Luke + Guy 指切り ガイが構ってくれなくてうだうだするルークです 最近、ガイが構ってくれない。 「なぁガイあのさ…」 「っと、悪いなルーク。今日もバイトなんだ!遅くなるから夕飯先に食べといてくれ。じゃあな!」 「あっガイ!……またか」 そう言ってガイはまた出掛けていった。最近はずっとこうだ。俺が話し掛けても立ち止まってくれない。話を聞いてくれない。 俺とガイは一緒に住んでいる。俺が高校に通う際、自宅からだと遠かったのでガイの家に住まわせてもらっているのだ。両親は最初はもちろん反対したが、ガイの家に住むと言えばガイなら任せられるだろうと承諾したのだ。ガイと親友でよかったと心から思った。 そしてガイは今、大学1年生でバイトをしている。大学に進学してからというものガイは忙しさのせいか俺に構ってくれなくなった。それが俺は寂しい。かっこ悪いと思われるかもしれないが、俺はガイに甘えたいのだ。いつも兄のように接してくれたガイに。今まではどこかに出掛けて遊んだりするぐらいしかできていなかったから、たくさん話したいし構いたい。あいつとの時間を作りたい。しかしガイはそんな時間を作るどころか相手にしてくれない。それがひどく俺の心を締め付けた。 たくさん話したいと思っているのは俺だけなのではないか?ガイは本当は俺がいることに迷惑しているのではないか?だからガイはあまり家にいないのではないか?そんな不安感が俺に押し寄せた。 ふとカレンダーを見てみると、ガイの予定が記入されていた。今週の土日はバイトも休みで暇なようだ。そうだ、誘ってみよう。一緒に家でぐだぐだしようと、どこかに遊びに行こうと。それで断られてしまったら、もう、諦めよう。俺はそう決心した。ガイが帰って来るまで寝ることにしよう。そして俺はソファの上で眠りについた。 「ルーク、俺、恥ずかしいけど…彼女ができたんだ」 「…え……」 「同棲することにもなった。だから悪いけど、出て行ってくれないか」 「な、ん…そんなの、俺は……!」 「おまえより、彼女の方が大切なんだ。当然だろう?」 「そんなの…いやだ…ッ!」 「……ッ!!」 俺は、辺りを見回した。ガイは、いない。 「……なんだ、夢、か……はぁっ」 夢だったことに安心感を抱き一気に脱力する。嫌な夢を見た。最悪だ。よりによってこんな時に。汗をかいていて服も少しべたついていて気持ち悪い。着替えよう。 …夢で安心したけど、もしこれが本当だったら?正夢になってしまったら? 「俺は…どうしたら…」 再び不安感が押し寄せる。 怖くなった。ガイが俺の側からいなくなってしまったら。嫌だ。あいつは俺の大事な親友で兄にも等しい存在なんだ。いつだって世話をしてくれた、相手をしてくれた。ガイも俺のことを弟のようだと言ってくれた。そんなガイが、俺を置いていく。怖くてつらくて、俺はどうしようもなくなり、自分の部屋の布団に潜り込んだ。 ガイに会うのが、怖くてたまらなかった。 「ただいまー…遅くなって悪い…って、ルーク?」 今日もバイトは忙しく、予定より1時間も遅く帰宅した。だが、いつもおかえりと迎えてくれるルークの姿が見当たらない。部屋にいるのだろうか。そう思って、ルークの部屋のドアをノックしてみる。 「ルークー、いるのかー?」 呼び掛けても返事はない。もう寝てしまったのだろうか。しかしまだ10時だ。ルークはいつも11時から12時の間に寝るから少しおかしい。だけどもしかすると体調を崩してしまったのかもしれない。そう思い俺はドアを開けようとした、が。 「…あれ?」 鍵が閉まっていた。いつもなら開いているはずなのに。ルークは出掛けているのだろうか?しかし部屋からは気配を感じる。どういうことだろう。やはり体調が悪いのか?いや、体調が悪いならわざわざ鍵は閉めないだろう。 …俺に会いたくないのだろうか。俺にいない間、一体ルークに何があったのだろう。そう疑問に思っても今は尋ねることができない。今日はそっとしておいてやろう。そう思って俺はルークの部屋から離れた。 風呂へ入り、夕飯を食べようと冷蔵庫を開けた。するとルークの分の夕食があった。 「あいつ、夕飯食べてないのか…」 これは重症だ。何か悩みがあるのだろう。明日すぐにでも聞いてやりたいが、あいにく明日は朝から大学に行って講義を受け、それが終わり次第すぐにバイト先へ向かわなければならない。だから帰宅時間は今日とあまり変わらないだろう。明日、もし今日と同じように帰宅してルークがいたなら、部屋の鍵も開いていたなら、聞いてみよう。さすがに心配だ。そう思いながら夕飯を食べ、俺も眠りについた。 「ルーク、行ってくるから朝飯食えよー。今日学校だろ?じゃあな!」 ガイは俺の部屋に向かってそう言うと、さっさと大学へ向かって行った。