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Yuri × Flynn
赤く染まりゆく
ユリフレフレンケガネタ!
続きものです









「共同戦線?」

「ああ。それを提案しに来た」

「提案、というか…頼みに来たんだよね」

「ま、そうだな」

彼ら凛々の明星が訪ねて来たのは共同戦線の申し入れのためだった。話を聞けば、下町の近くに大型の魔物が居座ってしまったらしい。それも多くの仲間を引き連れて。
そこでギルド凛々の明星に依頼が入ったが、いかに強いギルドとは言え人数的に考えても苦戦するだろう。だから彼らは騎士団に救援という名の共同戦線を頼んできたのだ。

「そこで騎士団の力をお借りしたいってわけだ」

「ガウッ!」

「なるほど…」

確かに騎士団ほどの戦力を付けると心強いだろう。それに、ギルドと騎士団の友好関係を築くのにも好都合かもしれない。ユーリ達はこうして団長室にまで頼みに来てくれたのだし、何より下町が危険だ。犠牲が出る前になんとかしなければ。

「どうかな?フレン」

「もちろん。こちらからも提案させてもらうよ」

僕が難しい顔で考え込んでいたせいか、怖々と話し掛けてきたカロルの顔がぱあっと明るくなった。まだまだ子供らしさが溢れている彼に微笑んだ。

「それじゃ、よろしく頼むぜ」

「ああ。ソディア、皆に連絡してくれないか」

「わかりました」

先程まで横で話を傍観していたソディアに頼むと、彼女はそれだけ言うと敬礼し、部屋を去って行った。

「じゃあ君達は先に現場へ行っててくれないかな。こちらも準備ができ次第すぐに向かうよ」

「場所は下町の南東だ、待ってるぜ」

「フレン!よろしくね!」

「こちらこそ」

そう、にこやかに微笑み彼らを見送った。





彼らが去った後、すぐに部隊編成を行い騎士達へと命令を下した。

「今回はギルド凛々の明星との共同戦線になる。皆も知っての通り世界を救った彼らだ。心強いことだが我々も騎士だ、負けてはいられない。騎士として市民を守る。それが我々の役目だ!」

「「はい!」」

僕が騎士として当たり前のことを自分にも言い聞かせるように口にすると、小隊の者達もそのことを噛み締めるかのように返事をした。
ここにいる騎士は皆ほとんどが下町出身の者達だ。そして僕と同期の者達でもある。下町のことだから余計に気合いが入っているのだろう。それは僕も同じだった。
そして一部は貴族。少しずつだが彼らも騎士団長である僕を認めてくれている。ようやく受け入れ始めてくれているのだ。
しかし嫌われていようがいまいが僕はどちらでも構わない。僕はただ帝国をあるべき姿に変えていくだけだから。

「相手は普段と変わらぬ魔物。だが決して油断はしないように!その油断が重傷を招くかもしれない」

「重傷者は無理をせず退くように!我々は死にに行くわけではないんだ!」

こんなことは言わなくてもわかっているであろう。なら何故ここまで念を押すのかと言うと、実際に重傷を負った騎士が仲間を庇い、代わりに受けた攻撃が致命傷となり帰らぬ人になったということが過去に何度かあるのだ。
命を懸ける心意気は立派だと思うが、自分自身が死んでしまっては元も子もないじゃないか。目の前で命の灯を消されてしまうことが何よりつらいと、僕は思う。
ここに集まっている彼らはそれなりに場数も踏んでいて無茶はしないだろうと思うが、現実を目の当たりにするとどんな行動をとるのか誰にもわからない。彼らを信じてはいるのだが。


