Luke + Guy 幾度目かの新年 正月のルークとガイの話。 「さて、新年まであともうちょっとだが」 「あっという間だったなー今年も」 「今年はルークのドジも少なかったな」 「ドジって何だよドジって!ちぇっ」 「はは、手伝ってくれるのは嬉しいけどな。来年も頼むぜ」 「…言われなくてもやるつもりだっての」 俺はいつものように自然にウインクをしたガイの言葉に俺は顔を逸らした。言われなくてもわかっている。今年もガイにたくさん迷惑をかけてしまったのだから。ガイに対する罪悪感と自身に対する苛立ちが募るばかりだ。 俺の両親は俺が中学生の頃から海外勤務だ。父親はともかく、母親が心配性なため一人暮らしは許されず、親友であるガイの家に住まうことになったのだ。同居し始めてもう5年ほど経つだろうか。今年もたくさん笑って楽しんで、喧嘩をすることもあったけど、素敵な一年を過ごせることができたと思う。この一年間もガイに世話になった。だからこそ恩を返さねばと思い、家事の手伝いをしたりと続けてきて5年。頑張っているつもりなのだが失敗したりと余計に迷惑をかけてしまって申し訳が立たない。ガイは笑って許してくれるが…役には立てていないのだ。来年こそは。 「お、もうあと五分か」 「マジかよ?テレビ見てっとあっという間だなぁ」 もはや毎年恒例となった大晦日のお笑い番組。初笑いがこの番組という人も多いだろう。俺たちもそうだ。炬燵に入って温まって、夕飯を食べて、小腹が空いたら蜜柑を食べて年明けを待つ。年末は毎年師走らしく大掃除をしたりばたばたと忙しいが、大晦日だけはゆっくりと過ごす。しかし年明けの瞬間が近づくとやり残したことがないかという不安感と年が明けるという瞬間に備えてそわそわと落ち着きない。これが俺たちの年末の光景だ。ティアからは「あなたたちらしいわ」と微笑ましそうに言われ、ジェイドには「あなたたちらしいですねぇ」と少し小馬鹿にしたように言われた。同じ言葉でもこうも印象が変わるものなのか。 「へへ、わくわくしてきた」 「年明けじゃなくて、飯に、だろ?」 「そ、それもあるけどよ…!」 「お、年が明けるぞ」 ガイがそう言った瞬間、何年も時を刻んできた部屋にある壁掛け時計が0時を知らせた。続いて外から聞こえてくる除夜の鐘。それから携帯に届くメールの着信音。 「よし、早速年越しそば食べるか!」 「あ、餅も食いてえ!」 「わかってるって!慌てるなよ」 早速既に作ってあった年越し蕎麦と餅を食べながら、相変わらず話を始める。 「初詣、今年はいつ行くんだ?」 「んー、去年はガイのバイトが元旦から入ってて結局3日になったんだっけ?」 「悪かったな。シフトをちゃんと確認せずに出しちまったからな…」 「年末だし疲れてたんだろ?もういーよ別に」 「つって、だだこねたのはどこのだーれだ?」 「うっ…あ、あの時は子供だったからしゃーねぇじゃん!」 「その発言だと子供だったって認めてることになるぜ?」 「うぐっ…それは…その…だーもう!新年早々やめろって!」 「はは、悪い悪い!で、どうすんだ?」 「あ、ああえっと…これ食ったら初詣行って、初日の出見て帰ろうぜ」 「了解」 そうしてこれからの予定の会話を終えて、ふと当たり前のことをまだ口にしていないことを思い出す。俺たちの会話が自然すぎて失念していた。当初俺がガイの家に来た時は忘れず口にしていたのだが、年を重ねるごとに当たり前のことをうっかり忘れてしまうことが多くなった。本来は大事にすべきことなのだろうけど、俺たちなんだから仕方がない。と他人からすれば理解できない理由だろう。けど、俺たちがいいなら構わないのだ。 「あ、言うの忘れてたけど…あけましておめでとう、ガイ!今年もよろしく頼むぜ」 「あけましておめでとう、ルーク。こっちこそ頼むぜ」 幾度目かの新年 (毎年恒例のあれやるか) (おう!) (ルークの今年の抱負は?) (えーと、今年は蛇だろ?ってことで脱皮するみたいに成長していくことかなぁ) (へぇ、うまいじゃないか) (ガイはなんだよ?) (俺は女性恐怖症を今年こそ克服することだな) (おまえそれ去年も言ってなかったっけ…ま、いいや!ティア達に協力してもらわないとな) (頼むから一斉に来るのはやめてくれよ…) 正月のふたり。冗長だけどどんなに何気ないふたりの生活も私はずっと見ていたいです。ルークとガイだし。これからもそんなふたりの話を書けていけたらなーと思っとります。 2012.1.7 [古][新] [戻る] |