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小説
幸せ太り?(獄ハル+ツナ京)


「では、お先に失礼します。」
「うん。おつかれ、また明日」
控えめにドアが閉まり、獄寺君が出て行った

いいなぁ…オレも早く京子ちゃんのところに帰りたい!

頭の中でエプロンを付けた彼女が天使のように笑う。
思わず頬が緩むが、無情にもデスクに積まれた山のような紙の束を見て否応無しに現実に引き戻された

それをぼうっと眺めていると、軽い断りとともに山本が入ってきた

「なーツナー。ちょっといいか?」
「あ、うん。どうしたの」
「いや、別にどうってことじゃねーんだけどさ」
どうやら仕事の話ではなく、プライベートな事らしい。その証拠に山本は、なにかイタズラめいた笑みを浮かべていた

これ幸いとコーヒーを二人分淹れて、応接セットに崩して座った。
これならリボーンも文句は言うまい
どこからどうみても同僚との打ち合わせ!うん、打ち合わせだ!

コーヒーをすすりながら朗らかな雰囲気のまま山本が声を潜めた
「あのさ、最近獄寺太ってきてると思わね?」
「え、獄寺君が?」
唐突なその質問にちょっと素っ頓狂な返事をしてしまった。ふと山本の言葉でつい先ほど出て行った彼を思い出す

確かに最近シャープな感じからちょっとだけ健康的なラインになった気はするかも…

「言われてみれば…」
「だろ?アレ絶対”幸せ太り”ってやつだぜ。獄寺のやつ『最近ハルが料理作んの上手くなった』ってボヤいてたんだよ」
「へぇ〜、あの獄寺君が…自分の体調管理とか厳しそうなのにね」
「そーなんだよ、だからなおさらラブラブなんだなーってさ。意外だろ?」
「あっ…もしかしてオレも油断してたら…」
「ヘーキヘーキ、ツナももうちょっと太ったほうがいいって」
「ええっ!う……京子ちゃんの料理も美味しいんだよな〜…」
我慢とか…絶対無理だし、残して悲しい顔させたくないし…!

うーん と悩んでいると山本が楽しげに笑った

「ったく、ツナもラブラブなのな!あーオレも早く相手見つけねーと」
「でも山本モテるじゃん」
「いやーぜんっぜん。学生ん時はそれなりだったけどここ最近はな〜、ま、そのうち」

オレの運命の相手も連れてくっから♪
そう言い残して山本が部屋のドアを開けた。
その時、

ガチャ

「あ、獄寺」
「ゲッ……」

なんとそこには扉に張り付いて聞き耳を立てていた獄寺君がいた。一つ言っておくが、オレらはいい歳した大人だ。

あのさ…どう見たって嵐の守護者がボスの部屋を盗み聞きしてたら部下が不審がるでしょーが

ため息まじりに彼を見る
「獄寺くーん、何してんの」
「え、あ、その〜…10代目…」
しどろもどろになりながら慌てる彼の手には書類。
あれ、さっき帰るって出て行ったはずなんだけど…

ジト目で彼を見やれば申し訳なさそうに口を開いた
「出し忘れがあったんで渡そうと思ったんすけど…中からオレの名前が聞こえてきたんでつい…」
耳を真っ赤にして俯く獄寺君。その姿があまりに可愛かったから、つい笑ってしまった

笑わないで下さい…と彼は若干困ったように呟いた
それを山本が更に茶化す
「へーそんなにハルの料理好きなのか」
「なっ!山本テメェ…」
「そっかそっか♪」
「うるせー!それ以上言うんじゃねー!」

あー、もうっ

まあまあと二人を宥めつつ獄寺君にコーヒー出し、ややあって三人揃って応接セットに落ち着いた
「で、どこから聞いてたの?」
コーヒーをすすりながら苦笑いで尋ねると彼は部屋の角を見つめながら話し出した
「本部出てすぐ忘れもんに気がつきまして。急いでここに戻ったら山本が入っていくのが見えたんで…」
「それ最初っからじゃん!!」
「ハハッ そんで照れてたんだな」
「だぁっから照れてねーんだよ!だまってろ!」
「分かりやすー」
「なっ!じゅ、10代目まで…!」