「以上だ!これよりフレン隊及び第一小隊、第二小隊、第三小隊は現場に向かう。すでにギルド凛々の明星が到着しているだろう。急ぐぞ!」

「「了解!!」」






現場にはやはり凛々の明星が先に到着していた。そこにはぴりぴりとした緊張感が張り詰めている。

「すまない。待たせてしまったね」

「うわあ…すごい騎士の数だね」

僕の後ろを見てカロルが歓声を上げた。一小隊そのものは小数で纏められているが、それが固まるとそれなりの人数になる。

「さすが帝国騎士団ね」

そこにジュディスが笑みを浮かべながら。

「状況は?」

「見ての通りだ」

周りを見渡すと小型、少しばかり中型の魔物達が入り乱れ、強行突破でもしない限り前へと進むことは難しいだろう。しかし聞いていた大型の魔物が見当たらない。目を凝らして辺りを観察していると、ギルドの小さな首領――カロルが僕の服をくいっと引っ張った。

「大型の魔物なら中心部にいるよ。群れを引き連れて住家をよく変えちゃう魔物で、今回はここを住家にしようとしてるみたいなんだ」

「さすがだな、カロル先生」

「情報ありがとう。カロル」

「えへへ…」

ユーリに褒められ僕にお礼を言われて、カロルは少し照れたように笑った。
感覚を研ぎ澄ませていると、魔物の死体が目に留まった。どうやら少しだけだがユーリ達は魔物と戦ったようだ。

「小型の魔物は何匹か倒したがキリがねえな」

「大型の子のところへ向かう前に、この子達が邪魔をしてくるのよ」

「…なるほど。理解したよ」

微笑んでユーリを見ると、彼もまた不敵に笑った。

「わかってくれたみたいだな」

ユーリはそう言うと自分の剣を構え、それに続いてジュディスもラピードも構えた。カロルも小さな身体には似つかわしい武器を構えた。そして僕も、剣を抜いた。

「ソディア、私は自ら前線へと向かう。あとのことは頼んだ」

前線へ出ると聞いて一部の騎士達がどよめいた。それもそうだろう。騎士団長が自ら危険を冒して戦うというのだ。本来なら後ろで指示を出し、前へ出ることは控えるだろう。
しかし今回は後ろに生まれ育った下町があるんだ。他人に任せてはいられなかった。
ソディアはまた怒るだろうか。心配してくれるのは有り難いのだが。そしてソディアが口を開く。

