39.ショートケーキはいちごから/DRRR!!/臨也
 

あんなやつさっさとくたばってしまえばいいのに!


そう思い、目の前にあるデスクを思い切り蹴った。案の定凹んだ。ベッコベコだ。


「なにをそんなに苛々してる?」


これは自分の声じゃない。


「そんで、なんで俺のデスクが犠牲になんなきゃいけないの?」


臨也の声だ。そして此処は臨也の部屋で、目の前にあるのは臨也のデスクだ。怒りのあまり忘れていた。

臨也は後ろにいる様なので、振り向いてやる。そこにはコンビニ袋を持って、黒髪の色男は突っ立っていた。彼に謝罪する気は毛頭ない。そもそも誰のせいでこんなに苛々してると思ってるんだ。


「無反応つまーんなーい」

「はいはい、私はつまらない人間ですよ」

「何でそんなに不機嫌? せっかく下のコンビニでデザート買ってきてあげたのに」

「あんたが私の携帯電話のメモリを全部消したからよ」

「うわー、くだらね。そんな理由で怒ってるんだ。ユーリちゃんって馬鹿みたい」

「臨也だって自分のパソコンクラッシュさせれたらぶちギレるでしょ」

「とーぜん」

「それと一緒だよ、死ね!」


怒りを露にする私の前を素通りして、デスク前の椅子に座る。そしてビーニル袋から駄菓子を取り出して食べ始めた。その態度が一々腹立つことがわからないのか、わざとやっているのか。恐らく後者だ。いや絶対に。


「はあー、俺が死んじゃったら泣くくせに、思ってないことそうやって簡単に言うよね。やっぱり君は馬鹿だよ。おーばかもの」

「あああ、腹立つ……」

「シズちゃんとのメールを消されたのがそんなにショック? 帝人君の着信履歴を消されたのがそんなに憂鬱?」

「それ以前の問題」

「ふーん、じゃあどのくらい前の問題?」

「……もういい。それより、壊した携帯電話の修理費払ってくれるの?」

「俺が? まさか!」


デスクどころか所持者を殴り飛ばしたい気分だが、此処は我慢だ。きっと平和島さんが纏めてやってくれるだろう。他力本願、平和島本願万々歳だ。


「だと思った。んじゃ、携帯ショップ行ってくる」

「明後日に大幅値下げセール、お買得プランの新設があるけど」

「あんたって優しいんだか優しくないんだかよくわからないよ。あああ、じゃあ三日間は携帯電話買うの我慢しなきゃな」

「へえー、ユーリちゃんは携帯依存症じゃないんだね。今時の子にしてはめっずらしー」

「うざい」

「あっそ。んじゃ、夕飯作ってよ」

「は? 私はあんたの召し使いでも兄弟でも、ましてや彼女でも友達でもないのに? そして会話しろ。脈絡なさすぎ」

「なになに。召し使いか兄弟か彼女か友達になりたいの?」

「復唱するな」

「でも、ざーんねん。俺はユーリちゃんとどれもそういう関係になるつもりはないから」


臨也はにっこり笑う。誰にも真似できそうにないくらい優しく。


「だってユーリちゃんは俺の幼馴染みだもんねー」

「腐れ縁と言え」

「つれないなー、夜ご飯作ってよ」

「あんたが買ってきたデザートによる。あんたが注文するレシピにもよる」

「あ、これね」


臨也は抱えていたビーニル袋から大きめのパックを取り出す。中にはショートケーキが二つ入っていた。


「私がコンビニとかスーパーとかのケーキ嫌いなの知ってるよね。敢えて選んできたの?」

「俺ってそんなやつに見える?」

「見える。とくにこの苺の新鮮身のないこと!」

「苺なんて飾り、別にいいじゃん」

「臨也が苺食べるならそれで手を打とう」

「んじゃー、バスク料理で!」

「今から材料集めて来いと! 鬼かあんた」

「唯のじょーほーやさんですよ」

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