[携帯モード] [URL送信]

Luke + Guy
ここにいる、いたい、願い
ずっとシリアスのターン!障気中和後です




俺が消える。ただそのことだけが俺の頭の中を支配した。
俺は命と引き換えに障気を中和すると決断し、行動に起こした。とても怖かった。死にたくないと思った。俺は生きていたいんだと、自分の本心を今更ながら知った。大切な仲間達とここで生きていたい。そう思った。
だが、障気を中和して死ぬはずだった俺は奇跡的に生きていた。レプリカ達は犠牲となってしまったが、俺はそこに存在していた。当然嬉しく思い安堵した。俺は生きているんだ。死ななかったんだ。そのことが本当に嬉しかった。けど喜びもつかの間、現実は残酷だった。ベルケンドでの検査結果で、音素の乖離が始まっていることがわかった。つまり、いつしか俺は死んでしまうということ。
幸福が絶望へと変わった。崖から突き落とされた気分になった。せっかく生きていたいと思えたのに。嬉しかったのに。どうしてこんな。
恐ろしかった。本当に命を絶つ経験をしたから余計に。俺はこれから死への恐怖と不安を背負って生きていかなければならないのだ。そして世界を救わなければならないのだ。今の俺にできること。恐怖に打ち勝ちそれを全力でやらなければ。
それでもやはり、恐ろしくてたまらなかった。死という現実が重くのしかかる。死にたくないのに。皆と一緒に生きたいのに。人生を全力で楽しみたいのに。死にたくない。死にたくない。
思わず涙腺が緩んだ。慌ててぐっと堪える。涙を流してはいけない。ここで泣いたら堪えてきたものが決壊してしまう。泣いたって何も変わらない。無意味なんだ。だから。涙腺が緩んだのは夕日が眩しすぎるからだ。きっとそうだ。そう思い込んだ。
そうして夕日を見つめていると、声を掛けられた。

「よっ、ルーク!何してんだ?」

「ガイ…」

ガイがこちらに歩み寄ってきた。
いつもそうだ。ガイは俺が苦しい思いをしてる時に側に来てくれる。どうしてこうもタイミングが良いのだろう。長年の付き合いだからだろうか。

「どうしたんだよ、そんな顔して」

「何でも…ない」

「嘘つけ。何でもないわけないだろ?話してみろって。情けないことでも皆には黙っててやるからさ。な?」

ガイはそう笑顔で優しく言ってきた。ガイの暖かさと優しさに触れて、俺はとうとう耐え切れず俯いて涙を零してしまった。そのことにガイはぎょっとして、少し慌てて俺の顔を覗いてきた。

「お、おいルーク?どうしたんだ?…つらかったのか?話せることなら今、全部話しちまえ。吐き出すことって大事だぜ」

ガイは俺の頭を少し乱暴に撫でながら言った。ガイの言うことは尤もだ。吐き出さずに溜め込んでいるのはよくない。いつか爆発してしまうから。だけど。

「ありがとう…けど、何でもないんだ…何でも…」

俺は声を震わせながら何とかそう言って、堪えきれなくて声を上げて泣いた。
つらいけど、俺は誰にも言えない。吐き出せない。話せば真実を告げてしまうから。真実を知っているジェイドやティアに吐き出すことはできるだろうけど、心配を掛けたくないし、残された時間は皆と明るく過ごしたい。だから言わない。吐き出したいのに吐き出せない。それがどうしようもなく苦痛でたまらなかった。ひとりで全てを背負い、抱え込むとはこんなに苦痛だったろうか。容易なことだと甘く見ていた。
仲間達と過ごす時間は本当に楽しいし、この感情を忘れ去ることができる。だけどひとりになるとどうしても考えてしまう。考えたくなんてないのに。胸が締め付けられたように息苦しくなり、笑顔が消える。最期まで笑顔でいたいのに。
本当はガイにだって言いたい。話を聞いてほしい。だが、真実を告げたところでつらい思いをするひとが増えるだけだ。だからどうしようもないのだ。言いたくないのに言いたいという矛盾。もどかしかった。
だから今の俺は涙を流すことしかできなかった。言葉の代わりに涙を溢れさせた。涙の音を聞いてもらうために。心の叫びを少しでも。俺の心臓が命の鼓動を刻んでいる間に。俺にたくさんのことを与えてくれた、大切な親友であるガイに。

「ルーク…全く、おまえ、子供の頃みたいな泣きっぷりだな。いや…今も子供か」

ガイは笑ってそう言い、俺を抱きしめた。背中を優しくぽんぽんと叩いてくれた。幼い頃のように。それがひどく懐かしく感じ、そんな思い出も全て持っていかなければならないと思うと、さらに悲しくなった。こうして感じるガイの暖かさも、優しさも、声も、全てが二度と感じることがなくなってしまうのだ。心が握り潰されるような、胸が裂かれるような、そんな心の痛みが俺を襲った。さらに涙が溢れ出た。

「うわあぁぁ…ガイ…ガイ…っ…!」

「何だよ、俺はここにいるぞ?おまえも、な…大丈夫さ!もっと泣いていいんだぜ」

ガイがそう言ってくれただけで嬉しくて幸せで。俺はここにいる。存在している。まだ大丈夫なんだ。そう思えた。俺の人生はあと少しだけ残されている。皆と、ガイと一緒にいられる。

「…おまえが。たとえルークがいなくなったとしても、ここにいるんだからな。俺の心の中に、ずっと…な」

その言葉で感じ取った。もしかして、ガイは感づいたのだろうか。俺が消えてしまうということに。けどもうそんなことはどうでもいい。俺という存在を受け止めてくれるガイが側にいるだけでよかった。俺に居場所をくれたガイが。
ありがとうガイ。おまえがいたから今の俺がここにいるんだ。存在してるんだ。泣き明かしたらまたいつもと変わらずに接するから、だから。もう少しだけ、泣かせてくれ。吐き出させてくれ。俺の痛みを。
俺の肩に、何かがぽたりと零れ落ちた気がした。ごめん、ガイ。










ガイが感づいちゃいました。ルークも言ってたけどガイってほんとに人のこと見てますからねー。ルークのことなら何年も見てきてるし、わりと早い段階で気付くんじゃないかな、と
知ってしまったら本当につらいですよね。消えることがわかってるのに何もしてやれないって。アニスとナタリアもルークが消えてしまうことを知って、仲間たちみんな苦しんだんじゃないかなと思います。でもルークは何も言わないから、気持ちを汲んだというか、ルークが恐怖心を表に出してないんだから自分たちが恐れたり悲しげな表情を見せちゃいけないって…そうして普段と変わらず接したのでは、と
んん!つらい!
2012.5.7


[古][新]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!