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小説
獄寺の放課後相談室(獄寺+京子)



放課後の教室。初めはザワザワと騒がしかったその場所は、時間とともに人が減って 水を打ったように静まり返っている。

もう人気のない教室にはオレと笹川

オレは10代目の補習が終わるのを待っていて笹川は日直日誌を書いている。
知った仲だから特に気まずいとかはない。
ただ取り立てて話す内容もないので各々やりたい事をやっている感じだ

カチカチと頭上から聞こえる時計の針を見れば、補習の終了時間まであと僅か
そろそろかと読んでいた雑誌をしまった時 ふいに笹川が話しかけてきた

「ねぇ獄寺君。ちょっといいかな」
声を潜めているところを見ると恐らく他に聞かれちゃマズイ話だと察して、こっちも少し声をひそめた
「なんだ」
「ツナくん、好きな子いるのかな」
その質問にオレは一瞬固まった

「…いるんじゃねーの」
「誰だか知ってる?」
誰 という問いにオレは怪訝になった。
実際、10代目は笹川に真正面から告白してらっしゃんワケだし、これは確認かなんかか?
そう思って敢えて お前は誰だと思うんだ と聞き返してみた
すると笹川は困った顔をして日誌を閉じる
「分からない…だから獄寺君なら知ってるかなって思って」
分かんない……だあ?

正気かと聞き返そうと思ったが、そこで ああ。と唐突に納得した
そうだった、コイツは山本に勝るとも劣らない天然だったな……

10代目の不憫さに嘆息を漏らす。

言わない方が10代目のためだな。
つかオレが言っても意味がない。
そう判断して、10代目の好きな人はぐらかすことに決めた。

まあ、ヒントぐらいはくれてやるか
携帯を開いて内心を悟らせないようにして呟く
「さーな。だが10代目はソイツにいつも真正面からぶつかってる」
オレがそう言い放つと「そうなんだ…」と呟いて、シュンと俯いた

おい、まじで気づいてねーのか

ダメだ。このままじゃ奥ゆかしい10代目のお力だけではこの女は気づかない

開いていた携帯を閉じて、至極真面目に真正面から顔を見た
「オイ笹川」
「え?」
突然の呼びかけに驚いたのか振り返ってオレを見る。そんなの関係ないとばかりに話を続けた

大ヒントを教えてやるから、よく聞けよ

「何を悩んでんだか知らねーが胸に手を当てて考えてみろ。10代目が今までお前になんて言ってたのかを」
え?それってどういう… 最後に聞こえた笹川の言葉を無視し、オレは教室から出て行った

もうすぐ10代目が補習からお戻りになる
オレは一人で帰るから
お前は10代目と二人で帰ってとっとと自覚しやがれ

これだから天然は厄介だと、もう恒例になりつつある舌打ちをして ポケットから携帯を取り出した

素早く10代目をアドレス帳から探し出し、
『すいません。事情があって先に帰ります!教室に笹川がいますんで二人で帰ってください!』
とメールをしたためて送信。

多分見たら悶絶なさると思う。そこは非常に申し訳ないが10代目のためだ

昇降口に向かう途中、窓越しにすごい早さで廊下を駆け抜ける10代目を見つけた。
たぶんオレからのメールを見てすっ飛んでいらっしゃったんだと思う。

そのまま足早に学校を出て、
タバコをふかしながら自分の教室の窓を見上げた

カーテンに並んだ二つの影
シルエットでわかるその距離感。

…なんか、ガラにもねーことしちまった気がする。むず痒い、変な感じ。

まあそんなオレの感情なんかどーでもいいと背を向け、そのまま帰路についた


ちゃんとしろよ笹川。
10代目の想い人は、お前だ。


………



その後、ダメツナと称される彼が並盛のマドンナを射止めたという噂が広まった

獄寺は風のうわさでそう聞いた時、心の中でガッツポーズした。
そしてその日のうちにツナに照れながら怒られ、感謝されたという。


”Dechimo benedizione di amore!!”
(10代目に愛の祝福あれ!!)

彼と彼女、
キューピッドは目つきの悪い爆弾魔


End.


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