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Luke + Guy
届かない距離、心は側に
ネタが浮かんで何気なく書いてたら『一歩、踏み出して』の続きになりました。陛下の口調があやふやですが。




ヴァンを倒し、ファブレ公爵から暇を与えられ、ルークと別れグランコクマに屋敷を構えてから早数日。ピオニー陛下とジェイドに振り回されつつも充実した生活を送っていた。

「お呼びでしょうか、陛下」

「よおガイラルディア!早速だがジェイドたちの世話を頼む」

陛下はそう言って、辺りに群がるブウサギ達へ視線を向けた。ブウサギ達は自由きままで部屋を荒らしたり、何か口に入れようとしていたり。よくこいつらの世話を任せられる俺も手を焼かされっぱなしだ。
ブウサギ達には名前が付けられているので面白おかしく感じてしまう。ジェイド、ネフリー、サフィール…など、いずれも陛下と親しい人物の名前だ。最近では新たにルークという名のブウサギも増えた。陛下はどうやらルークのことが気に入ったらしい。

「またですか…大変なんですよ、ブウサギ達の世話」

「せっかく仕事を与えてやっているのになんだその態度は?ここは喜ぶとこだろ」

不満を漏らすと陛下は拗ねた素振りを見せた。その態度に俺は思わずくすりと笑ってしまった。そんな俺の様子に陛下は首を傾げた。

「いえ…失礼。陛下の態度でルークを思い出しまして…」

そう言いながらルークのことを思い浮かべた。ルークも気に喰わないことがあったり、俺に頼みを断られたりしたら、よく拗ねていたから。まだまだ子供な元主人を微笑ましく思い、よく笑みを浮かべたものだ。そうすると必ずルークが「子供扱いするな」と怒ってしまうのだが。

「ふぅん…そういえば、おまえからルークの話をあまり聞いていないな。もっと聞かせてくれないか?」

「ええ、それはもちろん!」

俺の反応から途端に興味が沸いたらしく、陛下はルークのことを尋ねてきた。どんな性格なのか、屋敷ではどう過ごしていたのか、俺とはどういう関係だったのか…など、とにかくたくさん話した。話すことに夢中だったので、気付けば随分時間が経過していた。

「申し訳ありません…つい話しすぎてしまいましたね、ははは…」

「いや、同じ王族としての貴重な話が聞けたんだ。ルークにますます興味が沸いたぜ。…ルークのことを話してる時のガイラルディアは、随分幸せそうだったぞ」

陛下にそう言われて俺は驚いた。そんなに顔に出ていただろうか。確かにルークのことを話している時、自然と笑顔になるのは自覚済みだが…幸せそうだとは思ってもいなかった。
長い間話していたせいか、ルークが恋しくなった。俺がいなくなったファブレ公爵邸で、果たして元気にしているだろうか。

「暇を持て余してるかもなぁ、ルーク…」

「気になるのか?」

「…ええ…まぁ。そりゃ気になりますよ」

俺の態度に陛下が首を傾げたので説明することにした。
ファブレ公爵邸にいる頃、ルークは基本俺と会話していた。使用人で一番近しい存在だったということもあるが、他に話す人物がいなかったからだ。そして話し相手の俺がいなくなった今、ファブレ公爵邸にはペールといつもの白光騎士団とメイド達しかいない。加えてミュウだ。ペールとミュウがいるだけマシだとは思うが、やはり歳の近い話し相手が欲しいというもの。剣術をする相手もおらず――白光騎士団で相手をしてくれる者はいるだろうがルークは乗り気ではないだろう――暇を持て余す毎日になっているのではないだろうか。
さらにあいつの卑屈な性格…レプリカの自分はここにいるべきじゃないと引け目を感じているに違いない。そして白光騎士団とメイド達の態度…居心地が悪くて仕方ないだろう。肩身の狭い思いをしてるのではないだろうか。

「そういうことか…そんなに気になるなら、手紙を寄越せばいいじゃないか。近況報告も兼ねてな」

「手紙…ですか。うーん、無駄だと思いますよ」

頭を掻きながらそう言うと、陛下が何故か尋ねてきた。
あのファブレ公爵のことだ。きっと王族であるルークには相応しい人付き合いをしてもらわなければならないと、手紙はルークの手に届く前に回収され、最悪処分されてしまうだろう。

