつに何度も思い知らされる。世話係の俺は丸一日ルークの相手をして疲れているというのに。
「ガイおやすみー」
「ああ、おやすみルーク」
ルークが寝付きやすいように身体をぽんぽんと優しく叩いてやる。いつの間にか俺はすっかり母親のような心境になってしまっていた。…こいつは、ルークは憎むべき存在なのに。
手を伸ばせばあっさりと殺せる位置にいるのに、躊躇ってしまうのは何故なんだ。殺すことが怖いのか、情が移ってしまったのか。公爵に俺と同じ思いをさせてやる目的でここにいるというのに。弱々しい自分に腹が立つ。
すぅすぅと可愛らしい寝息が聞こえた。俺が物騒なことを考えている間にルークは寝たようだ。その寝顔は幸せに満ちていた。人の気も知らないで。こいつにわかるはずはないが。
俺もしばらくして眠りについた。
「うぁ…うあああ…!」
ルークの泣き声。それが耳に入り俺は目を覚ました。身を起こしルークを見ると、彼の瞳から大粒の涙がぽろぽろと落ちていた。
「どうしたんだルーク。怖い夢でも見たのか?」
ルークの頭を撫でながら優しく問い掛けた。このようなことは今までにも度々あったのだ。どんな夢を見たのかは詳しく話してくれたことはないが。
落ち着いたのかルークが口を開いた。
「…ガイが、いなくなっちゃう、ゆめみたの…」
「俺が?」
「うん。まっくらで、ひとりぼっち、で…ガイがいなくて、こわかった」
どうやらルークは俺がどこかへ行ってしまう夢を見たようで、ひとりぼっちになり不安になって泣いたようだ。
だが現実は俺がいなくなってもひとりぼっちではない。メイド達もいるし何より公爵とシュザンヌ様がおられる。怖がる理由はないのだが。
「俺がどこかへ行っちまってもルークはひとりじゃないだろ?」
「ちがう、おれはひとり…」
そう言い張るルークは俺にしがみついてきた。よっぽど不安なのだろう。
ただ、何故ひとりと言うのか。もしかしてルークは、皆が「早く昔のルークに戻ってほしい」という感情しか向けていないことに気づいたのだろうか。そこに愛情というものは存在しないのだ。皆、今のルークではなく過去のルークを求めているだけに過ぎない。
まさかな、と鼻で笑いルークを安心させるために口を開いた。
「俺はルークとずっと一緒にいるよ」
そう言ってやると不安げだったルークは安心したように笑った。その言葉に裏があることを知らずに。
渦巻く感情
(俺が、復讐を果たすまではな)
黒ガイを書いてみた話。ガイにとってはいつでもルークを手に掛けることができたんですよね。殺意を抱いていたガイをルークの一言が変えたって今思うとすごいなおい
2012.4.23 加筆修正
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