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Luke + Guy
暗闇の中
シリアスな話。ガイの心情。ふたりの台詞は全然ないです。




とうに日が沈み静まり返った暗闇の中、耳を澄ませば見張りの騎士達の歩く微かな物音や虫達の鳴き声が聞こえる。この大きな屋敷の中で誰もが安心感を抱き、平穏を守り続け暮らしている。しかしそんな中、俺は、俺だけは違っていた。
きぃ、と静かに扉を開く。同時に部屋の中から聞こえてくる聞き慣れた幼い寝息。俺は足音を殺し、そこに近付いた。呑気に寝息を漏らすそいつは変わらず夢の中。熟睡していることを確認し、俺は腰にしていた自分を、そして誰かを守るための物を取り出した。それは月の光に怪しく照らされ、ぎらりと切っ先が光る、剣。それは目の前で眠る幼子に突き付けられた。
その鮮やかな朱い髪が赤に染まる姿を俺は見たい。俺を赤に染めたあの出来事。あの時のように、元凶であるこいつの父親に同様の思いを味わわせてやると誓ったのだ。
ルーク・フォン・ファブレ。仇の息子。
俺が仇の屋敷にいる理由はただ一つ、復讐のためだ。ガルディオス家の恨み、憎しみ、怒り、悲しみ。全ての思いを、憎悪をこいつに。
ルークの首に切っ先を突き立てる。こいつは十分手なずけた。公爵もこいつに愛情を抱いている。この腕を振り下ろせば全てが終わるのだ。俺の復讐劇は幕を閉じる。もう苦しまなくていいのだ。この剣を振り下ろせば、

「…がい?」

突如として名を呼ばれ、声のした方へ視線を向ければ、そこには先程まで眠っていたはずのルークが目を覚ましていた。俺は慌てて剣を鞘に入れ、ルークに応じる。

「ど、どうしたルーク?」

「どうしてガイが、ここに?」

「見回りついでに剣の手入れをしてたんだよ。驚かせちまったか?」

まだ睡魔に襲われているルークの問いに俺が咄嗟にそう答えると、ルークは首をゆるゆると振る。そうしてルークはおやすみ、と呟くと再び夢の中に戻っていった。
俺はルークの部屋を出ると、安堵の息をついた。気付かれていたら危なかった。ルークが目を覚ましてくれてよかったのかもしれない。と俺はそこまで考えると、はっとし息を呑んだ。
何故こんなにも自分は安堵してるんだ。殺せなかったのに。悔しさを抱くべき状況なのに。その気になればいつだって殺せるのに。何故躊躇した?と自身に問い掛けるが答えは出ない。ただ、日に日に復讐心が薄れていく代わりに、自分の中でルークの存在が大きくなっていく。そんな自分が恐ろしくてたまらなかった。
それから時が経ち、かつて彼に向けていた剣は、彼のために振るうようになった。復讐のためではなく、ルークを守るために。命を奪うのではなく、命を賭けて。旅の途中でルークは今までの自分と決別し、変わったのだ。かつて俺を変えてくれたように。今となってはルークが俺を成長させてくれたと言っても過言ではない。過去ばかり見ていては前には進めない。そのたった一言が、俺を突き動かしたのだ。そして過去と決別する勇気と機会を与えてくれた。
ルークがいたから今の自分がここに生きているのだ。ルークは俺にとって、もう仇の息子でもなければ、レプリカでもない。ただひとりの人間で、世話の焼ける俺の大切な親友なのだ。
そんな大切な親友が、障気中和という大儀を成し遂げることになるだなんて誰が予想できたであろうか。障気を中和する際に消えるはずだったルークの音素は乖離せず、生きていたのだ。そこにいた。触れたのだ。俺は彼の存在を確認し、ひどく安堵した。もうルークを失う感覚など味わいたくなかったから。
その後日、俺はルークとふたりで気分転換にと散歩に誘った。どんなことがあろうと休息は必要だろうと配慮してだ。

「…なぁ、ガイ」

「何だ?」

「……泣いても、いいのかな」

「…泣きたければ泣けばいい。誰かに確認する必要なんてないさ。それに今は俺しかいないぜ?おまえの泣き顔なんていっぱい見てきてるんだ」

そう言って少しからかうようにルークに笑い掛ければ、彼はたちまち顔を歪ませるとガラス玉のような緑の瞳から大粒の涙を零した。俺は幼い頃のように、ルークを引き寄せ優しく包むように抱きしめる。こいつは頑張ったんだ。甘えることくらい許されるはずだ。泣いたっていいんだ。誰も非難しやしない。ルークの背中をぽんぽんと叩いてやる。俺の腕の中でルークはただ震えていた。
俺はまだ知らなかった。涙の真意を。ふたつの理由で震えるルークを。
そして後に知ることになる。光が届かない深い深い海底にいるかのような絶望感を。どう足掻こうが逃れられない非情で無慈悲な現実が、俺たちを待ち受けているなんて。









俺たちは信じた。たった一筋の光を。
俺はもう一度賭けた。ルークの帰還を。彼の未来を。




ふたつの理由は話の流れ的にわかりますよね、アビスプレイ済ならわかってくれると信じて(^o^)
ルークは泣いてよかったと思うんです。生き残ったのにいずれ乖離するかもしれないと宣告されて。生きたいって思えたのに。なんで泣かせました_(;3」┌)_ホロリ
2013.6.4


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あきゅろす。
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