48.本当の幸せを、噛みしめて/復活/沢田


「ユーリ、受け取って」


本日は土曜日の為学校が休み。ランボやイーピン、ビアンキにフゥ太にママさんが揃いに揃って外出中。リボーンは用事があるからって飛行機に乗ってどっか行っちゃった。つまり綱吉と二人きり。

こんなふうに男女屋根の下+二人きりという素敵なシチュエーションにも関わらず、綱吉は相変わらずの態度でゲームをしている。かくいう私もそんな彼のために昼御飯を拵えている。全くいつもと変わらない光景。それが嬉しくて嬉しくてたまらない。(何故かって)(こういう関係こそ円満というからだよ)(私の勝手な見解なんだけど)

鼻歌を交えてフライパンを宙に遊ばせながら中の炒飯を上手く掻き混ぜる。シンプルに醤油味にしようか少し凝った中華な味付けにしようか悶々とする。そこでやっと、冒頭の台詞が参入してくるわけだ。

目の前に差し出された小さな箱と綱吉の照れた笑顔。(言うまでもなく後者がメインだ)さっきまで二階でゲームをしていたと思ったのだが、一体いつ降りてきたのだろうか。大空属性である彼の気配は非常に読みにくい。(とある事情で)不老身となった私の唯一の弱点と言えよう。

ふむふむと感心してると目の前の彼は小さな勇気を振り絞って私を真っ直ぐ見た。


「受け取ってくれないの?」

「え、あ、いや。可愛い綱吉をたくさんもらってるから更にプレゼント貰うのは何だが忍びないかなって、でも頂きます」


コンロの火を止めて彼の腕を引く。そんな上目遣いは反則だ、の意味を込めて彼のオデコに唇を落とす。ふわふわの髪が鼻を掠めて甘い香りがした。優しい。面白いくらい真っ赤になってる綱吉を抱き締めて(もちろんプレゼントは潰れないように上手く)笑みを溢す。


「中身は何だか検討つく?」


ぼそっと呟かれた言葉を拾った。何故綱吉がプレゼントを渡してくれるのかが分からない私にとって、ヒント一切無しのこの問題は難しい。でもこの口振りだと入っているものは決まっているのだろう。此れじゃなきゃ駄目、みたいなそんな感じ。上手く言えないけれどそれは伝わった。


「んー、わからない」

「……やっぱりね」


呆れられたような、でもちょっと嬉しそうな溜め息を吐かれた。その様子に首を傾げると彼はそれこそ目の前に箱を突き出してきた。よく見ると箱には赤いリボンと小綺麗な包装紙が巻かれている。


「開けて」


綱吉を抱き締めていた腕を離して彼の言う通りにする。濡れたステンレス台を近くにあった布巾で入念に拭き破かないように包みをそっと開ける。そこに現れたのは可愛い小箱。蓋を持ち上げれば其処にはチョコレートがあった。しかも、なんか、にやけさせる要素の様を型どっている。


「綱吉。別に餌付けなんてしてくれなくたって私は貴方に充分なついてるつもりだったんだけど?って…あれ、何故そんな目で見るの」

「ユーリ、今日は何日で何の日」

「二月十四日でバレンタインの日か!」


自分で淡々と答えながら吃驚した。綱吉は今度こそ呆れた表情で私を見た。いや、まあ当然の反応と言えばそれまでだけどさ……


「なーんか、ユーリってそういうところ抜けてるよね。イベント好きそうに見えるのは俺だけ? え、ちょ、なんで泣くの?」


俺何か悪いことした、と綱吉は目を丸めて私を見る。そんな瞳に映る瞳は強制的に暈されて、胸が苦しくなって苦く笑うしか出来なかった。小箱を置いて再び彼を抱き締める。小さくてふわふわしてて温かいな、なんて。


「ありがと、綱吉。大好き」

「ん、」


肩に埋まった彼の頭をぎゅうと抱き締めると背中を数回叩かれた。もうなんだか嬉しいやら愛しいやらで胸がいっぱいです。







ぽかぽか音色
(happy day!)(with my dear!)


090204
先走りすぎたかな。
友人に逆チョコの存在を教えて頂いて書き上げたもの。萌えネタGrazie!
以下おまけ。


「炒飯冷めたー…」

「冷めても美味しいから別にいいんじゃない?てか途中で話し掛けた俺が悪いわけだし。あ、ユーリ。お返しくれないの?」

「え、ホワイトデーじゃ駄目なの?」

「その日は男の子が女の子に思いを返す日でしょ。だから無効。今、頂戴」

「…‥。綱吉、腕離して。」

「無理」



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