Yuri × Flynn
幸せなんだ。
嫉妬心みたいなんだったりユーリにはエステルの方が似合っとるわ!とかいろいろ迷ってるフレンがいます
帝都ザーフィアス。僕が生まれ育った下町だ。今、僕はそこでひたすらに走って逃げ続けている。
事の発端は僕がユーリ達を見かけたことにある。
休憩中に下町へ訪れると、世界を星喰みから救い出した彼らが談笑しているのが目に入った。魔導器が世界からなくなり、エステリーゼ様もレイヴンさんも凛々の明星も忙しく、皆会う暇がなかったようだ。リタは度々呆れた表情で、レイヴンさんとジュディスは微笑ましそうに、カロルは自分を認めてくれたユーリを兄のように慕い、エステリーゼ様に関しては頬を赤らめながら話されていた。
僕は、エステリーゼ様のその様子を見て思った。エステリーゼ様は、ユーリのことが好きなのだと。
考えてみれば当たり前だろう。エステリーゼ様はユーリに数え切れない程助けられてきたんだ。彼女の命を救ったのも彼らであり、ユーリだ。僕は騎士でありながらも彼女を守ることができなかった。ユーリの方が頼れるだろう。
信頼する、尊敬する二人が幸せになるなら、僕は喜んで身を引こう。それにユーリとエステリーゼ様はお似合い、というには少し違う気がするが、漆黒と純白という表現が相応しい二人だ。お互いが持っていない部分を補うことができる。理想的なのではないだろうか。
しかし考えれば考えるほど、僕に不安が襲い掛かる。胸が苦しくなる。ユーリは下町を一緒に過ごしてきた親友であり、エステリーゼ様は僕と親交を持って下さった方だ。そんな大切な二人の幸せを願うのなら、ここでユーリに別れを告げるべきではないのか。そんなことを思いながら彼らを見ていた。
すると向こうが僕に気付いたようだ。
「ワウッ!」
「あ!フレンだよ、ユーリ!」
「とっくに気付いてたぜ、カロル先生」
ラピードが喜んだように吠え、カロルが言うと、ユーリは彼の頭をくしゃりと撫でながら応えた。
「ふふ、愛の力かしらね」
「何それ?バカっぽい…」
「フレン!見回りです?ご苦労様です!」
ユーリの言葉に反応するようにジュディスが微笑んで、リタは呆れた表情をして、エステリーゼ様は満面の笑みで向かえて下さる。
「フレンちゃんじゃな〜い!そんな寂しそうな顔しなさんな!さあおっさんの胸に飛び込んでおいで!」
「おっさん引っ込んでろ」
「ちょっと青年ひどいって!」
そしてレイヴンさんが気遣って下さった。
しかし今は彼らと話す気分にはなれない。また彼ら全員に会える日はあまりないかもしれないが、今の状態で話しても申し訳ない。そう思い今は仕事中だからと逃げるように答えた。
「騎士団長様がわざわざ下町の巡回に来ねえだろ。休憩中だろ?フレン」
さすがは長年一緒にいるだけある。ユーリには全てわかっているようだった。
「あ、ああ…そうだけど…」
「どうした?なんか不都合なことでもあんのか?」
「あ…その…」
言葉に詰まる。どうしたらいいものか。とにかく何か話そうと思考を廻らせるが何も思いつかない。
「フレンくんはあまりにカッコイイ俺様に緊張して話せないんだわ」
「だからおっさん黙ってろ」
「だから青年!扱いひどいって!」
ユーリとレイヴンさんのそんなやり取りの中にエステリーゼ様が入って来られた。見かねたのだろうか。
「ユーリ!レイヴンはフレンをフォローしようとしたんですよ!」
「さすが嬢ちゃん!話がわかるね!さあ胸に飛び込んでおいで!」
「スルーしとけエステル」
「ユーリ!きちんと話を…」
ダメだ。頭の中がぐるぐるしてる。やはりユーリとエステリーゼ様は―――
考え出す前に、僕は走り出していた。
