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Luke + Guy
憧れの男
闘技場にて思い付いた話。ガイが9割話しません。ほのぼのっていうか淡々としてる話だろうか。




「やあ、よろしく」

ガイが闘技場に立ったその一言で観客、主に女性陣が黄色い歓声を上げる。低く野太い歓声も沸き上がったが、それは女性達の歓声により掻き消された。

「けっ、あの一言の何がいいんだか」

「ルークってば乙女心わかってないな〜。あのさりげない一言がかっこいいんだよ」

俺の言葉にアニスが呆れたように、そしてうっとりと恍惚な表情を浮かべ諌めた。恍惚な表情はガイが勝利すれば賞金が手に入るからだろう、きっと。現金な奴。
ガイ以外の俺達は周りの観客達と同じく、観客席からガイを見下ろしていた。俺は先程ガイがいる場所で奮闘した。上級という名の通り、苦戦しながらも制覇したのだ。そして次にガイが触発されたから参加すると言うので、ガイと入れ替わりで俺はここにいる。

「ガイはいつも落ち着いて戦っていますわね。こうしてみるとよくわかりますわ」

「ええ。彼は戦闘に手慣れています。危なっかしい無茶な戦い方もしませんしね、ルークと違って」

「うっ…。わ、悪かったな!」

ジェイドの嫌味に僅かな怒りを覚えつつ、ナタリアの意見に同調した。ガイは俺と同じ前衛だから、あいつの動きはよく観察してるし、何より屋敷時代から共に暮らしてきたのだ。屋敷にいた頃、何度か稽古をしたがガイの剣術は素人の俺から見ても見事だった。
ガルディオス家特有の戦い方だと以前ガイは俺達に語ってくれたがその通りだ。撹乱するように戦場を駆け回り攻撃を与え、安定した強さを誇る。俺が教わったアルバート流とは似て非なるシグムント流。

「またガイに稽古してもらおうかなぁ…」

「あ、そういえばガイ、ルークのこと褒めてたよ?」

「へ?」

アニスから詳しく聞けば、俺が先程闘技場にて戦っている時、ガイが俺の戦い方を褒めていたという。以前より周囲の状況に気を配るようになり、剣の腕も確実に上がっていると。自らが作戦を立て積極的に動いたり、成長したとガイは褒めていたらしい。あまり褒めると調子に乗りすぎて痛い目見るだろうから、と言ってガイは俺には話さないと言っていたが。
ガイは俺をよく褒める。戦闘中でも「いい感じじゃないか」と。自信を付けさせるためなんだろうかと考えたこともあったが、本心なのだろう。何年も共に過ごしてきた俺が言うんだ。ガイのよき理解者、と言えるのかはわからないが、第一人者だと胸を張れる。
ガイに褒められると照れ臭くもあるが、やはり嬉しい。ガイが笑顔でさらりと褒めてくれると無条件に嬉しく、こちらも笑顔になるのだ。

