244.のびやかな君の声/稜/ガンスト
人体実験が国にばれたブライアンは東京へ隠遁した。レミーやξ、私を連れて。

不釣り合いな四人が常に共に居るのは自覚するほどに不自然だということで、レミーはお目付役のξを同伴してよく外出するようになった。

私は万が一ブライアンに何かあった場合に保護するように、そばからあまり離れなかった。……あまり離れなかったのだが、適度に距離を置いて周辺を歩き回ることはざらにあった。

「今日は暑いな」

外出した私は東京のコンクリートのジリジリとした暑さを癒すため、橋の下に逃げ込むことにした。

汚染された川が重くゆるく流れている。

「それで、君はなんだ?」

座り込んだところで、横にいる挙動不審な忍者スタイルの少年に声をかける。怪しいというより、気が弱くて突然の来訪者に勝手に齷齪している印象だ。

「拙者でござるか!?」

拙者だと? と突っ込みそうになったが、上擦った声を聞いてやめた。

「修行中だったなら気にしないで続けてくれ。邪魔なら場所を変える」
「め、滅相もないでござる!」

わたわたと勝手に慌て出す忍者青年の動きがもの珍しく感じた。私の周りには全然いなかったタイプだ。面白い。

「君、素敵だね」
「!!!????」
「いやいやそんなに驚かないでよ。本当素敵なキャラしてると思う」
「えっ、あ、その……」

この時期に如何かと思うが、厚めに巻いたマフラーから半物出した顔を真っ赤にして、忍者少年は固まっている。

レミーとはまた違う可愛さだなとほのぼのとしていると、腕につけているアラームが小さく鳴った。ご主人様の呼び出しだ。

「もう、行くでござるか?」
「惜しいけどね。またどっかで会えるといいな」

少年忍者にばいばいと手を振る。立ち上がって、小型の飛行機を腰に括り付けて、私は天空へと帰って行った。



「また、いつか」

稜の声が静かに響いた。

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