「…っごめんなさい、皆!」
「あ!おいフレン!待てよ!」
ユーリが追いかけてくる。だけど体力は僕の方がある。幼い頃から勝ち続けてきたんだ。追い付かれないはずだ。とにかくただひたすらに下町を走り続けた。
最近の僕は一体どうしてしまったのだろうか。自分でも全くわからなかった。
闇雲に走り続けてしばらく経ち、疲れてスピードが落ちてきたところで
「…っ…待てっつってんだろ!!」
ついにユーリに追い付かれてしまい、腕を掴まれた。
二人して近くにあった階段に座り込んで休憩する。それからしばらく経って呼吸が落ち着いてきたところで話し出す。
「ユーリに追いつかれるなんて…思わなかったよ…」
「追いついて来い、なんて言ったのはどこのどいつだっだよ」
ユーリは知らぬ間に僕を追い抜かしていたのだ。いつの間にかユーリの背中を追うことになっていたなんて気付くことができなかった。また追いつかなければ差がつけられてしまう。
「で、何で急に逃げ出したんだよ」
「う…ぁ…その…」
単刀直入に聞かれた。答えを言ったら、ユーリはどう思うのだろうか。もし本当にエステリーゼ様と――肯定されるのが怖くて言い出すことができない。騎士たる者が情けない。
「…エステルを見ててオレがどう思ってるか不安になったのか?」
ユーリには全て筒抜けだった。隠し事をしていてもいつかは見つけられる。幼い頃からそうだった。
「はは…さすがだね」
「お前のことでわからねえことなんかねえよ」
「僕だってそのつもりだけどな」
「オレの方が一枚上手だったな」
「そうみたいだね」
二人でそう笑い合った。ユーリと話していると不思議とリラックスができる。長い付き合いだからだろうか。それから少し間を空けて思っていた事をユーリに話した。
「けど、二人が幸せになるなら…僕は…」
そう言って顔を伏せる。話していて泣きそうになった。なんて情けない。でも本当は離れたくなんてないんだ。
ユーリからの反応は、ない。
聞いていて馬鹿馬鹿しいと思ったのだろうか。見捨てられてしまうのだろうか。ユーリはそんな人じゃないのにそう考えてしまう自分に腹が立つ。
するとユーリが口を開いた。
「馬鹿馬鹿しいよ、お前」
そう言われて心が痛んだ。と同時に涙が出てきてしまった。なんとか止めようとするが、止まってくれない。しかも嗚咽まで出る始末だ。そんな僕の様子に気付いたのか、ユーリが僕の顔を覗き込んできた。
「フレン?…おまっ何泣いてんだよ!」
「っ…ごめ、…!」
「ほら落ち着け!な?」
そう言ってユーリは慌てながらも僕を抱き締めた。そうやってユーリが僕に優しくするから、申し訳なくて余計に泣けてきてしまう。
「ちょうどいいから今まで泣けなかった分泣いとけよ。周りには誰もいないみたいだしな」
ユーリは辺りを見渡しながら言った。確かに帝国騎士団長が泣いていたということが皆に知れれば、騎士達も下町の皆も不安になるだろう。
僕は言われるままに、彼の腕の中で泣き続けた。
ユーリは僕がひとしきり泣いて落ち着いたのを確認してから謝ってきた。僕も泣き出してしまった事を謝り、すっきりしたと伝えるとユーリは安心したと言った。何故かと問うとユーリは穏やかな表情を浮かべて答えた。
「ああ、お前だってつらいはずなのに全然つらい顔しねえし、オレの前で素直に泣いてくれてよかった」
「…つらかったのかな、僕は」
「自覚なしかよ…タチ悪ぃな」
そう言いユーリは苦笑いを浮かべた。もう大丈夫だと言い何故馬鹿馬鹿しいと言ったのかと問うと、ユーリは頭をがしがしと掻き、呆れた表情をしながら理由を話し始めた。
「お前が不安になりすぎだからだよ…マイナスの方向に考えんな」
