46.君が夜に融けた日/復活/沢田
 

夜になると思い出すのはどうしようもない虚しさで、俺は考えれば考えるほど闇に堕ちていった。警告されたいつかの悪魔の囁きに耳を傾けたのが間違えだったのか、後悔は募りに募って自身を流した。


「苦しい…」


長い廊下を渡り歩いて在るべき所へと向かう。床が針を刺してくるかの如く冷たいが構っていられない。

包囲された黒いカーテンを取り払って寝台に座っている彼女へ歩み寄る。こんな遅い時間だというのに本を読み漁っているようで目元が暗くなっているのを見た。そのことに感心しながら俺はユーリにゆっくりと手を伸ばした。


「嫌な夢でも見ましたか」


彼女の唇から正とも偽とも言えない答えが飛んできて、適当に頷いてみせる。ユーリはそんな様子に笑ったのかそれとも手元の書物に笑ったのか…。何か小さいものを告げると抱き締めることを黙認してくれた。

ユーリは誰よりも優しくて、誰よりも俺を理解してくれる。今この時くらいはそう思っていたかった。そうでないのならこの時間は必要性のない只の空間。だから彼女はいつだってどんなときだって俺の存在を認めてくれる。


「愚かなことはしませんよ」

「でも…」

「世界を終わらせることは容易いけれど、綱吉クンと離れるのはとても難しいですから」


彼女はそう告げると音を立てて笑った。悲しいですねとも呟いた。俺のことについて言ったのか、それとも自分のことについて言ったのか…到底知ることは出来なかった。だって幕切れを引き寄せながら彼女は笑っている。悲しい要素は何処にもない。





虚像的虚無感
(嘘の嘘の嘘の嘘の)
(無限に続く無意味なループ)

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