「王族の嫌なところだな。まぁ書くだけ書いてみろ。ルークが偶然隠してあるのを見つけるかもしれんぞ」

「ルークが気付くかなぁ…でもおっしゃる通り、書いてみますよ」

そうして俺は陛下に時間を頂き、手紙書くため自分の屋敷へ戻った。
早速ペンを手に取り、手紙に文字を走らせる。自身の思いを乗せて。
ここでの暮らしがいくら忙しくても、ルークのことを忘れた日は一度だってない。これから先も。自信を持ってそう言える。心はあそこに置いてきたのだから。
なぁルーク、元気にやってるか。俺は元気だ。おまえのことが心配で仕方ないよ。何かあったら俺はすぐにおまえのところに飛んでいくぞ。今のご主人様はピオニー陛下だが、心のご主人様はいつだってルークだ。暇を貰った今となっては、おまえと俺はもう対等の存在だけどな。無二の親友なんだからな。
なんだか会いたくなっちまった。今すぐにでも会いたいよ、ルーク。



「…っ!ガイ?」

声を掛けられた気がして俺は飛び起きた。ガイがいつもみたいに俺の名を呼んだような…そんな気がしたのだ。

「ご主人様、どうしたんですの?」

いつも通りベッドに横になってだらだらしていた俺が突然飛び起きたので、ミュウが疑問に思い話し掛けてきた。

「いや…なんか、ガイに声掛けられた気がしてさ。…んなわけないか」

ミュウにそう言って自嘲し、乾いた笑いを浮かべた。ガイはもうここにはいないし、帰ってくることもないのだ。幻聴が聞こえるほどガイのことを考えていたなんて、ガイに言ったら笑われるだろう。

「ガイさんはきっとご主人様の名前を呼んだんですの!だから気のせいなんかじゃないですの!」

「そう、なのかな…」

ミュウにそう言われ、置いてある音機関を見つめた。ガイが置かせてくれと言ったあいつの音機関。音機関を見ると、ガイの心が、僅かながらここにあるんだと思えた。
ガイが去ってからも思わずにはいられなかった。やっぱり、ここは俺の居場所じゃない。アッシュの帰るべき居場所で、俺に居場所なんてない。ペールは優しい言葉をくれたけど、白光騎士団とメイド達の視線、態度…それらが俺の思考を加速させた。
ここにガイがいてくれたらと幾度となく思った。抜け殻のようになってしまった今の俺の側にガイがいてくれたら、と。…弱い俺の甘えなのかもしれないが。
ガイはいつも俺が欲しい言葉をくれた。優しさをくれた。慰めてくれた。甘えさせてくれた。今までガイに甘やかされて過ごしていたという事実に今更ながら気付いた。俺はガイに支えられていたのだと。その親友がいないだけで、こんなにも不安になり、自分の存在を疑ってしまう。簡単に存在意義を見失ってしまうのだ。お互いに頑張ろうと言ってガイを見送ったのに、何と言う有様だろう。何も頑張れていないし頑張ろうと努力もしてないじゃないか。こんな現状じゃ、ガイに顔向けできない。自分に呆れ思わず溜息をついた。
窓から空を見上げた。以前は憧れだった外の世界。無知だった俺の想像とは裏腹に危険にばかり出くわす日々、現実。風に吹かれ流れゆく雲。あの雲に思いを乗せれば、ガイに届くだろうか。なんて柄にもないことを考えるほどに俺は憔悴していた。

ルークは果てもない青空へ手を伸ばした。この手がガイに届けばいいだなんて絵空事を考えて。
同じ頃、ガイも済み切った青空へ手を伸ばした。いつかまたルークの手を握る時が来ると信じて。
何かを掴むかのように、ふたりはぎゅっとその手を握り締めた。









心はここにある。




ガイのマルクトでの暮らしってどんな感じだろーとか考えてたら思い付いた話。似たような話だし繋げてしまえと思って『一歩、踏み出して』の続きということにしました。
しかしルーク丸一日寝てばっかだったとか言ってたのにあの腹筋を維持できてたって凄いな…
2012.7.28


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あきゅろす。
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