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Yuri × Flynn
だから、挫けない
サイト開設当時に書いたやつを加筆修正しました
時間枠はユーリが騎士団を辞めた辺りでかなり捏造です。映画?シラネ(゚д゚ )
ちょっと暴力表現ありなんで注意!ユーリさんがフレンを殴るわけではないっす
そしてオリキャラ出るんで苦手な方はバックステップ!






ユーリが騎士団を辞めてもう数ヶ月が経とうとしている。彼が辞めてから僕に連絡はない。一体今どこで何をしているのか、彼の状況を知りたい。おそらく下町で過ごしているのだろうが。

「ようフレン!ちゃんと食ってるか?」

「あ、アンカ」

ユーリの事を少し考えつつ食堂で一人食べようとしていると、同室で同期のアンカが話し掛けてきた。
アンカとは下町の孤児院で出会った。いろいろ手助けもしてくれて、ユーリも僕も、今でも随分お世話になっている。気さくで頼りがいのある人物で、いろんな人から尊敬されている。彼もまた、大切な仲間の一人だ。

「ユーリから連絡は未だにない、か」

そう言い、彼は僕の隣の席に座った。少し残念そうな声色だ。アンカもユーリの事を気に掛けているのだ。

「うん…はは、見限られたのかな」

そう言い自嘲の笑みを浮かべた。ユーリが僕を見限っても仕方のないことだ。騎士団で大したこともできずにいるのだから。己の無力さを呪う。彼と約束したはずなのに。

「そんなわけないない!あいつがお前を見捨てたこと、今までにあったか?」

アンカが軽く手を振りながらその考えを否定した。不思議と彼に言われると安心できる。これもまた彼の成す業だろうか。

「うん…そうだね」

「よし、元気出たな?じゃ、飯食おうぜ」

昔からアンカには助けられている。今だって、これからだって励ましてくれる。あのユーリでさえも励まされていた。それほどまでに彼は他人のことに敏感で、仲間想いなのだ。そんなことを考えながら僕が食事に手をつけようとした、その時――

「ちょい待て、フレン」

「え?何だい?」

「とにかくそれ食うなよ!おばさん!おーばーさーん!!」

アンカが声を上げる。食堂は騎士達で賑わっていて、厨房までアンカの声が届くかどうかわからない。だけどおばさんが気付いたようで、こちらに来てくれた。

「どうしたんだい?アンカにフレン!」

「いや、フレンの飯なんだけどさ…」

「僕のご飯がどうかした?」

そう聞くとアンカが険しい表情を浮かべ、少し間を空けた。そして開いた口から発せられた言葉は、

「……毒が入ってるんだ」

…ああ、またか。
心の中でそう呟き、僕は溜息をついた。これで確か三度目になるだろう。
僕は下町出身で、貴族の人からは成り上がりだと思われている。何故かはわからないが不運にも彼らの目に留まってしまったのだ。こんな金髪だから目立っているのだろうか。他に思い当たる理由はなく、考えても仕方ないと思考を停止させた。

「な…そんなはずは…!」

おばさんは随分驚いていた。それもそのはず。食堂の物に毒が入るなんてことはありえないのだから。おばさんはいつも騎士団で奮闘している僕らのために、愛情を込めて作ってくれている。他にも作ってくれている人がいるが、毒を入れたりする人なんていないのだ。

「いやホントっす、ほら」

アンカが僕の手からスプーンを取り、中身を掬った。それをおばさんは注意深く観察する。するとおばさんが息を呑み、大きく目を見開いた。覗き込めばそこには確かに毒のような物が盛られていた。気付けなかったのが悔しい。

「本当だね…一体誰が…!」

「犯人なんてわかりきってるさ。おばさんも知ってるだろ?フレンが一部の奴らから疎まれてることを」

ああ、そういえばこの前は、毒を盛られたものを気付かずに食べてしまい倒れてしまったんだっけ。それ以上食べていたら致死量だったと医師から告げられたか。
それからアンカはなるべく僕と食事を取るようになった。僕が気付かず食べてしまうことを防ぐためだ。アンカは観察力が鋭く、周りにも敏感だ。僅かにはみ出している毒に気が付いたのか、誰かがこっそりと毒を盛るのを見たのだろう。

