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小説
卒業式B


プログラムは順調に進んだ。
厳かな雰囲気のまま次々と卒業生が通路のど真ん中を歩いていく

実は少し楽しみなことがあって、男子と女子が名簿順2列になって入場するのだが

『沢田』と『笹川』なだけあって

なんと隣同士で入退場!!

神様、オレを沢田という苗字にしてくれてありがとう!!!
ツナは歓喜で満ち溢れていた

「…ツナ君…そろそろ入場だね。なんかドキドキしてきちゃった」
隣で胸に手を当てて軽く深呼吸する彼女がすごくかわいい。犯罪的なほどかわいい。
「オ、オレもちょっと緊張してきた。何回も練習したけどやっぱり本番と練習は違うよね…ははは…」
「そうだね。ほんとにこれで最後なんだって…そう思ったらやっぱり寂しいな」
「京子ちゃん…」
「あ、獄寺君行ったみたい。私たちの番は次の次だね」
「あ、うん!(と、とりあえず右足と右手が一緒に出ないようにーっと…!)」
予行練習で先生に指摘され大恥をかいたのは記憶に新しい
ましてや9代目やお世話になったみんなにそんなところは見せられないと気合を入れた


そしてその結果


気合を

入れすぎた。


勢いよく出した右足が、緩んだ赤いカーペットの上を滑走していったのだ

ズルーーーーッ
「のわぁーーーっ!」

ズベーーン!!


やはり。こんな時であろうとダメツナはダメツナであった


背中から後ろ倒れたにもかかわらず器用に顔面を打ち付け、鼻から鼻血が垂れた
「つ、つつ〜!最悪だ〜!」
すでに会場は厳かな空気などどこかへ消え去って笑い声に包まれていた
知らない下級生からも
『あれがうわさのダメツナ先輩かぁ〜』と罵詈雑言がさざめいた

マ、マジ恥ずかし〜!!

「大丈夫?ツナ君」
ツナを心配した京子がそっと身をかがめ、ティッシュを差し出した
「あ、ありがとう…大丈夫…だと思う」
ティッシュで鼻血を拭き取って、とりあえず落ち着いたので再度道を歩き出したがギャラリーからの視線が集中して気が気でなくなってしまったツナは、結局右手と右腕が同時に出ていたという…

出だしから最悪だよ……もーー!!


だが、ツナの本当の地獄はここからが本番だった……

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あきゅろす。
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