241.君が言うなら、僕は信じる/unknown

「分離不安ってどんな感じなの?」
「別に……」
「それじゃ話にならないよ」
「話したくないからいいの」
「僕は君に興味があるのにな」

部屋の隅っこで彼女はぐだぐだと意味のないことを呟く。彼女の手はクッションを抱いていて、未だ帰らない母の帰宅を待っているようだ。

「わかってるくせに」
「言わないで!」

振り向きざまに彼女は鋭い視線を浴びせてきた。人をも殺せそうな目だけど、僕はそれが好きなので、恐怖より寧ろ感心を覚える。それに其処に僕はいないしね。彼女は生まれつき目が弱いみたいだ。

「偽善者。私は貴方になんか興味ないの」
「僕は興味あるからどいてあげない」
「ほっといて、ほっといてよ」
「このままじゃ君は死んじゃうよ?」
「うるさい! うるさい! 母さんは戻ってくる!」

そう言って、手に持っていたクッションを投げ、近くのコントローラーを投げ、新聞紙を投げ、ティッシュを投げ、ぬいぐるみを投げ、掃除機を投げ、椅子を投げ、机を投げ、身を投げた。

たくさんのものを壊しながら君は言うんだ。僕は本当はこんなことをしたいわけじゃない。僕はこいつらを本当は大切にしたいんだ。壊させるのは、僕自身の意思じゃない。嫌な君が作った、世間体とか批判とか価値観とかだよ。

だから僕は"君"を壊すんだ。




(ひとりぼっちのおはなし)

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