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Luke + Guy
心はいつもおまえの隣に
現パロのふたり。ガイは社会人でルークは大学生。珍しく同級生の設定になります





今日は久々にガイに会える。ずっと待ち望んでいた日だ。寝坊しないように念のため朝早くに起床し、忘れ物はないか何度も確認した。

「よしっ!行くか!」

そうして俺は、家を飛び出した。
俺は大学生で、ガイは社会人。俺達は親友で別々の家に暮らしている。俺とガイは幼い頃から兄弟のように過ごし、本当は一緒に暮らしたかったのだがガイの仕事の都合上無理だった。幼い頃は近所に住んでいたのに、ガイは仕事の関係で電車で20分程かかる所に引っ越したのだ。
俺は大学生で勉学に励む以外にバイトをする時間も遊ぶ時間もあるが、ガイは自分の時間すらろくにない。ガイによくメールを送ったりするが、返事が来る時はあまりない。それ程多忙な日々を送り、疲労しているのだろう。そんなガイを労ってやりたいのに何もできない自分が悔しい。だから今日は、ガイが望む事は俺が何でも叶えてやりたいし、精一杯労ってやるつもりだ。
何より俺はガイに会える日を楽しみにしていたのだ。もう7ヶ月ぶりになる。俺自身、会える日はいつでもあったのだが、ガイは忙しく中々お互いの予定が合わなかった。だけど今日ようやく合い、会えるのだ。
ガイに話したいことがたくさんある。大学生活のこと、新しくできた友達のこと、バイトのこと、それから他にもいろいろ。今日一日だけでは話し足りないぐらいだ。本音を言えば一週間ぐらいは欲しい。だけど現実はそう甘くはない。だから今日という日を楽しむのだ。ガイと会える貴重な一日を。
そして俺は、待ち合わせ場所に行くために電車に乗り込んだ。
待ち合わせ場所の駅に着き、腕時計を見ると予定より早く到着していた。まあ構わない。いつもは俺がガイを待たせていたんだし。そう思い改札前でガイを待った。
本当に久しぶりでなんだか緊張してきた。高校生の頃は毎日会っていたのに。不思議な感情と期待で顔が緩む。そうして待っていると、改札の方から金髪を輝かせる人物が現れた。その姿は間違いなく、俺が待ち侘びた人物。

「ガイ!!」

「ルーク!悪ぃ、待たせた…うおっと」

俺はガイに駆け寄り、思わず抱きついた。そうしているとガイが困ったように、しかし嬉しそうに抱きしめ返してくれた。

「はは、久しぶりだなールーク!」

「ああ!楽しみにしてたんだぜ、ガイ!」

そう言って俺はガイから離れると、ガイの腕を引っ張り目的の場所へと急いだ。早くしなければ時間が勿体ない。急ぐ俺に苦笑いを浮かべつつも、ガイは俺に続いて走った。
まずは喫茶店へ行った。話したいことが山ほどあるのだ。だから落ち着いて話せる所を選んだ。高校時代は値段が安い店ばかりへ行っていたが、今日は久々にガイに会えたということもあるし奮発した。俺は甘い物を食べたかったのでパフェとメロンソーダを頼むことにした。ガイはそんな俺の様子を見てにやりと笑った。

「…ルーク。おまえまだミルク飲めないんだな?」

「うっうるせえ!悪いか!そ、そりゃガイに会ってない数ヶ月の間、頑張って飲もうとしたけど…嫌いなもんは嫌いなんだ!」

「相変わらずだなールークは!ま、努力は認めてやるよ」

ガイはそう言ってそっぽを向いた俺の頭を撫でた。なんだか少し馬鹿にされているような気がしないでもないが、この行為が久々で嬉しくて、怒るに怒れない。
そもそも頭を撫でる行為は幼い頃、ガイが俺のことを年下だと勘違いしていたことから始まったのだ。そして俺も、ガイのことを年上だと思っていたから随分ショックを受けたものだ。今でも時々ガイと俺は本当に同い年なのかと疑問を抱くほどだ。それほどガイは大人なのだ。

「…ガイは何頼むんだ?」

「うーんそうだなぁ…じゃあ、サンドイッチと紅茶で」

「卵豆腐あるぜ、卵豆腐」

「っ…おまえな、俺だって嫌いな物は嫌いなんだよ」

「だろ?嫌いなもんは食えねーじゃん」

「おまえの場合、嫌いな物が多いんだよ…とにかく注文しようぜ、すみませーん!」

それからは注文した物を食べながら色々話をした。俺は学校の話、ガイは仕事の話。笑いながら楽しく話をしていると時間が経つのはあっという間で、気付けば1時間以上経っていた。次に行く所もあるし、俺達は会計を済ますことにした。