「そういえば、ルークが剣術を嗜むことになったのもガイの影響でしたわね」

「あら、そうなの?私はてっきり兄さんの影響かと…」

「ヴァンではなくガイとは…意外ですね」

「言われると思ったよ…うん、ガイの影響なんだ」

俺はガイの影響で剣術を始めたのだ。昔の俺はヴァン師匠に懐柔していたため、師匠の影響ではないと言うと驚かれるだろうと思っていたが、全く予想通りだ。
屋敷に軟禁されていた頃、俺はただひたすらに暇を持て余していた。何もすることがない屋敷での生活の中で、剣術は唯一の楽しみだったと言っても過言ではない。ガイが一人で剣術の稽古をしているのを偶然見掛け、その時に興味が沸いたのだ。運動がてらにしてみようかと、最初は軽い気持ちだった。それがいつしか本当にのめり込み始め、師匠にも本格的に教授してもらうようになり、実力をつけた。
そして旅の最中に聞いた話だが、盾を持たないホド独特の剣術で、攻めに特化しているアルバート流。そのアルバート流から派生した剣術で、ガルディオス家とそれに連なる者のみが使用できるスピード重視のシグムント流。シグムント流はアルバート流を補助できるから、俺が真剣にアルバート流を学べば、より一層皆の力になるだろう。ガイなら多少は詳しいはずだから今度教えてもらおうか。
ちなみに武器を購入する際、俺は武器に関しては詳しくないのでガイを参考にして選んでいる。切れ味がどうとか、重さがどうとか。専門的なことはまだあまり理解していないが、ガイが噛み砕いて非常にわかりやすく説明してくれるもんだから、感覚だけは掴んでいる。しかしガイがまだいなかった頃の旅は難儀だった。その時はティアやジェイドから勧められた剣を手にしたりしていたが、俺にとってガイがどれほど大きな存在だったか思い知ることになった。

「俺にとってガイは…なんつーか、憧れみたいなもんもあるな」

「ほう、憧れですか。それは興味深い」

「何だよその顔は…」

「いえ別に?続けてください」

ジェイドは真意の読めない笑みを浮かべ淡々と俺に促した。きっと後でこの話をネタにからかわれるのだろう。白けた視線を向けながらも俺は続けた。

「屋敷に軟禁されてた頃は屋敷が俺の世界の全てだったからさ、何でもできるガイってすげえって思ってた。それは今もだけどな」

あの頃の俺には屋敷が全てだった。何も知らない外の世界。その外の世界へと時折出掛けるガイからたくさん話を聞いた。街のこと、海のこと、人々のこと。俺の知らない事を多く知り、また教えてくれるガイはヴァン師匠と同様に憧れの存在だったのだ。

「へぇ〜、アニスちゃんいいこと聞いちゃった!このことガイに話されたくなかったら、後で何か奢ってよ、ルーク?」

「はぁ!?ちょ…せこいぞアニス!」

話し終える途端にわっと大きな歓声が上がった。闘技場へ視線を向ければ既に戦いは幕を閉じており、止むことのない歓声と拍手が上がる観客席に向けてガイが手を振っていた。腹が立つほどに爽やかな笑顔で、息も上がっておらず汗もかいていない。

「おーいガーイ!」

観衆に手を振るガイに大声で呼び掛けた。するとガイはこの大歓声の中俺の声を聞き取れたのかこちらに振り向くと、先程の観客達に向けた貼り付けた笑顔とは違い、いつも俺に見せてくれる本当の笑顔を浮かばせた。そして手を挙げると、親指をぐっと立たせ、ウインクをした。その行動に観客席から女性の黄色い歓声が沸き上がった。

「ガイさん、かっこいいですの!」

「すごい歓声ね…ルークに向けてやっただけなのに…」

「それだけ人気があるということなのでしょうか」

「ていうかガイ、こっちばっか見て歓声に気付いてないっぽいし…」

「我々に夢中、というわけですか」

「……なんか腹立ってきたぞ…」

周りの歓声を気にする様子はまるでなく、尚もガイはこちらに手を振っている。ああ見えてガイは天然なところもあるのだ。その為女性に優しい言葉をかけ、惚れられてしまうことが多くある。本人は無自覚だ。アニスが言っていたが、そういう男のことを罪な男と呼ぶらしい。後でからかってやろう。

「おいガイ!さっさと帰って来ーい!」

再び大声でガイに呼び掛けるとガイもまた大声で返事をし、闘技場の広場を後にし走り出した。
さて、何て言ってやろうか。




憧れの男




(腹が立つこともあるけれど)




闘技場でのガイの一言でぱっと思い付いた話。特に何も思わずに書いたので言うことないです_(:3」┌)_
ガイに影響されて〜ってのはアビメのドラマCDで言ってましたね。詳しい理由は忘れちゃったけど、この小説では捏造してます。私も初めて聞いた時、完全にヴァン師匠の影響だと思ってたのでびっくりしたの覚えてます。
2012.11.1


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