80.目の前の全てを壊したとしても/original/帽子屋

「アリス、僕の時計が壊れちゃったみたいなんだ。毎朝けたたましく鳴いて僕を起こすんだ。あと帽子がどこかにいってしまったみたいなんだ。あああ、どこいったかな? 僕の大事な帽子……」

「頭の上? ああそうか、帽子は頭の上に被るもんだからね。でも僕の目じゃ確認出来ないんだ。アリス、アリスの目玉を僕にくれないかい?」

「なに、駄目だって? 可笑しなアリス。いつもは僕に優しいのに、今日に限って目玉すら貸してくれないなんて実に滑稽だ。僕は君に何かしてしまったのかな、アリス。それだったら謝るよ。今なら壊れた時計もつけるよ」

「おお、ごめんよアリス。君は僕を見つめられないことに畏怖を感じていたんだね。君がそこまで僕を愛してくれてたなんて知らずに、僕は君になんてことを言ってしまったんだ。そうだよ、そうだともアリス。君は僕を愛してる。僕も君を愛してる。世界で一人だけの完璧なアリス、僕のアリス。君の目玉は魅力的だけど、目玉がついてる君のほうがもっとずっと魅力的だ。どうかこの哀れな帽子屋を許してください」

「ああアリス! なんて君は優しいんだ。聖母マリアのようだ。無償の愛、慈悲、微笑み至極の楽園のようだ。気分がよくなった。帽子を作りたい。さて、部屋に戻って作業でも……ああ、アリス。ところで最近の僕の悩みを聞いてくれるかい? アリス、僕の時計が壊れちゃったみたいなんだ……」






彼なりの愛情表現





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あきゅろす。
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