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Luke + Guy
聖なる夜のこと
クリスマス話。冗長だからつまらんかも




「ガイー!待たせたか?」

「いいや、俺もさっき来たところさ」

「って言ってどうせ嘘だろ?」

「はは、気にすんなって」

俺は苦笑いを浮かべながら時計台の前に立つガイに駆け寄った。そして早速街中を歩き始める。辺りを見渡せば日の落ちた中、一際目立とうと誇張する光たちが眩しい。色とりどりで見ていて飽きない賑やかな綺麗なイルミネーション。寒さはいつもと同じだが、普段とは違う街中が浮かれているような雰囲気。周りは家族連れや恋人同士が多いように感じられる。なんせ今日は聖なる夜、クリスマスだ。
せっかくのクリスマスに何故男二人でいるのかと言うと、俺たちにとってクリスマスは特別な日なのだ。
俺たちがまだ小学生の頃だ。クリスマスのその日に、ガイが引っ越すことになったのだ。俺たちは幼馴染でずっと一緒だった。その存在が側から消えてしまう。その出来事は俺たちにとっては衝撃で、避けられようのない出来事だった。行かないでくれと引き止めようが泣き叫ぼうが子供のそんな行動で事態が変わるはずもなく。ガイの両親の仕事の関係で仕方がないのだ。引っ越してしまうその日まで、俺たちは思い出を積み重ねるように、これ以上なく一緒に遊んで過ごした。忘れてしまわぬように、記憶に刻み込むように。
そして、当日。酷く寒かったことをよく覚えている。身体が凍らされたかのように動かなくて、心は凍て付いていて。まるでガイの引っ越しを祝うような、クリスマス独特の周りの華やかで綺麗なイルミネーションが憎かった。
俺は以前購入しておいた、お揃いの腕輪をガイに渡した。言葉なく、ただガイを真っ直ぐと射抜くように見つめて。友情の証。遠くにいても繋がっていると感じることができる形ある物。それを受け取り、ガイは一瞬間を置いて何かを決意したように口を開いた。いつか必ずここに戻ってくるから待っていてほしい、と。ガイはそう言葉を残し、去って行った。
その言葉を信じて俺は待ち続けた。幼い頃の口約束だと笑われることもあった。帰ってこやしないと否定されることもあった。それでも俺はただ待ち続けた。待つことしかできなかったからだ。待たなければかつての自分だけでなく現在の自分をも否定してしまうから。あの楽しかった日々も。毎年クリスマスが訪れる度にあの日の出来事が鮮明に脳裏に甦る。かつての俺にとってクリスマスとは悲しいものでしかなかったのだ。だから――

「…っていう話を考えたんだけど」

「ははは!なんだそりゃ、漫画の読み過ぎだって」

ガイは俺の話を軽く笑い飛ばした。
そう、今までの話は全部作り物だ。今の俺たちにとっては有り得ない出来事。俺たちは引っ越したことなんてないしクリスマスに街中を歩くこともしない。面倒だから。クリスマスだからと言って至って普段と代わり映えもない。ただ夕食が豪華な程度だ。クリスマスツリーも市販の小さな物で電飾をセットし光らせるだけ。世の中がどれだけ浮かれていようが俺たちは普段通りなのだ。

「この話、アニスが言い出したんだぜ?イオンは素敵だって言ってたけどティアはくすくす笑うし、ジェイドにはからかわれるしアッシュとナタリアはそんなクリスマスを過ごしたいだとか二人の世界に入っちまって話聞いてねえし…」

「はは、大変だなそりゃ」

ガイはそう言いながらも普段より奮発した料理を口に運んだ。人事だと思いやがって。今日はガイがバイトを入れ大学に来なかったために突っ込み役がいなくて大変だったと言うのに。不満を感じながらも俺もガイに続いて料理を味わう。美味しい、けどむすっとした表情を浮かべていると、ガイが笑みを浮かべながら口を開いた。

「俺たちのクリスマスは平凡でいいのさ。特別盛り上げる必要もないだろ」

「んー、それもそうだな」

俺はガイの言葉に納得した。そう、平凡でいいのだ。毎年恒例となった一人暮らしのガイの家に行き、クリスマスっぽいことをする。ふたりで少し奮発した豪華な料理を作り、ムードのかけらもない炬燵でそれを食べる。下らない話をしてふたりで笑って、最後にささやかなプレゼント交換。これで構わないのだ。
俺たちはお互いが選んだプレゼントを交換し合い、笑顔で言った。

「それじゃ今年も、メリークリスマス!ルーク」

「メリークリスマス、ガイ!」









「こら、チキンばっかり食べてないで他もちゃんと食えよー」

「うぐっ…いーじゃんクリスマスぐらい」

「どの口がそう言ってるんだ?ん?」

「うわ、ちょ!押し付けんなって…んぐぐ」

「ちゃんと食えるじゃないか。食えるんだから食べないとな」

「今のは食わされたんだよっ!くそっ、仕返しにレモンかけてやる!」

「あ!おいそれは俺が楽しみにとっておいた…おい!やめてくれーっ!」




とりあえずせっかくのクリスマスだし書いとくか、と思って書いた話。特にヤマもオチもないので言うこともないです()
2012.12.30


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あきゅろす。
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