俺はというと、まだ部屋に閉じこもったままでいた。 昨日はちゃんと眠れなかった。不安感が取り除けなくて、胸がもやもやしていて、何も考えたくなかった。ガイに罪悪感を抱きながらも、恐怖感も抱いていた。俺の夢が本当なら、俺は…。 どうしてこんなに不安なんだろう。いつもならそんなことがあるわけないと不安を振り払うのに。どうしてしまったのだろう。 とにかく朝食を食べるために部屋を出た。すると、机には一人分の朝食が置いてあった。きっとガイが作っておいてくれたのだろう。食欲はあまりないが、食べなければ。ありがとうと心の中で言いながら口に運んだ。俺好みの味付けがされた、栄養バランスも取れている朝食。ここに来た頃は『ガイ様特製ルーク好みな朝食だ』とか言って毎日出してくれたっけ。しかし時が経った今、もうほとんどそうして丁寧に作ってくれなくなった。 …もしかすると、俺の世話が面倒になったのだろうか。いつも甘えてばかりだったから…嫌気がさしたのだろうか。…ごめん、ガイ。 食べ終わって台所へ持っていこうとしたその時、ふと目に入ったものがあった。 「…これ、ガイから…」 そこにはガイからの置手紙があった。 『何かあるなら俺に相談しろよ。食べ盛りのおまえが夕飯食べてないなんて心配だからな。』 そう書いてあった。原因は他でもないガイだというのに。なんだかおかしくて少し笑ってしまった。けど、そのおかげか少し楽になった気がした。 学校に行く気になれたので準備をする。そうだ、学校で笑い話にしちまえばいいんだ。みんなで楽しく過ごして忘れちまえばいい。なんてくだらない悩みなんだって笑い飛ばしてしまえばいい。それが一番だ。それが今の俺に残された最善策。 いつもの元気が出てきたとき、インターホンが鳴った。こんな朝早くから一体誰だろう。そう思い玄関へ急ぎ、開けるとそこには一人の女性がいた。綺麗な人だ。俺は全く知らない人。ぽかんとしているとおずおずと話し掛けられた。 「あの…」 「えっ、あっ!はい、何ですか?」 慌てて返事をする。その様子が面白かったのか、女性は笑い出した。少し恥ずかしくなり俺は目を逸らす。すると女性は笑顔を浮かべながらごめんなさいと言って、俺に尋ねてきた。 「ガイ…いえ、ガイくんはいますか?」 「え、いませんけど…さっき大学へ向かいました」 「あら、そうなの?ガイったら…全くもう、一緒に行く約束してたのに」 俺は、頭が真っ白になった。親しげにガイの名を呼ぶ表情、態度。雰囲気が先程とは変わって、愛情がこもった瞳、口調。愛おしげに想うような――それはまるで、彼女のようだった。 「あ、ごめんなさいね。それだけなの。朝からごめんなさい。それじゃあ失礼しました!」 そう言って彼女は手を振り去っていった。誰もが惚れるような表情で、綺麗な髪をなびかせながら。 俺は、返事ができなかった。 それから俺は学校に行く気にもなれず、ただぼんやりとしていた。気付けばもう窓の外は真っ暗だった。ああ、そういえば玄関の鍵、閉めたっけな。またガイに怒られちまうかな。無用心だぞって。あいつ、ちょっと心配性だからな。けど、もういいや。もう関係なくなるんだから。そう思って俺は布団に潜り込んだ。 ガイに、彼女がいた。ただその事実だけが頭の中をぐるぐる回って、何も考えられなかった。 正夢になってしまった。ガイが最近構ってくれなかった訳はきっとそういうことなんだろう。大学に行って彼女と過ごす方が楽しいから。俺より彼女と共有する時間が心地好いから。最近バイトばかりなのも、きっと何かをプレゼントするため。すべて、納得がいく。 これからガイはどんどん俺から離れていくだろう。俺は、どうすればいい。離れないでくれなんて言えない。彼女の方が大事に決まっている。そんなことを言ったところで相手にされないことは明白だ。嫌だなんて言っても、喚いても、叫んでも、…泣いても、何にもならない。もう無理なんだ。 「…家に帰る準備、しなきゃいけないんだろうな……」 何も考えたくなくて、俺は目を閉じた。瞳から何かが零れ落ちたのは、きっと気のせいだ。 「ただいまー…ってまたいないのか…」 昨日よりは1時間早く帰宅できたのでルークが迎えてくれると思ったのだが、またいない。部屋に閉じこもっているのだろう。今日は聞いてやりたい、あいつの話を。 とりあえず風呂へ入り夕飯を食べる。夕飯を食べる際に冷蔵庫を見たとき気付いたのだが、ルークは今日は作っておいた弁当も夕飯も食べていない。学校、欠席したのか。腹は減っていないのだろうか。それとも、腹が減らないくらい悩んでいるのだろうか。なんにせよ心配だ。 とにかくルークと話をしたい。そう思い、ルークの部屋のドアをノックした。 「ルーク、いるんだろ?入っていいか?」 またもや返事がない。もどかしくなり、俺はドアを開けた。