「ガイは払わなくていいぜ、俺が奢る!」

「おいおい、無理しなくていいんだぜ?」

「無理なんてしてねえよ!」

会計が予想を少し上回った値段でちょっとビビったが、払える範囲内だったので胸を撫で下ろした。
そうして喫茶店を後にし、俺達は続いて洋服店に寄った。
小、中学生の頃はガイと共に買いに行っていたが、高校に入学すると、俺は新しい友達とばかり洋服を買いに行くようになった。そのせいかガイからは「中学の頃と印象が変わった」と言われ、少し寂しい思いもした。だけど今日は二人きりだし、俺の服はガイが、ガイの服は俺がそれぞれ選ぶことにした。俺には似合わないんじゃないかというような服をガイは選んだが、ガイが似合うと言うものだからそれを買うことにした。ガイの言葉は嘘ではないだろう。俺もガイの服を選んだが、さっき俺と全く同じようなことを言った。けど、おまえの言葉を信じるよ、と言ってくれた。そうして他にも2着ほど買って、二人で支払った。
それから俺達は本屋に向かった。

「あっ!この漫画の新巻もう発売されてたのか…あっこれも!うわ雑誌も出てんじゃん!でもバイト代もうねぇし…はぁ…」

「…どれだって?」

ガイがそう尋ねてきたので、俺は落ち込みながらも答えた。するとガイは俺が答えた漫画と雑誌を手に取ると、レジへ持って行き、差し出した。

「お、おいバカガイ!!俺は欲しいとか買ってくれなんて一言も…!」

「ん?そうか?ならこれは久々に会えたおまえにプレゼントだ、ルーク」

ガイは笑顔でそう言って会計を済ませ、受け取った袋を俺に差し出した。相変わらず、ガイは優しい。こういった大人な態度をとるガイが悔しくて、でも嬉しくて。

「ガイ……、…ありがとう」

そして、最後にファミレスに寄った。
ここのファミレスはガイがよく行くのだと言う。美味しくて評判が良いという所だという話を聞いたが、食べてみると本当に美味しい。

「おっ、うめぇな!…でも、ガイが作ってくれたハンバーグの方がうまいや」

「はははっ、そりゃ光栄だなぁ」

高校生の頃はよくお互いの家へ遊びに行って、一緒にゲームして遊んだり、だべったりしていた。そしてその度にガイに飯を作ってもらっていたのだ。ガイの料理は本当に美味しくて、いくら食べても飽きないぐらいだ。俺もたまに作っていたが下手くそで、ガイに教えてもらったりした。

「またガイの料理食いてえなぁ…」

「今度予定が空いたら、作りに行ってやるよ。ルークは少しは料理作れるようになったのか?」

「結構作れるようになったんだぜ!今度食べさせてやるよ!」

「はは、そりゃ楽しみだなぁ!」

今度がいつになるかはわからないが、きっと長期休みには遊べるだろう。その時が楽しみだ。
料理を食べ終え二人で会計を済ませて外へ出ると、辺りは暗闇に包まれていた。腕時計を見ればもう9時を過ぎていた。

「もうこんな時間か…そろそろ帰らないとな」

ガイが少し寂しげにそう言った。俺は明日は昼からだしオールしてもいいぐらいだが、そうはいかない。ガイは明日も仕事があるのだ。会えなかった分もっと一緒にいたいが仕方がない。

「そっか…」

「っと、その前に…これをルークに渡しておくよ」

そう言ってガイから渡されたのは、何の変哲もないただの鍵。

「…何だこれ?」

「何って、合鍵だよ合鍵」

「なんだ合鍵か……って合鍵ィ?!」

合鍵と答えられ俺は驚きのあまり思わず変な声を出してしまった。周りの人が何だと思い一斉にこちらに視線を向けたが、そんなことを気にしないぐらい驚いた。

「ははは!驚きすぎだろ、ルーク」

「だ、だってよ!普通こういうもんは恋人に渡すもんだろ?!ガイにだって…いつかできるだろうし」

「うーん…まぁ確かにそうだなぁ」

ガイはかっこいいし性格も良いし、恋人ぐらい出来てもおかしくはなく、むしろ自然だ。それにガイは高校生の時、女子生徒からとても人気があった。ファンクラブもあったという話を耳にしたことがあるくらいだ。実際に何度か告白されたりもしていた。しかしガイは全ての告白を断っていたのだ。理由は何度も聞こうと試みたがその度にはぐらかされていた。だが今日こそは会話の流れからしてもはぐらかす事はできないだろう。そう思って尋ねた。

