240.実は怒り顏も似合う/ハオ
「ハオ、笑え」
ふんばりヶ丘のとある喫茶店で目の前にいる男性に指示を出す。シャーマンファイトでは最強と謳われている葉王様にだ。
指図された張本人はエスプレッソコーヒーをのみながら、此方をちらりと見やると、また新聞に目を戻してしまった。
「つれないなあ」
「其れ相応の対価が必要なだけだよ」
「何が欲しい?」
「強い嫁さんかな」
「アンナ?」
「悪くないね」
言葉に感情をのせないまま、新聞のスポーツ欄を読んでいる。どうせ興味もないくせに、と悪態を吐くと、ばれたかといってハオは笑った。
「じゃ、次は怒って」
「君は暇なの?」
ハオの溜息がコーヒーの湯気に乗る。自分はロイヤルミルクティーとチーズケーキをいただきながら、ゲームをしているのでそんなに暇ではない。
「ハオって可愛いからさ、色んな表情見たいわけですよ」
「へえ、君が言うなんて意外だよ」
「まあ双子の弟が可愛いから当たり前だろうけどね」
「ん?」
新聞がカサッと揺れた。
「ハオが遊んでくれないから葉のとこ行って第二夫人にでもしてもらおっかな」
「ユーリ? 正気?」
感情をもろに言葉に乗せて、新聞ぐっちゃぐちゃにしてるハオ。作戦成功とちょっとやばいかもという気持ちが交差する。何年経っても冗談が通じない男だ。
「なーにを今更。何やかんやで私は貴方の傍にずっといるでしょうが」
「ふっ」
余裕の笑みかましてみたりしちゃってさ。千年の付き合いも案外脆いものなのかも知れない。でも其れに見合う位にハオの表情は可愛いし魅力的。
「君にはもう騙されないよ」
ほらちょっとこの切なそうな顔も素敵でしょ。
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