「そうだったねえ…フレンには何の罪もないってのに…これが名誉ある騎士団のすることなのかい?!」

おばさんが眉間にしわを寄せ、悲痛に声を上げた。彼女は昔からこの食堂で未来ある騎士団員のために働いている。今までに数多の騎士達を見てきたのだ。だからこんな非道なことが起きるのが悲しいのだろう。

「あはは、平気ですよ。もう慣れてますから」

僕が笑いながらそう言うと、おばさんが顔を歪ませこちらを見た。気を悪くしてしまったのだろうか。

「フレン、無理はしちゃ駄目よ。あんたはもう心も身体も限界のはずよ」

おばさんは穏やかな、しかし悲しそうな表情を浮かべて僕の肩に手を置き優しくそう言った。その優しさが嬉しくもあり、悲しかった。せめて心配をかけまいと、僕は笑顔でおばさんに応えた。

「まだ、平気ですよ」

「フレン…お前…」

アンカも悲しい表情を浮かべ何かを言いかけるが、近くからこそこそと小さな話し声が聞こえてきたことによって自然とそちらに意識が傾く。内容なんて分かりきっている。きっと僕の悪口だろう。

「何だよあいつ、シーフォめ…また良い子ぶりやがって…」

「下民のくせして…汚らわしい」

「早く辞めてくんないかな」

「成り上がりが…」

そう、これはいつものこと。だから気にせず、いつものように聞き流せばいい。
――そのつもりだった。
彼らの口から発せられた、僕がよく知る人物の名が耳に留まったのだ。

「ローウェルも逃げ出したんだろ」

「ああ、あいつ辞めたもんな」

「意気込んで入団したくせに」

「所詮は下町の屑共だな、馬鹿みてえだ」


「…うるさいッ!!」


気がつくと、僕は席を立ち声を張り上げていた。
僕のことは何て罵ろうと構わない。もう聞き慣れた言葉ばかりだ。その刺々しい言葉に痛みすら感じることはなくなった。
だけど、下町のことを、皆を、そしてユーリを侮辱することは許せなかった。
食堂が一瞬静まり返ったが、しばらくするとまたいつもの談笑が聞こえてきた。

「……行こうぜ」

先程までこそこそ話していた騎士達が食堂を出て行く。去り際に耳打ちをされた。今から一人でついて来い、と。
僕は溜息をつきながら立ち上がった。

「…すまない、僕はお先に失礼するよ」

「あ、おいフレン!待てって!」

「アンカは先に部屋に戻っててくれないかな。夜には戻るから」

アンカの制止の声を振り払うように、そう笑顔で言い残して僕は先程出て行った彼らを追う。アンカとおばさん、他の騎士達も――僕を良く思っていない人以外だが――心配そうに食堂を去る僕を見つめていた。
ユーリはこの状況を、どう思うのだろう。
『お前は弱い』と笑うのだろうか。『心配かけさせんな』と怒るのだろうか。『少しぐらいオレに頼れ』と呆れるのだろうか。
どちらにせよ、顔向けなんて、できない。



食堂から十分に離れてから、すぐに彼らの一人が僕に蹴りを入れてきた。

「さっさと歩け」

「さすが下民だよなあ。歩くことさえちゃんとできないなんてよ」

もうお決まりの言葉だ。僕はもう何を言われても反応しなかった。これからやられることが、分かっているから。
彼らについていくと、今はもう使われていない部屋に着いた。彼ら三人と僕が部屋に入ると、一人が扉の鍵を閉めた。見慣れた行為だ。

「…さあ、始めようか?」

三人が、笑った。




もう、何分程経っただろうか。身体中に痛みが走り続ける。

「ぐ…っ!」

「まだまだこんなもんじゃない!自分の無力さを!弱さを!!思い知れッ!!」

部屋に鈍い音が響く。

「…がっ…!!」

最近暴力を振るわれないと思っていたら溜めていたのか。それを解き放つのが今日だったのだろうか。意識を別のことに向け痛みを和らげるために、呑気にそんなことを考えた。しかし、痛みが引いてくれることはなく。

