44.心が寒いんです/復活/沢田



ユーリがいなくなって何日が経ったのだろう。そもそもユーリがいない世界に日付なんてあったっけ。

それにしても……―

彼女は身体を此処に置いたまま、一向に帰って来る気配を見せない。横たわっている身体を抱き上げれば硬く冷たい。ブランケットに染み付いた赤は、きっともう落とせないだろう。


「十代目!」


扉から元気よく飛び出してきた彼は俺とユーリの抜け殻を交互に見て押し黙った。


「ねえ、獄寺君。ユーリはまだ帰って来てない?」


目の前の獄寺君は固まった。俺何か変なこといったかな?


「だってこの赤いのユーリが着けたんだから、ユーリ本人に洗わせなきゃ!」


だろ、と同意を求めてみるが彼は悲痛な表情をして俺を真っ直ぐ見つめた。


「十代目……」

「早く帰ってこないかな、ユーリ」

「十代目!」

「あ、そうだ。仕事が溜まってるから手伝ってもらおっかな」

「十代目!!」

「何、獄寺君。聞こえてるよ」


落ちそうになったユーリの抜け殻を抱き直す。なんて冷たいのだろう。そしてなんて硬いのだろう。


「ユーリは、もう二度と帰ってきません‥…」

「あはは、流石の獄寺君でもその冗談キツいって!」


そういう俺の瞳から涙が流れた。何で、何でユーリは帰ってこないのだろう…‥―


「俺を殺せばよかったのに」


君なら許した。君になら喜んで殺されよう。あの時そう思って目を瞑ったんだ。銃声が最後の最後まで聞こえて、俺は目を開いた。

そこには君。

ユーリが握っている銃の口からは、煙が立ち上っている。何が起きたのか分からなかった。ただ銃声以外の音が聞こえて其処から動けなくなった。


「俺、可笑しくなっちゃったのかな。ごめんね獄寺君…」


屍をベッドに横たわらせて、赤く染まったブランケットを掛けて、手を前に組ませた。ああ君はいつも綺麗だね。


「ユーリ……」


眠りについた彼女の白い頬に触れる。






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(最初で最期の)(優しい君よ)

 

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あきゅろす。
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