「だって…少なくともそういう可能性は」
「ねえよ。エステルには悪いけどな」
ユーリはあっさりと言った。どうして彼女のような素敵な女性を。彼女は優しい人だし共に旅をしてきた大切な仲間だろう。そう言うとユーリは、
「ああ、優しい奴だよ。けどな、オレはお前以外と付き合う気はねえんだ」
「へ…?」
自分の耳を疑った。僕なんかとどうして。僕よりも素敵な方はたくさんいるというのに。何故僕を選んだんだろう。
「お前はどうなんだ?フレン」
「それ、は…確かに…僕の隣にいるのはユーリ以外には考えたことない、かな」
「そりゃ嬉しいな。オレも同じ気持ちなんだよ。これでわかったか?」
ユーリの言っていることがいまいちわからないが、僕と同じ気持ちということはユーリも僕以外に考えられないということだろうか。
「…なんとなくだけど」
「微妙だな…ま、いいさ」
「いいのかい?」
「じっくり時間かけてわからせてやるよ」
ユーリはそう言うと立ち上がり、僕に手を差し延べた。いたずらな笑みを浮かべて。
「ほら、立てるか?お姫様」
「ああ、立てるよ。というかお姫様なんかじゃ…!」
ユーリの手を掴み立ち上がる。どうして彼はこんな恥ずかしいことをすんなり言えるのだろうか。
「オレにとってのお姫様だっての」
「男なんだけどな…」
「気にすんな。宿に行こうぜ」
「え?どうして宿に…」
宿に行くことに疑問を抱いたが、それよりも大事なことを思い出し声を上げた。
「あ…!こんなことしてる場合じゃない!!僕、仕事が…!!」
「落ち着けよ。猫目の姉ちゃんがうまく指導してるだろ」
「そうだが…!ソディアに迷惑をかけてしまっている!!」
「こんぐらいは許してくれるだろ」
帝国騎士団長が不在ではソディアだけでなく他の騎士達にも迷惑をかけているに違いない。このくらいだなんて。なのにユーリは淡々と話し続ける。
「騎士達が言ってたぞ。騎士団長が全然休もうとしなくて困るってな」
「え…?」
騎士達が何故困るのかわからない。逆に僕が休んでしまうと困るのでないだろうか。もちろんソディアもウィチルも、他の騎士達も信頼している。彼らが指揮をとっても何等問題はないはずだ。しかし、僕には騎士団長としての責任があるのだ。休んでいる暇などない。
何故だかわからないという表情を浮かべていると、ユーリはわざとらしくため息をついた。そこまで呆れるものなのだろうか。
「…ったく。自分の立場を考えろ。騎士団長のお前が倒れたらどーすんだよ」
「…あ…確かに…」
ユーリに言われようやく理解した。僕が倒れてしまっては元も子もない。騎士達にも動揺が走るであろう。
魔導器が世界からなくなってからは混乱が続いていて、休む暇もなかった。その忙しさに慣れてしまい、自分の体調管理すら忘れていたのだ。
「これでわかったか?」
「うん…わかったよ。参ったな…皆に心配かけていることも知らずに…」
「わかりゃいいさ。前にも言ったけどあんま一人で無理すんなよ。全部一人で抱えようとすんじゃねえよ」
「…わかっている、さ…」
「わかってねえだろーがっ」
ユーリはそう言うと僕の頭を小突いた。幼い頃からよくされていた行為だ。痛いと文句を言えばお前が悪いと返された。
確かに僕は全てを一人でこなそうとここまで進んできた。皆に迷惑をかけないためにも。良かれと思っていたのだが逆効果だったなんて言われるまで知らずに。
「それに最近ちゃんと飯食ってねえだろ。さっき抱き締めてわかった」
「食べてるつもりなんだけどな…」
「あくまでつもりだろ?ちゃんと食えよ」
「うん…すまない…」
「あんま謝んなって。騎士団長だろ?もっとしっかりしてろ」
