51.ココロ晴れ模様/復活/沢田


「女の子ってロマンチストだよねー」

「俺の顔見て言わないでくれる?てかそうぼやくユーリも立派な女の子だと思うのは俺だけじゃないよね」


綱吉の部屋でごろごろしながら私はベッドに寝転んでいる。目の前の彼は私が持ってきたお煎餅を食べながらゲームをしている。

パリパリと小気味良い音がしてテンションが上昇していく。一番の効果は綱吉が傍に居ることなんだけれども、一応。


「女の子ではあるけど綱吉よりは男の子っぽい自信はあるよ。ほら喧嘩も私の方が強いし運動能力も明確な差だね。よし、綱吉。腕を貸して御覧なさい」


そう言い切った後にテレビ画面を見る。彼はエリアボスと戦闘中だ。しかしこのお人好し勇者様は呼ばれれば此方を向いてしまうだろう。それは可哀想だから私が彼の傍に行って、腕を触れば良い話だ。


「……細っ!」


えっ、と吃驚する声がして思わず顔が緩む。互いに魔性の性格をしているのかもしれないね。今度綱吉に魔法グッズ被せてみよう。きっと可愛いに違いない。絶対可愛い。


「ユーリ、にやにや止めてよ。怖い。あと腕離してくれないかな。ゲームしづらいんだけど」

「んーじゃあ綱吉くん。もっと可愛くなくなってくれませんか。……いえ、そんなことされたら堪りませんでした。ごめんなさい。そのままでいてください。綱吉大好き!」

「えー」


こいつ馬鹿だ、みたいな顔された。エリアボスを無事倒した彼はコントローラを置いて私に構ってくれる姿勢をとった。って言っても身体を此方に向けて両手を広げてくれただけなんだけどね。充分ですね、すみません。


「綱吉ー!」

「はいはい」


覆い被さるようにして綱吉を抱き締める。ふにふにほわほわ。彼の着てるパーカーから洗剤の良い匂いがしたり、彼の髪からシャンプーの匂いがしたりして私の脳内は完全に薔薇色に染まった。いつもとか言わない。何気無く背中に回されてる腕が愛しくてしょうがない。


「あったかいねー」

「ユーリは冷え症だからね。」

「ふう。綱吉は湯タンポがわりになって良いね。甘い匂いするし、抱き心地良いし声可愛いし…」

「おーい」


話が明後日の方に向いてるよ、と彼に突っ込みをもらって笑う。


夏にはないもの


(やわらかな日差し)
(冷えた手)(それを温める手)

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あきゅろす。
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