25.昔から、雑草なんかも好きでした/鋼錬/兄弟
要知識→エルリックと兄弟、一番上。国家錬金術師、錬金術より科学系が得意。
とある町の宿屋。
「だめったらだめ!!」
「姉さんの意地悪! ケチ! わからずや! バカアアアア!」
アルは叫びながら部屋を出ていった。
取り残されたエドとユーリ。
ユーリは腕を組んで、ソファーに座っている。その対角線上にエドが立っていた。
「なあ、姉貴。そんなに拒否らなくてもいいんじゃねーの」
「ああん?」
ユーリは凄味をきかせた。
エドの背中に冷や汗が流れた。
「エドがいつも止めてくれてたから、私は何も言わなかったけど……」
ユーリの目が光った。
「絶対駄目!」
エドは頬をかいた。
「姉貴、そんなに猫嫌いだったのか?」
「違う」
「じゃ、なんで」
「アンタは考えなくていい」
「……またそれかよ」
ユーリは黙った。
エドは溜め息をつく。
「あーあ、アルの奴も可哀想だな。せっかく俺という難関を破ったのに、次は更に強敵と来たもんだ。泣きたくもなるよ」
「……」
「俺はアルを探してくる、姉さんは?」
「ここにいる」
「あっそ」
エドは部屋を出ていった。
部屋に取り残されたのはユーリのみ。
「あんの糞餓鬼ども! 私がアンタ達をどれだけ……どれだけ大切にしてるか分かってないのよ!」
ユーリはソファーを蹴った。
「……」
ユーリはうつ向いて、押し黙る。
一方その頃、アルは街中の川沿いで佇んでいた。
「あーあ、兄さんならともかく、姉さんにあんなこと言うんじゃなかった」
「親愛なるおとーとよ、そりゃ聞き捨てならねーな」
「兄さん!?」
エドはアルの横に座った。
「姉さんが猫嫌いだって知ってた?」
「いや、姉貴は違うって言ってた」
「そうだよね、こんなに可愛いもんね」
アルは鎧の体から猫を出した。
猫は小さく鳴いた。
「俺の見た感じだと、別の理由があったっぽいぞ」
「別の理由?」
「よくわかんねーけどさ……」
エドがそこまで言うと、突然猫が尻尾を立ててアルに威嚇し始めた。
「どうしたんだろ?」
「ちょっと待て、なんか様子が変だぞ」
アルとエドは互いに顔を見合わせた。
「苦しそうだよ、兄さん」
「ね、猫の扱い方なんてわかんねーよ」
「たしか、薬屋ならあったような気がしたんだけど……」
エドとアルは猫を抱えて立ち上がった。
「だから、私は止めたのに」
「姉さん!」
「姉貴!」
二人が横を向くと、そこにはユーリがいた。
「ほら、早くその子を渡して」
アルは猫を渡した。
「……姉さん、怒ってたんじゃないの?」
「怒ってるわ。けど、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
ユーリは本を開き、猫の症状を探し出す。
「毒素……体に悪いものでも食べたのね」
「拾い食いなんて野良猫らしいな」
「うー、猫さん可哀想……」
「きっと大丈夫よ。解毒する草はどこにでもあるモノだから、探しに行くわよ」
ユーリたちは郊外にある草むらまで歩いた。
「この中から探すの?」
「うへー」
「ぼさっとしてないで、この本にあるやつを探して!」
「はーい!」
「はいよ」
「元気になってよかったね」
「そうね」
ユーリの膝の上で猫はじゃれている。
「もう変なもん食うなよって言っても、またやりそーだな」
「あはは」
「……」
沈黙が流れる。
「なあ、姉貴。いつになったらアルに猫を飼わせてやる気だ?」
「……アルとエドの身体が治ったら考えてあげるわ」
エドとアルは顔を見合わせて笑った。
「……じゃあもうすぐだな!」
「そうだね、兄さん!」
ちいさなしあわせを
(不器用なりの愛情表現)
ヒステリック3姉弟
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