「…ああ!」
ユーリに言われ、またしっかりと前を向く。迷いの無い表情で。ユーリには支えてもらってばかりだ。僕も彼を支えたいと思っているのだが。
するとユーリは僕の手を引いて早歩きで宿へと向かう。急ぐことがあるのだろうか。歩き始めしばらくして、ユーリが話し始めた。
「…フレンは一人じゃねえぞ」
急に予想もしてなかったことを話し出すので驚きつつも応えた。
「急にどうしたんだい?」
「オレにも背負わせろよ、重荷をな」
ユーリはこちらを向くことなく、歩調を変えることもなく話し続ける。
「オレだけじゃない。皆もいる。お前はもっと誰かに頼ったりしていいんだよ。フレンだけが全部背負うことはねえんだ」
その言葉に、全てが救われた気がした。不器用なユーリのことだ。面と向かって話すのは嫌だったのだろう。
「あと騎士団内とか貴族から何かされたら言えよ。オレが潰しに行く」
「はは、物騒な話だな」
「ま、指名手配されてたからな」
「それもそうだね」
自然と微笑みながら話した。ユーリの顔は見えないが、彼も微笑んでいるだろう。
「フレン」
「何だい?」
「好きだぜ」
「…僕もだよ」
このやり取りでわかった。僕らはお互いに好きすぎるのだろう。それゆえ相手のことを自分のことのように考え、喧嘩もする。これは素敵なことだ。
「…ありがとう」
「…どういたしまして」
僕らは宿に着くまで、それ以上何も話さなかった。
宿へ着くとエステリーゼ様達が迎えてくれた。心配をかけてしまったようで、僕は謝罪した。皆は構わないと言ってくれたが、リタは呆れていた。しかしジュディスによれば、僕を心配してくれていたらしい。それを聞いた途端彼女は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして怒っていたが。
レイヴンさんが騎士団に連絡を取ってくれていたようで、感謝の言葉を伝え頭を下げた。彼は「フレンちゃんのためなら」とおっしゃってくれた。その後ユーリがレイヴンさんを睨みつけていたが、何故だろうか。
しばし彼らと談笑し、宿のおばさんに夕食を頂き、いい時間になったところで皆別れることにした。夜ももう遅いため、僕はユーリの部屋に泊めてもらうことにした。
当たり前だがベッドはひとつしかなく、僕が床で寝ると提案するとユーリは僕を無理矢理ベッドへと寝かせた。その後ユーリも入り込んできて狭かったが、幼い頃を思い出し、しばらくの間幼少時のことを話していた。お互い知らぬ間に寝てしまっていたが。
僕は彼らの暖かさと優しさに触れた。世界を救ったユーリ達を僕は誇りに思う。また僕も、彼らの誇りであるような存在でありたい。
そんな彼らに思われているなんて、
僕はなんて
幸せなんだ。
後日わかったことだが、エステリーゼ様は照れていたから頬を赤らめていたということだった。結局は僕の勘違いだったのだ。皆に迷惑をかけたことを本当に申し訳なく、そして恥ずかしく思う。
「ごめんなさい…」
「…犬みてえだなフレン」
やたら長い!詰め込みすぎた!/(^o^)\
ユリフレというかユリフレ+メンバーになりましたねー
ユーリはフレンが好きでフレンからの好意にも気付いてたけど告白はしてませんでした
フレンは親友としてではなく無意識にユーリを好きな人だと思って泣きついたり吐露してしまったんです、うん、なんか意味わからないな
ともかく5000HIT御礼に書いたやつでしたありがとうございました!
2011.2.26 修正
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