今日は鍵が開いていた。閉め忘れていたのだろうか。まぁ、今はそんなことはどうでもいい。 「ルーク、起きてるのか?」 そう話し掛けるとルークが布団を吹き飛ばす勢いで飛び起きた。ルークは俺を見ると驚き、そして顔を少し歪め、また布団に潜り込んだ。 「おいおい、俺を見ただけで拒絶か?ちょっとショックだぞー」 そうおどけながらルークのいるベットへと近付く。ルークは一向に布団から出て来ようとしない。俺はそんなことは構わずルークの側に腰を下ろした。 「…なぁ、ルーク。どうしたんだ?」 そう優しく尋ねた。しかし、ルークは答えない。布団に潜り込んだまま動かない。 俺にはルークがどうしてそんなに引き籠るのかわからない。だからいつものように励ますこともできない。それが俺にはもどかしかった。 ルークを布団の上からぽんぽんと叩く。するとルークが突然飛び起き、俺を見た。 「どうしたんだ、ルーク」 「だ…だってガイ、彼女いるんだろ!?」 「へ?彼女?」 何のことかさっぱりわからず俺はぽかんとした。するとルークは怒りつつも事の経緯を話し始めた。最近俺が構ってやれてないこと、俺に彼女が出来た夢を見たこと、そして先日、綺麗な女性が俺を迎えに来たこと。…なるほど。 全てを聞いて、思わず俺は笑ってしまった。 「はははっ!なんだ、そんなことかよ…はは」 「そ、そんなことってなんだよ!俺は!…俺は……」 ルークはそう言うと黙り込んでしまった。よく見ればルークの目には少し涙が浮かんでいる。頬に涙の跡もある。それほど不安だったんだろう。俺はルークを不安にさせるほど構ってやれなかったことを悔いた。どうしてもっと気を掛けてやらなかったのだろう。少しでもいいから相手をしてやれていたら、こんな不安にさせることはなかったのに。 俺は、ルークの頭を優しく撫でた。 「…ガイ?」 「彼女なんていないさ。本当だ。おまえが見た女性ってのはただの友達さ。バイト先も一緒で仲良くなって、彼女の方から学校に一緒に行かないかって誘って来たんだ」 昨日はルークのことが心配で頭がいっぱいで、一緒に行く約束を忘れて一人で大学に行ってしまっただけだと苦笑いを浮かべながら話した。彼女にはガイらしくないと言われてしまったが事情を説明すると、なんでもっと気に掛けてあげないの、高校生なんてまだまだ子供なんだから、と叱られてしまう始末だ。我ながら情けない。 「…けどそれって、気があるってことなんじゃないのか?それに最近バイトばっかだったのは何でだよ」 ルークは未だ不安げに尋ねてきた。きっとこいつは俺に彼女ができて、自分から離れて行ってしまうことを恐れているんだ。高校生なんてまだ愛情が必要な歳だ。それにこいつは高校に入学したばかり。親と離れているせいで寂しさは増しているだろうし、不安感を抱くのは当たり前か。 「バイトは今の時期は忙しくてな、毎年こうらしい。彼女に気があったとしても、告白されたとしても俺は断るよ。俺にとって何より大事なのはルークなんだからな」 「…ほんとか?」 「ああ、信じてくれ」 そう言って俺は小指を差し出した。指切りだ。 今までルークとは指切りをした約束はお互いに破ったことがない。だからこれは絶対に破らないという証だ。口約束では心許ないだろうから。ルークは一瞬躊躇ったが、指切りに応じてくれた。 「…もし、もし破ったりしたらこの家から出てってやるからな!うちにも帰らねぇから!」 「その場合は、何日かかってでもおまえを探してみせるよ」 「…約束だぞ!」 そう言って指切りをした。これで約束を破ることは決してない。ルークがこの先不安感に教われても、このことを思い出させれば大丈夫だろう。 ルークの手を取り、立ち上がらせた。 「それより、ルーク、腹減っただろ?夕飯、特別に作るよ」 「うー…逆に食わなさすぎて腹が減ってないんだ…」 「おいおい、それ危ないじゃないか!学校にも行ってないんだろ、今日は」 「うっ…そっか、弁当食ってないんだった…悪い、あの人が来て一気に学校行く気がなくなっちまって…」 「いいさ。俺も悪かったよ。今週の土日はどっちも空いてるから二人でゆっくり過ごそうぜ。遊びに行くのもいいぜ」 「ほ、ほんとか!?じゃあさ、じゃあさ…!」 「はは、落ち着けって」 指切り どういう経緯でネタが思い付いたのか忘れたけど多分ついったの診断じゃないかなあ 友達に彼氏や彼女ができそうになるときって不安になりますよね、嬉しいけど自分から離れていっちゃうんじゃないかって ルークが異常に不安感に陥ったのはまだ甘えたい盛りで、ガイが取られちゃうんじゃないかって思ったからです 弟ができてお兄ちゃんが「お母さんを取られちゃう!」って思って子供返りしちゃうのと同じですかわいい(^o^) 2012.3.2 [古][新] [戻る] |