「うぐ…っ…!」

体力に自信はある方だが、さすがにもう限界が来ようとしていた。殴り返してやりたい。いつもの僕ならとうに殴り返しているのに。しかし、最初に警告されたのだ。
殴り返せば他の奴らがどうなるか、わかっているな、と。
初めはどうということはない、皆は強いから平気だと思っていた。しかしよく考えてみれば、貴族の権限により強制退団させられてしまう可能性もあるのだと気付いたのだ。
貴族はなんて卑怯なのだろう。彼らはその権力を振りかざしているのだ。他人の弱さを手に取り、弄ぶようにして。僕なんかより汚らわしいではないか。騎士ならば正面からぶつかってくればいいだろう。だが彼らはやり返されることに恐れているのだ。そして己の力に自信がないのだろう。なんて情けない。そしてやり返せない僕も、なんて情けないのだろうか。いつもならこの三人を気絶させるくらい経でもないのに。もっと力があれば。情けなくて悔しくてたまらなかった。

「助けを呼んでも無駄だからな。お前なんかに誰が来るもんかよ」

そう言われ、僕は彼らを強い意志を込めた瞳で睨みつけて言い返した。

「助けを…呼ぶつもりは…ない…!耐えてみせる…これぐらいのこと…!」

「……はっ、そうかよッ!!」

先程よりも強く殴られた。痛くて痛くてたまらない。意識を手放しそうになる。だけど、耐えなければならない。




「…っはあ!今日はこれぐらいでいいか」

「また明日な、下民」

そう言って彼らは貴族とは思い難い下品な笑い声を上げて、部屋を出て行った。
僕も彼らが出て行ったのを確認してからこの部屋を去ろうと立ち上ろうとした。だけど、身体が動かない。立ち上がろうとすれば身体のあちこちに激痛が走るのだ。ここまで痛いのは初めてだ。

「ぐ…っ…!」

それでも壁にもたれ掛かりながら少しずつ扉へと近付いていく。なんとか立ち上がれたが、一歩進むたび身体に激痛が走る。
それでも歯を食いしばりながらなんとか扉に手を伸ばした。開けようとしたが、

「…っ…やられた…!」

鍵が掛けられていた。
彼らは僕がどういった行動を取るかも考えていたんだ。暴行を加えられ、扉を壊す力もないことも。

「僕も、…まだまだだな…っ!」

それでもなんとか開こうとする。しかし、身体中に走る耐え難い痛み。

「…っ…!」

意識が飛びそうになる。だけど、せめてこの扉を開かなければ。先程も言ったが、僕がいる部屋は今はもう使われていない部屋だ。誰も来ることはないだろう。――彼ら以外には。
どうせ今日一日閉じ込めておいて、また明日暴行を加え続けるつもりなんだろう。騎士にあるまじき行為だ。何故あんな奴らが騎士団に入団しているのか。おそらく貴族の特権だろう。真面目にやっている人にとっては邪魔でしかないのに。
力には自信がある方だ。痛みに耐え、なんとかして扉をこじ開けた。
これぐらい耐えられる。これぐらい大丈夫だ。それに、ここで倒れるわけにはいかない。だって、ユーリと約束したんだから。

(オレは辞めるけど、お前は残ってこの腐った帝国を変えろ)

ああ、わかってる。

(お前の築く帝国なら、きっと)

もちろんさ。必ず―――

(俺達は、いつだって一緒だ)

ああ。わかってるよ。
ユーリがいるから頑張れるんだ。皆が平和に、平等に暮らせる帝国を、僕は。
ユーリのいる、この世界を。
だから、諦めたりなんかしない。


だから、













そして、僕は意識を手放した。







途中でちょっとわけわからなくなりましたフレンいじめにあわせてごめんよおおお
そして突如オリキャラ出してしまって苦手な方すみません!オリキャラいた方が第三者視点見やすいかなあと思ったので
三部作になりましたので続きますー
ちなみにアンカはこんなやつです↓


実は中学生の頃描いてた漫画に出してたやつにちょこっとアレンジ加えただけだったりします漫画は黒歴史!!
2011.2.19 修正


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