「なぁ、ガイは何で恋人作らねぇんだ?」

「何で…って言われてもなぁ。今の俺には必要ないし、そもそも忙しくてそんな暇はないからな」

「あ、そっか…」

うっかり失念していたが、ガイは今社会人だ。社会人になってから数ヶ月しか経っていないし、恋愛する時間もないほど多忙なのだ。

「でも高校の時はどうなんだよ。告白全部断ってたじゃん」

「高校の時も同じだよ。必要なかったからな。勇気を振り絞って告白してくれた女の子達には悪いが…。それに、ルークがいるからな」

「お、俺が?どういう意味だよ」

何故今の話で俺が出てきたのかわからず困惑していると、ガイが笑って答えた。

「ルークといる時が一番楽しいからだよ。素の自分でいられるし、着飾る必要なんかない。安らげるんだよ、おまえの隣は」

だから自分に恋人は必要ないんだと、ガイは言った。
まさかガイがそう考えていたなんて、全く予想外だった。驚いたと同時に嬉しく感じた。恐らく、ずっとそう思ってくれていたのだろう。高校の時から、いや、幼い頃からずっと。改めて考えてみれば、俺も意識はしなかったが、ガイといる時が一番楽しいと感じていたことに気付く。もちろん、今も。

「お、俺もガイといる時が一番楽しいし気楽なんだ。当たり前すぎて今まで意識なんてしなかったけどさ…」

「はは、意識しないぐらいそう思われてたとは嬉しいなぁ」

「おまえに合鍵を渡したのもそういうことさ。いつでも遊びに来てくれってな」

そう言ってガイは片目をつぶって、改めて鍵を俺に差し出す。俺は頷きそれを受け取った。ガイの優しさが嬉しく、合鍵を見つめ笑顔を浮かべた。本当にいつでもいいのかと尋ねると、ガイは当然だと答えた。そのために作ってもらったのだからと。

「じゃあいつでも遊びに行くよ。飯でも作っとくぜ?」

「有り難いけど日によるからなぁ…それじゃ来る日はメールしてくれ。それが一番確実だろ」

わかったと俺が頷けばガイは嬉しそうに笑った。いつも疲労を重ねているから飯を作らずに済むだけでも相当楽なのだろう。予定が空いている日があれば作ってやろう。それが今の俺にしてやれることだ。

「と、名残惜しいがそろそろお別れだ」

そう言われ時間を見ればガイが乗る電車が来る時間だ。思わず俺は眉尻を下げてしまった。また明日にでも会えるのはわかっている。けど、久々に会えたのだからもっと一緒にいたかった。俺の態度にガイは笑って、俺の頭にぽんと手を置いた。

「そんな顔するなって!これからまた何度でも会えるんだ。それに大切なのは会うことじゃなくて、会えなくてもお互いを思い合ってることなんじゃないか?」

「…ああ、そうだな!」

ガイの言葉に俺は頷いた。確かにガイの言う通りだ。大切なのは会うことじゃない。お互いを思うその気持ちこそが大切なことなんだ。それは忘れてはいけないこと。忘れることなど絶対にないが。

「それじゃ、また今度な!」

「おう!明日にでも行ってやるからな!」

「はは、大歓迎さ!じゃあな!」

ガイはそう笑顔で手を振りながら去って行った。本当に明日突撃してやろうか。
それにしても充実した一日だった。ガイと久々に時間を共有できて楽しかった。ガイとの時間が一番過ごしやすく快適で、幸せでたくさん笑える。何気ない日々が宝物になるってこういうことなんだな。その宝物を胸に、またこれからたくさん宝物を作っていこう。零れてしまうぐらいに。夜空に煌めく星のように輝かしくてたくさんの宝物を。




心はいつもおまえの隣に




高校卒業して4ヶ月ぶりぐらいに会った相棒との出来事を参考に書いたものですん
久々に会えるとほんとに嬉しいけど、その分お別れするのが嫌で嫌で…離れたくないって思いましたねー。せめてあと一週間一緒にいたいと
ガイとルークもそんな感じなんじゃないかなと思います。本編でも7年も共に過ごしてきたわけですしね
2012.4.4


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