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Yuri × Flynn
この手を離さない
幼少ユリフレですー
シリアスっぽい話?子供っぽいですが







幼い頃、フレンと仲良くなったのはほとんど偶然だった。最初は孤児院で見かけて元気な奴だな、とぐらいしか思ってなかった。きっかけは走り回っていてお互いがぶつかってしまったというなんとも言えないものだ。
しかし、フレンを近くで見てとても興味を持った。オレとは全く違うタイプの奴だけど、仲良くなってみたいという気持ちが沸いた。笑顔は向日葵みたいだし、少し天然なところもあって放っておけないと思うようにもなった。
それからは毎日話して毎日遊んで一緒に眠った。まるで兄弟のように暮らした。それにフレンがとても話してくるのでオレは嬉しくなった。しかし、あまりにもしつこくてうざく感じたこともあった。
そしてその日のオレは、限界だった。

「ユーリ!きょうは何する?」

「……はあ」

「ユーリどうしたの?どこか痛いの?」

声変わりもまだまだなその高い声が今は煩わしい。返答しないオレの顔をフレンが覗き込んできた。そしてフレンが熱でもあるのかと、オレの額に手を付けようとした瞬間。
パチンと乾いた音が響き渡る。

「いたっ…!」

フレンの手を思い切り振り払った。フレンは痛そうに顔を歪ませ、少し涙目でオレを見ている。その様子からは、どうしてこんなことを、自分は何かをしてしまったのか、そんな不安感が嫌でも伝わってきた。
だけどオレは、罪悪感を抱かなかった。

「…もう近付くなよ!!」

そう怒鳴ったオレにフレンは肩を跳ねさせた。しかしオレはお構いなしに続ける。

「もううざいんだよ!毎日毎日…もうオレにかまうな!来んなよ!」

「…ごめん。ごめんねユーリ」

そう言うとフレンはほとんど半泣きで去って行った。
オレはこの時ほど後悔したことはない。言葉という凶器でフレンをどれほど傷付けてしまったのだろう。苛々していたとは言え、あいつのことを考えてやれなかった。フレンがどんな気持ちでオレの言葉を聞いていたのか、自分は気遣って声を掛けただけなのに。
成人した今でも鮮明に思い出せる、あの時のフレンの表情。つらそうで悲しそうな。
フレンの手はもちろんのこと、振り払ったオレの手は赤くなっていた。それはまるでオレ達の心を示しているような、そんな気がした。

フレンはそれから3日間、オレの元に来なかった。あまりに勝手な思考だがやっぱりフレンがいないと寂しくて暇で仕方なかった。さすがに言い過ぎたかと心配になり、孤児院にいる奴にフレンは何処かと聞くと、誰も知らないという。
おかしい。フレンは何処かに行くときには必ず誰かしらに行き先を告げているはず。しかし今回は誰も聞いていない。
まさかあいつ、と最悪の事態を予想し頭の中が真っ白になり血の気が引いていくのがわかった。いてもたってもいられなくなり孤児院を飛び出した。大人達の静止の声が聞こえたがそんなものどうでもいい。フレンが外へ行ってしまったかもしれないのだから。
そうして下町を走り回っているとハンクスじいさんに声を掛けられた。フレンのことで話があるという。

「じいさん!フレンは?!」

「落ち着きなさい、ユーリ」

「おちつけねえよ!オレのせいで…」

「フレンは風邪で寝込んでおるんじゃよ」

「え…」

話を聞けばフレンは三日前から風邪を引いてしまったらしく、孤児院にいる他の子供達に移してはいけないということで今は別室にいるという。ひどい熱らしい。
三日前と言えばオレがフレンに来るなと言ってしまった日だ。偶然重なってしまったのかと思うと、ハンクスじいさんから注意を受けた。

「フレンの風邪の悪化の原因はユーリ、お前にもあるんじゃぞ」

「フレンはユーリと傷付けた、嫌われてしまったと泣いておった」

違う。違うんだフレン。傷付けたのはオレの方じゃないか。お前にぶつかってしまい酷い言葉を投げ捨ててしまった。

「オレの、せいだ」

「そう思うなら、謝って来んかい!」

「…言われなくてもわかってるよっ!」

オレは地を思い切り蹴り駆け出した。フレンの元へ向かわなければ。謝らないといけないんだ。無我夢中で走った。
フレンがいるという部屋に着くと、おばさんが看病をしていた。いきなり入って来たオレに驚いた顔をしたが、にっこりと微笑み「あとは任せるわ」と言い出て行った。
フレンが寝ている横にある椅子に座り、フレンの顔を見た。フレンは苦しそうに眠っていてオレに気付いていない。赤く染まった頬を優しく撫でた。

「…ごめんな、フレン」

「…ぅ、ゆー、り?」

「フレン…!」

フレンが目を覚ました。安堵するもつかの間、フレンはまだ苦しそうにしている。なのにこいつは無理に笑って。胸が苦しくなる。

「ユーリ、来てくれたんだ。ありがとう」

「当たり前だろ…オレのせいでもあるんだから…」

「ちがうよ。ぼくがユーリを傷付けちゃってたから…」

するとフレンはオレの手に自らの手を重ねてきた。その手は熱いものだった。

「ごめんね、ユーリ。ほんとは、ユーリのとこに行きたかったんだけど、あたまがぼんやりして行けなかったんだ」

「お前…オレが来んなって言ったじゃん」

「あやまりたかったんだ。つきまとっちゃって、ごめんね」

「あやまるのはオレの方だよ…フレン、ごめんな…」

そう言ってフレンの手を強く握りしめた。するとフレンも同じように握り返してきて不覚にも泣きそうになった。泣いちゃいけない、フレンの方がつらいんだから。
今のオレにできることは、ただとつ。

「フレン、オレがかんびょうしてやる」

「うれしいけどそんなのわるいよ…。かぜもうつしちゃうから」

「だったら、オレにうつして治せ!」

「…しらないよ。けど、ありがとう」

そう言ってフレンはふわりと穏やかに微笑んだ。その笑顔を毎日見ていたオレは幸せ者だと思う。見るたびに癒されるのだから。しかし今日はオレがフレンを癒してやるんだ。
すぐに冷たさを失うタオルを替えフレンの額に当てたり、飯を食べさせ水を飲ませたりと、子供のオレにとっては大変だったがフレンが元気になるのならいくらでもやる。オレ達は眠りにつくまで手を繋いでいた。
そしてオレが来たことで楽になったのだろうか、次の日の朝からいつものフレンの笑顔が見れた。さすがに自惚れすぎだろうか。いや、もうこの際自惚れてやる。
そうして再び、手を繋いだ。

もう二度と






この手を離さない





風邪は結局、見事にオレに移ったが。






よくある風邪ネタを幼少で!
幼少フレンひらがなだと可愛いですよね!ショタハアハア
あの子の笑顔は癒しそのもの^^^^
2011.3.25


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あきゅろす。
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