19.夢が醒めても熱は冷めないで/TOG/ラムダ


今日も彼は笑わない。

明日もきっと笑わない。

研究員たちの手から戻って来たときには、抜け殻みたいになっている始末。


「ラムダ、ごめんね」

「………」


しゃがみこむ。

ラムダの前に散らばる積木。

いつもは彼は楽しそうに、それを重ねて構築する。

けど、今日はそれすらしない。


「ラムダ、お腹空かない?」

「……」


ラムダは私を見る。

お腹が空く、なんてことヒューマノイドである彼に起こらないかもしれない。

無垢な瞳が私を捕らえる。


「……い」

「そう」

「……す、く」

「うん」


私はラムダの頭を撫でる。


「おやおや、ユーリくん」


後ろを振り向くと、そこには第一責任者がいた。


「コーネル博士、今日は研究室に閉じ籠ってる予定だったんじゃ……?」

「いやあ、ラムダが気になってしまってね」

「ふふ、わかります。この子放っておけないですよね」


ラムダは首を傾げる。


「私と君くらいだね、ラムダを人間として見ているのは」


コーネル博士はラムダの頭を撫でる。


「コーネルは貴方のことが大好きなのよ」


ラムダはまばたきをする。


「私も大好きよ」

「……」


ラムダはまばたきをする。

どうか、いつかこの子が笑って暮らせますように


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あきゅろす。
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