29.挑戦的な澄んだ目で/DG/ロード


ボクは欲しいものは全部手に入れる。そうしないと、本当に欲しいものに出会った時に、代価が足りなくなる。



「ロード、おかえり」


気付いたら、視界に映ってるのはソイツと空だけだった。

ボクは横になっていて、着ていた服は無残に千切れていた。


「長子の覚醒は一番辛いよな」


ソイツは自分が着ていた真っ黒なコートをボクにかけて、ボクの頭を撫でた。


「歩けるなら……」

「お前、人間だろ」


ボクは立ち上がって、ソイツを見る。

肩に乗っかった黒いコートの匂いがわずらわしい。


「そうだよ、ロードが……ノアが嫌いな人間だ」

「おまえ……」


ボクは睨み、ボクは思い出す。

忌々しく下らない、玩具みたいな馬鹿な人間のこと。

そのガラクタがボクらにしてきたこと。


「殺してやる」

「愛してるよ、ロード」


ソイツは満面の笑顔で言った。

意味が分からなかった。

ソイツはボクに近付いて、なにもしないことをいいことに、ボクに触れ、ボクを抱き締めた。


「愛しいロード。もう泣くな、笑え。人間なんて下衆なものに奪われるな」

「ボクに命令するな」

ソイツはボクの頭を撫でて、さっきより強く抱き締めた。


「ロード、服を買いに行こう。食べ物も、なんでも欲しいものをいってごらん。俺が叶えてあげるから」

「いらない、人間のお前からなんて、なにも!」


そう言って突き放した瞬間、ボクはずっとずっと昔に出会った、一人の人間を思い出した。


「覚醒したばかりなんだから一人は無理だ。伯爵が来るのを待つのか」


ボクはソイツの顔を見た。

ソイツはずっとずっと昔に見た、ユーリって少女に少しだけ似ていた。

男だというのに、おかしなはなしだ。


「変なことしたら、スグ殺しちゃうかもしれないよ?」


ボクの発言に、ソイツは間の抜けた顔をした。

もしかして、この程度で怖じ気づいたのだろうか。


「それじゃ、ロード。まずはお前に似合う服を買おうな」


ソイツはボクの手を引いて、優しく笑った。
















「今度はボクの番だよぉ、愛しいユーリ」

ボクはユーリの好きな服を着て、ユーリが教えてくれた甘いキャンディを舐めながら微笑んだ。

「ユーリだけは絶対誰にもあげない……」













時空衝突事故
(ボクはキミを愛し)
(キミはボクを愛してた)


一番遠い過去、一番近い過去
現在、どんどん離れてく


*本編の捕捉作品



 

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あきゅろす。
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