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Luke + Guy
だいじょうぶ
アラミス湧水洞を出てジェイドと合流してすぐの話。ダアトに行くまでの過程になります。シリアス。




「やー、ガイは攻守共優れているので頼りになりますねぇ。無謀なお坊ちゃまと違って」

「…悪かったな。特攻しちまってよ」

「おや、自覚があったとは意外ですねぇ。なら気を付けてくれればいいのですが」

「まぁまぁ!そういじめてくれるなよ、ジェイド」

またルークを虐めているジェイドに横入り会話を強引に中断させた。ルークは俯いてしまっている。恐らくジェイドに指摘された自分の否を認めているから何も言えないのだろう。
ジェイドの言う通り、最近のルークは無謀な戦い方をしている。剣を握って敵に突っ込み斬り裂いていく。自分が傷付いてもものともせず、ただひたすらに。血を流し、いくら痛みを伴っていても。まるで何かを振り払うかのように。倒れてしまうんじゃないかと危惧するほど、ルークは戦うのだ。その姿にさすがに焦った俺がルークの名を呼ぶと、ルークは我に返ったようにはっとし、悪いと言って謝り、ティアに治癒術を施してもらって再び敵に立ち向かっていく。無意識なんだろうかと思っていたが、自覚があったとは。
きっとルークは変わろうと努力しているんだ。変わらなければならないと自分なりに考え、結論を出した。今までの償いをしなければならない。今までとは違うんだ、役に立たないと、頑張らないと。そういった気持ちが強すぎるあまり、努力が空回りし無謀な戦い方になってしまっているのだと俺は思う。
ジェイドが去り、今だ俯いたままでいるルークに話し掛ける。

「なぁ、ルーク。話があるんだが、ちょっといいか?」

「ん?何だよ、改まって」

ルークは顔を上げたが、まだ悲しげな表情だ。ルークとしては少しは笑っているつもりなのだろうが。

「最近、無理してないか?」

単刀直入にそう尋ねると、ルークは一瞬言葉に詰まり、慌てて否定した。しどろもどろで苦笑いを浮かべており、嘘がばればれだ。相変わらず嘘をつくのは下手のようだ。
きっとこいつは自分のことを用無し、役立たず、必要ないと思われることに恐れているのだ。ユリアシティで被験者であるアッシュから現実を突き付けられ、自身は『ルーク』ではなくレプリカであると知った。その真実を知ったルークにとって、自分の存在を否定されるのは身を裂かれるほどつらいであろう。

「無理、するなよ。不安なら、話してくれていいからな」

そう言いながら俺はルークの頭をくしゃりと撫でた。今の俺にできることと言えばこの程度だ。後はルーク自身の問題なんだ。ルークは俺の言葉に微かに頷いた。
俺はルークの元を離れ、その様子を見ていたジェイドの元へ歩み寄った。

「旦那、何か用かい?ずっと俺たちを見てたみたいだが」

「いえ…あなたの、ルークに対する態度は変わらないのですね」

「当然だろ?変える必要なんてないさ。ルークはルークなんだからな」

そう言うとジェイドは読み取れない複雑な表情を浮かべ、そうですか、とぼそりと呟いた。その声は普段より沈んだ声色だった。
ジェイドにも当然考えがあるんだろう。フォミクリーという技術を創造したのはジェイドだ。そのフォミクリーによって生み出されたレプリカ、『ルーク』という存在は、きっとジェイドにとって特別な存在になるはずだ。

「あんたがいつか、ルークを認めてくれる日が来るって信じてるよ」

俺はジェイドにそう言い残し、その場を後にした。ジェイドの読めない表情は変わらぬままだった。
ジェイドとの話が終わったところをルークがこちらを見て確認すると、俺に駆け寄ってきた。先程の不安げで曇った表情はまだ晴れていない。まるで雨が降り出しそうな…そんな、こちらも不安になる表情。

「ガイ、剣の稽古やってくれないか?」

ルークはそう話し掛けてきた。俺が稽古に付き合ってくれるという前提で。しかし、俺は断った。

「ルーク、今は休むときだぞ。焦っても仕方ないだろ?」

「え…そう、かな…」

そう言うとルークは俯いてしまった。
きっと今のルークは何かしてないと不安になるんだろう。自分で考え、行動した結果なのだろうが…アクゼリュスの二の舞になることを恐れているんだ。自分が考え無しに行動してしまったから悪夢のような事件を起こしてしまった。だからとにかく自分自身で考え動かなければ…と。その気持ちはわからないでもないが、疲労している身体に鞭を打ち、その事実を隠して稽古に励もうとして。身体を休めることは大事なのに。勿論、心も。
俺はルークの肩にぽんと手を置き、優しく諭すように言った。

「なあルーク。焦らなくていいんだぞ。ちゃんとおまえのことを見てるし、助けてやるから。ティアだってそうさ。おまえの頑張りは知ってるよ。だから、な?」

するとルークは一度は顔を上げ俺の目を見たものの、また直ぐに俯き口を開いた。

「わかってる…。けどほんとに俺は、…大丈夫…なのかな」

ルークは不安げにそう口にした。ルーク自身が大丈夫と豪語する時はまるで当てにならない。しかしこうして尋ねてくるということは、自分に大丈夫と言い聞かせられぬ程大丈夫ではないのだろう。
俺はルークの言葉に応えた。

「大丈夫だよ。そんな泣きそうな顔すんな!せっかくの男前が台なしだぞ?な?だいじょーぶ!」

俺はそう明るく言って抱きしめるように、子供をあやすようにルークの背中をぽんぽんと叩いた。すると、ルークが困ったように笑ったのがわかった。少しでも不安が解れただろうか。
俺が大丈夫だと言うと、ルークは必ず笑みを浮かべてくれる。曇った表情が晴れるように。一筋の光が射し、そののち青空が広がるように。雨が降っても構わないが、お互いに暗い気持ちを抱いてしまう。それでも雨が止めば、いつしか虹が架かる。晴れ渡る空をさらに引き立てる虹が。それは一瞬で消えてしまうかもしれない。だが青空が再びすぐに曇ることはない。笑顔でいられるのだ。
だから俺はいくらでも言おう。ルークのために。包み込むように。




だいじょうぶ




断髪後、ジェイドとアニスとはぎすぎすしますよね。ルークはその態度に少しばかり不安になることもあるんじゃないかなあって。
けどガイに「大丈夫」って言われるとすごく安心すると思うんです。ガイは嘘を言って下手に慰めようとはしないから。つくづくいいやつだなあガイ
2012.8.2


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