45.君の明日を僕にください/復活/沢田


「ねえ、綱吉。私はいつか……綱吉なんてどうでもいいと思う日がくるのかな。綱吉なんてのはただの人間で、私の興味から外れた別世界の住人。温もりも冷たさも感じないから、私が一方的に愛を差し出すしか出来ないから、この無意味な行為に飽きた私は貴方を忘れるのかな。ねえ、綱吉。」


風が舞う。荒野を揺らす。近くに在る外郭を沿って縁を掻き乱した。合わせて不安定な椅子が音を伏せて葦を差した。

そこに座るのはただの男。

綱吉、と呼ぶ彼女を見て男はほくそ笑む。読んでいた聖書と眺めていた大空を離し、彼女の名を呼ぶ。さも愛しげに優しく淡く。男の唇が動くのを確認すると朝露の止めを知らぬ雫のように流した。


「ねえ、ユーリ。俺はいつか……ユーリなんてどうでもいいと思う日がくるのかな。ユーリなんてのはただの人間で、俺の興味から外れた別世界の住人。温もりも冷たさも感じないから、俺が一方的に愛を差し出すしか出来ないから、この無意味な行為に飽きた俺は君を忘れるのかな。ねえ、ユーリ。」


風が止む。荒々しい草波は静まる。遠くに在る内郭に沿って結びを解き放した。合わせて不安定な足取りが葦を差す。

そこに立つのはただの女。

ユーリ、と呼ぶ彼を見て女は儚く笑む。遠く高き大空を近付けて、彼の名を呼ぶ。さも憎らしげに激しく哀しく。女の手が動くのを確認すると春風の如くその腕を抱き止めた。






移りにけりな
(ああ愛しい君)
(どうして貴方を忘れよう)



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あきゅろす。
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