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Luke + Guy
おまえが与えてくれるもの
シリアスでもほのぼのでもない何とも言えない話。ルークが高校1年生、ガイが大学1年生という設定です






「…う、うわあああぁっ!!」

そう叫びながら俺は飛び起きた。呼吸を少し荒くしながらも辺りを見回す。俺の手を見詰める。そうしてしばらくして、俺はようやく理解した。

「はぁぁ…何だ夢かよ…ったく…」

安心感でどっと脱力した俺はベッドに倒れ込んだ。夢でよかった。安堵の息をつき、ほっと胸を撫で下ろした。
というのも、俺はガイが死んでしまう夢を見てしまったのだ。夢だとわかっても恐怖感が取り払えない。それほどリアルで怖かったのだ。
夢の内容はこうだ。俺とガイが一緒に出掛けていたところ交通事故に遭って、ガイが俺を庇って重傷を負ってしまう。辺りは騒然とし、運転手はパニック状態。近くにいた人が救急車を呼んでくれたが間に合うかどうかわからない。俺はガイが俺を庇って重傷を負ったことに罪悪感を抱きつつも怒りが芽生えていた。なんで庇ったりなんかしたんだ、馬鹿じゃねぇのか。横たわるガイの身体を支えながらそう吐き捨てれば、ガイはこんな状況だというのに笑みを浮かべた。おまえを守れてよかった、俺は自分のことよりルークが大事なんだと息も絶え絶えに言った。その間にも懸命に止血しているはずのガイの傷口からは赤い血がとめどなく溢れてくる。俺の瞳からも涙が溢れてくる。ガイの周りが赤く染まっていく。それを洗い流すことなんで無力な俺の涙には出来るはずもなく。そして助かってほしいという祈りも虚しく、ガイの命の鼓動は止まった。もう動くことはない。永遠に。俺は信じられなくて、現実を受け止められなくて、けど俺の腕の中にいるガイは生きていなくて。俺の手はガイの血で真っ赤に染まっていて。
そうして叫んだところで目が覚めたということだ。

「…そうだ、ガイ!」

俺は布団を蹴飛ばして飛び起き、弾かれたように家を飛び出した。時間は深夜1時。暗闇の中を俺は駆けて行く。そうして辿り着いたのはガイの家。慌ててインターホンを押した。返事がなくても何度も何度も。すると家の電気が付き、ガイがドアを開けた。

「はーい…どなたですかこんな時間に…って、ルークじゃないか!」

「が、ガイ!!」

ガイは眠たそうに目を擦っていたが、俺を見た瞬間目を見開いた。俺は構わずガイの名を呼んだ。当然ガイはどうしたんだと返してくる。

「い、生きてるよな!?ガイ、生きてるんだよな!?」

「おいおい、こうしておまえと話してるんだから当然だろ?」

勝手に殺さないでくれと苦笑いを浮かべながらガイは言った。今の俺にはその言葉が突き刺さり、俯いてしまった。そんな俺を怪訝に思いつつもガイは俺に、とにかくうちに上がれよ、と言って誘ってくれた。言葉に甘えガイの家にお邪魔する。

「何か飲むか?落ち着くぜ」

「あ、ああ…」

ガイはそう言って俺が腰を下ろしている間に飲み物を入れてくれた。それを飲んで少し心を落ち着かせる。

「落ち着いたか?」

「うん…ありがとう」

「いいって。で、どうしたんだルーク?尋常じゃない焦りっぷりだったが」

ガイに尋ねられ、俺はゆっくりとだが事情を説明した。それを聞くとガイは笑った。夢ぐらいで慌てすぎだと。俺はガイのその反応が気に喰わなくて言い返す。

「だ、だってマジでリアルだったんだ!感触とか、血の匂いとか、ほんとに!怖かったんだからな!」

「悪い悪い!そう怒るなって!…だがまぁ確かに、ルークのその夢は現実で起こりうることではあるな」

ガイがそう俺の夢を肯定した。確かに事故なんて誰がいつ遭うかわからない。誰がいつ巻き込まれるかわからない。誰にもわからない。だからこそ、ガイのその言葉で恐怖と不安が増した。

「そ、そんな!…じゃあ俺、もうガイと一緒に出掛けねぇ!」

「待てって!可能性の話だろ?もしかしたらただの悪い夢かもしれない。事故なんて一生遭わないかもしれないじゃないか」

「…そうだけど…でも、怖いよ」

「大丈夫だって!おまえは悪夢を見ちまっただけさ。俺は死なないよ。な?」

ガイは俺の不安を取り除くように、俺の肩に手を置き優しげな声色で言った。そのおかげか俺の不安が和らいだ。不思議だ。ガイが言ってくれると本当に励まされるし安心感を抱ける。それがガイの力だろうか。

「…うん。そうだな、悪い夢を見ちまっただけだよな…ありがとうガイ。安心した」

頷いてそう言えば、ガイはそりゃよかったと笑顔を見せた。ガイの笑顔を見ると安心する。もう俺の中から恐怖心は消えていた。

「どうする?泊まっていくか?」

「うーん…そうさせてもらう。今家に帰ってひとりで寝るのは怖いし」

俺の両親は仕事が忙しく、あまり家に帰ってこれない。俺は今日も家にひとりでいたのだ。だからひとりでいるよりガイといた方が安心して眠りにつけるだろう。

「あっやべっ!俺、家の鍵閉めてねぇ!閉めてくる!」

「俺も行くよ。だいたいルーク、おまえはこんな時間に出歩いちゃ駄目なはずだぞ」

「う…仕方ねぇじゃん…」

「ルークは慌てすぎなんだよ。ま、今回はいいさ!さっさと鍵閉めて寝ようぜ」

「ああ!」

ガイといつものように話して悪夢なんて気のせいだったかのように思えてくる。ガイはいつも曇った俺の心を晴らしてくれる。そんなガイに俺は何ができるだろう。いつかガイに何かを与えてやりたい。そう思った。





おまえが与えてくれるもの





で、出たー!困ったときの『両親は仕事で忙しい設定』だー!
またこれも何で思い付いたかわからんネタです。思い当たるのはTwitterの診断かな
誰かが死んじゃう夢見るとすごく怖いと思うんですね。家族とか友達とか。私は見たことないからわかりませんが。見たくねえなあ、というか見ちゃ悪い夢らしいですねほんとに
2012.3.30


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