Luke + Guy
光り輝く祈りと家族
ちょっとシリアスでほのぼの。第三部での話。大まかに説明するとガイが寝てたルークを起こしてふたりが兄弟になります。
「ルーク。おい起きろよ、ルーク」
「…う〜ん…あとごふん…」
俺を起こそうとするガイの声。ふと目覚めるものの眠気に勝てず寝返りをうった。もうちょっとだけ寝かせてくれ、ガイ。しかしそんな俺の思いを知ってか知らずか、ガイが俺の頬をむにむにとつねってきた。
「ほーら、起きろールークー」
「んん…んだよぉガイ…まだおきるにははやいし…ねれるだろぉ…」
ガイのちょっかいに耐え切れず、まだ呂律の回らない声でそう言い起き上がる。窓の外を見遣れば薄暗い。こんな早くに目覚めなければならない理由はないのだ。するとガイは俺を無理矢理立ち上がらせ、こう言った。
「朝日見に行こうぜ。綺麗だからさ!」
「えー…そんなのいいよ別に。寝かせてくれぇ…」
ガイの誘いを断りベッドに倒れ込もうとすると、ガイは俺の腕を引っ張り強引に外へと連れ出した。ぐっすり眠れていないというのに。寝起きで力も入らないので抵抗できずガイに連れていかれるままだ。ホテルを飛び出してからしばらくすると、ガイの足が止まった。そこは広場だった。早朝なためか人っ子一人いない。
「何なんだよガイ…眠いんだって…」
「まぁちょっと待ってろ。言葉にならない景色が見れるぜ」
「ほんとかよ…嘘なら俺帰るからな」
ガイはにこにこと笑顔を浮かべていた。どことなくわくわくとしているような笑顔。そんなガイの言葉に半信半疑ながら待つことにした。
しかし早朝と言うこともあり、寒さに震える。ただでさえ寒いケテルブルクだと言うのに。徐々に手と腹が冷えてきて、自然と身体が縮こまる。そんな俺の様子に気付いたのか、ガイが自分の上着を俺にかけた。
「悪いな。ちゃんとした上着持ってくるんだったな…」
「い、いいよ!ガイが寒くなるじゃん」
そう言って上着を返そうとするがガイは断った。ご主人様の身体を労るのは使用人として当然だ、と。俺はその言葉に対して、元だけどな、と付け加え、お互いくすりと笑った。
上着を羽織っていないガイは本当に寒そうだが、本人は平気と言って寒さに震えている様子は全くない。見ているこっちが寒くなる。まぁ腹を出している俺が言うのもなんだが。
そんなことをぼんやりとまだ働かない頭で思っていると、朝日が徐々に昇ってきた。周りの景色が太陽に照らされていく。そうして朝日が昇りきった瞬間、俺は言葉を失った。
「綺麗だろ?」
「……ああ…すげえ…!」
ガイの問い掛けに俺はただ一言返した。
言葉にならないとはまさにこの光景のことを指すのだろう。一面銀世界のケテルブルクに輝かしくまばゆい朝日。雪が朝日に照らされきらきらと美しく光り、まるで宝石のようでとても綺麗だ。ふわりと降る雪も朝日に照らされ、視界いっぱいに広がり煌めく。まるで別世界にいるような、そんな感覚。
「この光景をルークにも見せてやりたくってな。おまえ、こんな綺麗な景色見たことないだろ?」
「ああ…初めて見た…」
ガイの言葉が右から左へと流れていく。話をまともに聞けない程、見とれてしまう美しい光景。本当に言葉が出ないのだ。じんわりと心に染み渡る。
「…生きてるって、いいな」
そんな当たり前なことを無意識に口にすると、ガイは当然だろと返してきた。そうに決まっている。人として当然のことなのだ。
俺は一度、死を目前にして生きたいと思った。まだ生きていたいと。死なずに済んだ俺は、生というものを何より実感した。青い空、広がる大地、仲間たちの温もり、心臓が命の鼓動を刻む音、この瞳に映るもの。生きているんだ。今も。生きているということは、気高く、美しいことなのだ。俺はそう思う。
そんな俺に迫りくる黒く渦巻く闇。死への恐怖。まだ生きていたいという切なる願い。美しい世界をこの瞳に。大切なものたちを記憶に。あともう少しだけ。
すると、ガイが話し掛けてきた。
「なあ、ルーク。俺たち、兄弟にならないか」
「な、何だよ突然…!」
予想もしていなかったガイの言葉に驚き、ガイの方を振り向けばガイはどこか寂しそうで悲しそうな…今にも泣いてしまいそうな表情を浮かべていた。ガイのそんな表情は今まで目にしたことがない。再び驚いた俺は言葉を失った。
「ルークは嫌か?」
「い、嫌とは言ってないだろ!ただびっくりしただけで…俺も、ガイのことは兄貴みたいに思ってるんだし」
そう答えるとガイはそうかと言って笑みを見せた。いつものガイだ。よかった。ガイはいつも笑顔を浮かべている。俺と話している時も、俺を励ましてくれる時も、いつも。だからガイの笑顔を見ると安心感を抱くのだ。
「…兄弟になりたいってのは、俺が家族をみんな失ったからじゃない。おまえとなら、本当の家族になりたいと思ったからなんだ、ルーク」
ガイはそう言って、凛とした表情で俺を見つめた。
そうだ、ガイは全てを一瞬にして失ったのだ。俺の父上…ファブレ公爵によって。平穏で幸せな日常は突如として破壊され、ガイに復讐の道を選択させた。ガイの苦しみは俺にはわからないが、さぞ嘆き、悲しみ、恨んだことだろう。
そんなガイが兄弟になろうと言ってくれた。それだけで俺は嬉しくて。この誘い、受けないわけにはいかない。
「…ありがとう、ガイ。いや、兄貴…かな、へへっ」
「ははは、なんだかそう呼ばれるとむず痒いな!」
ガイは頭を掻きながら笑った。それは嬉しそうに。俺も同様に嬉しくて、しかし恥ずかしさもあってか笑みを浮かべながら顔を逸らした。
「あ、でも本当になるなら手続きだとかいろいろごたごたするんじゃ…」
「そんな固い誓いなんていいよ。口約束だけで十分さ!」
ガイはそう言って俺に拳を差し出した。そうだ、固い約束なんていらない。だって俺とガイなんだから。他人からすればどういう理由はわからないかもしれないけど、それでもいいんだ。俺たちは笑って拳をぶつけ合った。
前を見つめた。明日も明後日も明々後日もずっと、あの眩しい朝日を見ることができたら、と願う。仲間と共に、家族と共に。
光り輝く祈りと家族
ルークとガイが兄弟になる話。書いてみたかったので満足です。
戸籍的に考えればルークはファブレ家だしガイは貴族ガルディオス家だし、ごたごたするどころじゃないような。まあそんなこと関係ないですよね
2012.7.20
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