「…了解しました。あまり無茶をなさらないでくださいね」

「わかっているさ」

ソディアにふっと微笑んだ。またソディアも僕に応えるように、柔らかく微笑み返し敬礼した。その微笑みは彼女の女性らしさを引き立て、戦場に咲いた一輪の花のようだった。

「もちろんウィチルも、皆も頼む」

「任せてください!」

「「了解!!」」

ウィチルのまだ子供らしさが抜けない返事。続いて騎士達の強く勇ましい返事が。

「準備はできたか?騎士団長様」

「ああ、待たせたね」

ユーリに答え、集中するために深呼吸。そうして、辺りに響き渡るようなしっかりとした口調で命令を下した。

「第三小隊は後衛で援護を!第一小隊は他の魔物を制圧しろ!フレン隊、中心部へ行くぞ!!第二小隊続け!!」

そして、凛々の明星も。

「皆行くよ!油断しちゃダメだよ!」

「了解、首領」

「わかってるわ」

「ガウ!」

皆、弾かれたように駆けて行った。




戦火の最中、カロルが魔物を仕留めつつこちらに話し掛けてきた。

「他の騎士もそうだけど、やっぱりすごいね騎士団長は!」

「それほどでも……ないよっ!」

言葉と同時に斬撃を放つ。それは見事に魔物達に命中し、それらは断末魔の叫びと共に消え去った。
次々と小型、中型の魔物と倒していく。

「…僕も負けてられないや!」

カロルはそう言うとその小さな身体で魔物へと立ち向かって行った。
しかし想定していたよりも中々前に進むことができない。命令通り小隊が他の魔物を制圧してくれているのだが、魔物の勢いが凄まじい。
それとは対照的にこちらには怪我人がほとんど出ていない。攻撃的なだけで元は弱い魔物らしい。
ある程度の数の魔物を倒すと、中心部に居座っていた大型の魔物が動き出した。
元々手に入れていた情報と彼ら凛々の明星からの情報を纏めると、ここにいる魔物は元々戦を望まない平和主義な魔物だが、住家や群れを荒らされると怒りをあらわにし好戦的になる、ということか。そして周りの魔物が大型を守るようにしている。
なら小型や中型の群れを散らばらせ無視しておき、大型の魔物に集中すればいい、というわけにはいかない。僕らの後ろには下町がある。怒りで我を失い下町の方向へ行ってしまう可能性もある。またここで逃がしてしまっても他の地に被害が及ぶだろう。騎士としても、僕自身としても退けないのだ。
そして今、大型が動き出した。おそらくこちらへ向かってくるだろう。
中心部へ向かう僕達が余計な体力を消費しないように、なるべく他の騎士に任せたのが正解だったようだ。

「隊長、お気をつけて!」

「ああ!」

魔物が動き出したので凛々の明星とも合流する。

「皆、気ィ抜くなよ!」

「わ、わかってるよ!」

ユーリと僕は、顔を見るとお互い頷き合った。
張り詰める緊張感。少しずつ間合いを縮めていく。無論魔物もこちらに近付いてくる。じゃり、という小粒がぶつかり合う音と風の音が聞こえる。
そして、一歩踏み出した、その時。

「ッ来るぞ!!」

ユーリの声に各々構える。
魔物が雄叫びを上げこちらへと向かってくる。体当たりなのだろう、知能は低いのだろうか。
それをするりとかわすと同時に、僕とユーリが魔物の身体を斬りつけた。それに腹を立てたようで針のような鋭利な物をあちらこちらへ飛ばしてくる。
それは不規則に飛び交っておりこのままでは不利だ。どうにか隙を見て攻撃を仕掛けようと駆け出そうとした、その瞬間――


「ユーリッ!!」


カロルの悲痛な叫び。何事かと思い振り向けば、そこには足を貫かれたユーリがしゃがみ込んでいた。そしてその後ろでカロルが尻餅をついている。
状況からしておそらくカロルは予想できない攻撃に翻弄され、身動きが取れなかったのだろう。そんな彼に攻撃が迫ったことに気付いたユーリが、咄嗟にカロルを突き飛ばした。そこを貫かれてしまったのだろう。
足をやられたため動けずにいるユーリを助けに駆け寄ろうとすると、何か嫌な予感がした。首だけを魔物の方に振り向かせると、先程の針状のものが一点に集い始め、さらに鋭利なものへとなっていった。狙う先は――――ユーリだった。

「…っ!」

嫌だ、嫌だよユーリ。
君が傷付くのを、汚れていくのを、もう見たくはないんだ。
君はいつだってそうだ、自分だけが犠牲になろうとして。
その時、ふと頭の中を掠めたのは、


(ユーリ、かってにいなくなっちゃいやだよ)

(オレだって!フレン、かってに消えんなよ)

(うん!ぼく、ユーリのいないせかいなんてかんがえられないよ)

(オレたち、おたがいひつようだな!)




"それは、幼き日に誓った約束"




そうして僕は、ユーリを庇うように彼の前へと飛び出した。
何かが切り裂かれたような音と同時に、身体の中心が熱くなっていく。意識が薄れていく。僕の世界が、閉じていく。これは一体――


「フレンッ!!!」


空に、赤が舞った。
それがひどく、綺麗に見えた。
その時、始めてわかった。僕の身体が貫かれたことに。
ユーリの叫びが聞こえた。














お願いだからそんな顔をしないで。
君は傷を負わずに済んだのだから。
君はずっと、笑っていて。

最後に見たのは、愛しい漆黒の彼だった。








ユリフレ四部作の一作目になります
長いなおい!
最後まで付き合ってもらえたら嬉しいっす


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