27.S極同士はくっつかないって/DG/ラビ
「死ぬのか、ユーリ」
「お前が死にそうな顔してどうするんだ」
ひとっこひとりいない暗い路地で、ラビと並んで座って休憩していた。
自分がヘマをして、AKUMAに脇腹を射ぬかれたのだ。
多分、肝臓と腸が大惨事。
「お前はなんでそんなにヘラヘラ笑ってるんさ」
「俺のかわりを勤めてくれてる、ラビのかわりに」
「それじゃまるで俺が薄情者みたいさ」
ラビがうつむいた。
血が出ている脇腹を手でかるくおさえる。
見上げると真っ白な月が、雲ひとつない空に浮かんでた。
「アレン怒るだろうなー」
「ンなことより今は自分の身を案じるべきさ。動けるようになったら、さっさと帰ろ」
「当分無理だな。ファインダーの人探しに行ってよ」
「……まるで、俺を此処から追い出したいように聞こえるんですけど?」
「そう聞こえるんならそうなんじゃないか」
ラビは俺を見ている。
けど俺は月を見ている。
「なんか俺がいると不都合でもあるのか?」
「んー、ラビが優しいからスキになりそう」
「はっ!?」
「あはは、予想外?」
俺はラビを見る。
けど、ラビは月を見た。
「アレンに殺されるさ」
「あいつ過保護だからねー。俺は男だから平気だっていってんのに」
ラビは俺を見た。
それを確認して、うつむいた。
「男なのはイノセンス発動した時だけだろ」
「発動したあとの三日間も男だよ」
「けど、元々は女の子さ!」
「おお! 女扱いしてくれるんだ。ラビは優しいなあ」
「アレンだって、ユーリのこと男だなんて思ったこと一度もねえさ」
「なんでそこでアレンを引き合いに出すんだよ」
顔を上げて、ラビを見る。
ラビは月を見た。
頬が少し紅くなっている。
「やっぱりユーリと言ったらアレンで、アレンと言ったらユーリだから……じゃね?」
「訊かれても困るよ、ラビ」
「えっと、じゃあ、ユーリはアレンを男だと思ってねーんさ?」
俺はラビを見る。
ラビは自分でマフラーを口元に寄せた。
「アレンは優しいに尽きるな」
「……だから好きなんさね」
ラビは目をふせる。
「いや、優しいのは嫌いだ」
ラビは俺を見る。
俺はラビを見る。
真上には真っ白な月。
「優しさは誰かを殺す」
「だれ、って」
「一番大切なヒトでもいいし、俺らでもいいし、自分と全然関係ない人でもいいよ」
「じゃあ、ユーリがさっき俺に言ったスキは?」
「俺は、嘘吐かないよ」
ラビは徐にと立ち上がった。
「それが嘘さね」
「そんなことないよ」
俺は見上げて、笑う。
ラビは月を見て笑う。
頭が良いやつはスキだ。
「おぶってやるからさっさと帰ろうさ」
「重いぜー?」
「なあに、此処で死なれるよりずっとマシさ」
秤にかけた心の重さ
(真っ白な月が見てる)
(心苦しいよ)(いつも、いつも)
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