287.あしたになあれ/霊王/ハオ

民宿 居間。

「葉、肩もんで」
「えぇえ!? オイラが揉んでほしいくらいなんよ〜」
「今晩の炊事洗濯してあげたでしょー!」
「それはありがたいけどさ。オイラだってアンナの地獄修行でへとへとなんよ」
「わかったわよ、お風呂入ってくる!」

カラカラカラ

「……」

ピシャッ!
カラカラカラ

「閉めるだなんて酷いじゃないか」

葉の髪を伸ばしたような人が立っていた。

「ここは女風呂ですよ? 正気ですか?」
「君に逆上せている意外は正気だよ」

扉の開閉攻防が繰り広げられている。建て付け悪いんだからあんまりしないでほしい。

「じゃあ服を着てください!」
「何にも縛られたくないんだよね!」

ガチャガチャ。
扉が壊れそうである。

「修繕費ばかになんないからやめた。肩痛いし、どいてください。温泉はいる」
「よかった。僕も入る」

手を離して諦めて並んで湯船に浸かる。
襲われたらOSで防衛だ。

「えっと、私のストーカーですか?」
「何言ってるんだい。君の夫だよ」
「生憎私まだ結婚はしていないんですよね」
「1000年前にしてるだろう」

その言葉に驚いて、葉似の少年を見る。

「……」
「どうしたんだい?」
「葉王!?」
「うん。わからなかった?」

目の前の少年はにっこり笑う。
ショックのあまり倒れそうだ。

「えとえと、久しぶりの再会があんまり過ぎない?」
「君が逃げるからだろう。なんなら今からでもハグしようか」
「14歳の少年と抱き合うとか性犯罪者にしたいの、私を」
「もっと深くここで抱き合ってもいいんだよ?」

ざぱぁ!
ハオにお湯をかける。

「何するんだい、ユーリ」
「貴方転生して性格変わったの?」
「久しぶりに妻に会って欲情しないほうが失礼だと思うけど」
「ワーワー、誰に聞かれてるかもわからないのに! よして! っていうか欲情してたの!?」
「君は見ない間に元気になったみたいだね」

ハオは嬉しそうに笑う。

「……貴方はなんだか寂しそうね」
「ユーリに会えたから、少し元気になってきたよ」

ちゅ。
ほっぺにやわらかい感覚が。

「僕が別れ際に行ったこと覚えてる?」
「……婚儀式、ですかね」
「もっと幸せにするよって言ったの」
「今の私は葉とアンナの面倒見るのが楽しくて、先延ばしと言うことにはできないでしょうか?」
「もっと待たせるっていうのかい? 僕がひとりでも平気なんだ」

冷ややかな目で見られる。

「ユーリがそんな冷たい人だなんて知らなかったよ。僕のこと愛してるって言ったのも嘘なんだ」
「嘘なわけないでしょう!」

ばしゃんっ
勢い余って立ち上がってしまう。
恥ずかしいのですぐ戻る。

「嘘なわけないでしょう。ただ、現代の私にも私なりに執着がちょっと出来て、一応顔面は初対面だし、年の差さらに開いちゃってるし、それで急に戻ってきてなんて言われたら、少しくらい時間欲しいわ」
「じゃあ一晩。それ以上待たせたら、ここに来て襲う」
「襲う!? 何でそうなる」
「1000年我慢させてよく言うよ」
「うっ、たしかに。でも私25で、ハオ14でしょう。道徳的にまずいんじゃないかな?」
「常識外のことしてるのに、今更道徳もなにもある? もう僕はユーリを孕ませられる年齢になったよ」
「孕ませっ!?」

どぼん。
湯船の中に顔をうずめる。

「その幼気な顔でそういう事言わないでよ、私が罪悪感にかられるわ」
「ずいぶん現代日本に染まったんだね。人目が気になるなら法律のないところでしようか」
「いやいやそういうことを言ってるんじゃなくてね!」

小首を傾げるハオ。
いい加減逆上せそうだ。

「まあ今はそれは置いといて、ハオこっちおいで」

お湯から上がって、ハオをシャワーの前に座らせる。
ごしごしごし。

「んー、ユーリに髪洗ってもらえるなんて嬉しいな」
「貴方って髪伸ばすの好きよね」
「自然体なだけさ。ユーリ、そこかゆい」
「はいはい」

鏡に映るのは、夫婦と言うより親子に近いんじゃないだろうか。

「親子みたいって思ってるでしょ?」
「ばれた?」
「僕たちは夫婦何だから、見た目でそんな風に思われるのは寂しいよ」
「うっ……ごめん」
「さっき言ったの本当だよ。明日の夜迎えに来るから。話しつけておいてね」

ハオの頭にシャワーを浴びせながら、何だかんだ昔から変わらないなと想いを馳せるのであった。


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