ほんと、ハルが関わると人が変わるよなー獄寺君。
そんな彼を微笑ましく眺めていると、またしてもドアが盛大に開かれた

「聞き耳立てられてんのに気づかないボスってーのもどうかと思うがな」
「なっ!リボーン!?」
ニヒルな(むしろバカにしてさえいるような)笑みを口元に浮かべてドアに寄りかかる黒スーツの男。
すると指で銃の形を作ると、バン と振り上げた
「そんなんじゃいつ暗殺されてもおかしくねーぞ」
「来て早々物騒な事言うなー!!てかなんで来たんだよ!他の依頼中だろ!?」
「終わったから来たんだ。どっかの誰かみたいに仕事ほったらかして世間話したりしないからな」
赤ん坊の頃から変わらずの このムカつく ニッ とした笑い……

なにか言い返してやろうと息を吸った時、先ほど耳に入った言葉が引っかかった


ん?

アレ?

仕事?


………


あーーーーーーっ!!


「しょ、書類終わってねーーー!!」
「ツナ?」
「10代目っ!?」
すぐさま机に戻り、未だデスクを埋めつくさんばかりに鎮座する書類を見とめて言葉を失った

ちゃんと内容を確認して、サインかハンコ…!

「手伝います!」
「大変だなーツナ。オレらに出来る書類だったら手伝うぜ!」
「あ、ありがとう!ごめん!」
バタバタと作業を再開すると遠くから蔑む声が聞こえた

「ダメツナめ」
懐かしいその罵倒も今ではどうでもいい

さっさと終わらせて京子ちゃんの待つ家へ…!


「ああ、そういえば」
作業が半分ぐらい終わった頃、応接セットで高級豆で淹れたコーヒーを嗜んでいたリボーンが何かを思い出したように呟いた
あーもうどうせ小言だろ、無視無視

「街を巡回していたら京子とハルに会ってな、今日は守護者全員を招いてパーティーをするらしいぞ」

その言葉が正しくオツムに伝わるまで約5秒

ん?パーティー?みんなで?

………


って、えええええええぇぇぇぇぇ!!!

思考がまとまらず、慌てたせいでペンのインクを盛大に床にぶちまけた
「な!!ちょ、ちょっ!嘘だろ!?」
「オレは嘘は言わねーぞ」
「何時っ、どこでっ」
しかもなんで京子ちゃんからの連絡ないの!?
ちらりと獄寺君を見るが同様に焦って携帯を開いて、そんな連絡無いと言う

「その書類の山終わらせたら教えてやる」
「んなぁっ!?」
「とっとと終わらせねーとこりゃ集合時間に遅刻だな」
「わーーーっ! い、今すぐ終わらせるから待ったぁ!!」

こうして、書類の山は一瞬にして片付いた
雑にやったらブチ抜くぞと拳銃を突きつけられながらだ

「ハァッ…お、終わった…んで、どこだよ場所」
「会食堂だぞ」
「かいしょ……会食堂ってここの!?」
ボンゴレ本部の!?

「そーだぞ、開始は6時。今が5時54分だから急がねーと……」

ハッ!この時間って職員の帰宅ラッシュだし!エレベーター使ってたら間に合わない!

「ごっ、獄寺君!山本!階段で走るよ!」
「了解っス!」
「おう!てか他の守護者には言ってあんのか?」
「ああ、オレから伝えたぞ」
「もー!なんでいつもこういきなりなんだーーーーッ!」

一人残ったリボーンはまた愉快そうに口の端を持ち上げた

「こりゃ肥った時のダイエットメニューを考えておかねーとな…」

そんなリボーンの呟きもつゆ知らず
3人は息を切らして会食堂へ
待つのは愉快な仲間たちだ



さあ、楽しい楽しいボンゴレ式ディナーはいかが?


End.

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あきゅろす。
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