Luke + Guy あなたに幸福を クローバーネタ。どういう話か大体の察しはつくかと。 太陽の温かな光。心地好い風。穏やかな気候。俺は草原に仰向けで寝転びながら流れゆく雲を見つめていた。ここのところ戦闘ばかりで気が滅入っていた。だから今の休息は気分転換にちょうどいい。 あまりの気持ち良さに眠気がやってきた。このまま熟睡してしまいたい。疲労回復があまりできていないので余計に。眠ろうと目を閉じていると、誰かに名前を呼ばれた気がしてむくりと半身を起き上がらせた。 「ルークー!」 「アニス!どうしたんだよ」 鮮やかな黒髪のツインテールをふわふわと揺らしながら、こちらに駆け寄ってきたアニスに尋ねる。アニスは俺の隣に腰を下ろしながら、宿へ帰ると誰もいなくて、みんなどこにいるかを探しに来た、と答えた。一番にルークが目に入ったのだと。 アニスが辺りを見渡す。すると草原にある何かを見つけたらしく、声を上げた。 「あ、クローバーだ。ルークはクローバーって知ってる?」 「ああ、知ってるぜ?」 素直にそう答えるとアニスが声を上げ目を見開いて驚いた。どうも意外らしい。まぁ確かにそう思われても仕方ないが。俺がまだ幼い頃、ガイとペールに聞いた記憶がある。ペールが育てている植物達の中、地味だけど気になる物があったから尋ねたのだ。鮮明にまでとは言わないが覚えている。教えてもらったのは名称のみだが。…もしかしたら俺が忘れているだけかもしれない。 そんなことを思い出しながらクローバーを見つめていると、三つ葉ではなく四つ葉を見つけた。 「あれ?なんか四つ葉があるぜ」 「えっ?ルーク知らないの!?」 アニスはまた大きな目を見開かせ驚いた。 アニスの驚き様からして、これは常識なのだろうか。貴族だから知らなかったなど理由にならないだろう。やっぱり俺がガイから教えてもらったことを記憶に残していないのではないか。そう思わずにはいられなかった。 するとアニスが口を開いた。 「仕方ないなぁ。アニスちゃんが教えたげる!四つ葉のクローバーはね、すっごく珍しくて、見つけると幸運が訪れるって言われてるんだよ」 見つけてもお金にならないからアニスちゃんは探さないけど、とアニスは一言。 そんな意味があったのか。全く知らなかった。こんな小さな植物に幸運を与える力があるなんて。…まぁ、どうせ迷信なんだろうけど。けど、そんなに珍しいというのなら発見した時点で幸運が訪れているのではないだろうか。 「じゃ、後で何かおごってよね!ただで教えるほどアニスちゃんは甘くないもん!」 「は!?ちょ、待てよアニス!おい!…ったく、しゃーねぇなぁ」 アニスはまるで嵐のように去って行った。しかも奢ることになるとは…さすがアニスだ。ぬかりない。 ガルドの心配は後にして、この四つ葉をどうするか考える。偶然だがせっかく見つけたのだし、放置するのはもったいない。俺が持っていても幸せなんて…。四つ葉を見つめ考え込んでいると、アニスが去って行った方角に太陽の光に照らされきらきらと輝く金髪の頭が見えた。思わずその名を呼んだ。 「ガイ!」 「ルーク、ここにいたのか!」 ガイが手を振り俺の方へ駆け寄ってきた。どうやら俺を探していたらしい。 「今さっきアニスと出くわしたけど、ルークに奢ってもらうことになったって随分ご機嫌だったぞ?」 「そーなんだよ…せっかく美味いもん食おうとガルド貯めてたのにさ…はぁ」 「ははは!運が悪かったな。まぁ何だったら俺が奢ってやるからそう落ち込むなよ」 ガイはそう言いながら俺の隣に腰を下ろした。アニスにいくら奢ることになるかわからないし、ガイの言葉に甘えることにしよう…。 こうしていつもガイは俺に優しい言葉をくれる。厳しい時は厳しいけれど、基本は優しい。滅多に怒ったりしないし、温好な性格をしている。誰かが困っていると助けるし、紳士的だ。そんなガイに俺はいつも世話になっている。逆に俺がしてやれたことなんて数えられる程度だ。 そうだ。この四つ葉、ガイにあげよう。いつも迷惑を掛けちまってるガイに、ささやかなお礼をして。幸せが訪れますように。そう思って俺はガイに四つ葉を差し出した。 「ガイ。これ、やるよ」 「四つ葉のクローバーじゃないか。これ、どうしたんだ?」 「偶然見つけたんだよ」 赤面した顔を隠すように背け素っ気なく言うと、ガイが悪戯な笑みを浮かべた。 「はは〜ん…わかったぞルーク。おまえ、四つ葉の意味をアニスに聞いたんだな?それで奢るハメになったってところか?」 「そうだけどにやにやすんなっ!四つ葉返してもらうぞ!」 「悪かったって!嬉しくてついな。ありがとう、ルーク」 そうガイは幸せそうにふわりと笑みを浮かべた。よかった。ほんの少しだけれど、ガイの幸せの手伝いができただろうか。 「でも、これじゃフェアじゃないよな。ちょっと待ってろよ」 ガイはそう言って立ち上がると、クローバーを見渡し始めた。そしてクローバーたちを見つめながら周辺を練り歩く。もしかして…と思いガイに問い掛けようとしたが、待ってろと言われたことを思い出し、大人しく待つことにした。しばらくすると、ガイがクローバーを摘みこちらへ駆け寄ってきた。 「俺だけが幸せになるってのはな。それに、俺の幸せにはおまえの幸せが含まれてるんだからな」 ほら、とガイは俺にそのクローバーを差し出した。見ればそれは四つ葉ではないか。ガイの行動からして予想はついていたが、本当に見つけてくれるなんて。嬉しさと気恥ずかしさが入れ混じりぶっきらぼうな態度を取ってしまう。 「べ、別に探してくれとか頼んでねーし!わざわざおまえが時間潰すことじゃねーじゃん」 「これぐらい時間潰したことにはならないさ。それに今はルークとの時間なんだし、その時間を有意義に潰したんだ。むしろ幸せだろ?」 「なっ…!ば、馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!意味わかんねぇ!」 「照れるな照れるな」 「ちっげーよ!照れてねぇっ!」 「はははっ、顔赤いぞ?」 「だーーもう!うっせえ!」 そうやって言い合っていると、おかしくなって思わず笑みが零れた。ふたりの笑い声が澄み切った青空に響き渡った。 こうして、ガイの隣でいつまでも笑っていられますように。それが俺の幸せだから。 あなたに幸福を 花言葉調べてたらクローバーが目に入ったのでふと思い付いた話。 最初はアニスの立場がティアでしたがアニスのがしっくりきたのでアニスに。ルークとアニスの二人も好きだったりします。兄と妹、あるいは姉と弟みたいな感じで癒されますはふん 2012.7.13 [古][新] [戻る] |