238.君中毒/黒子

私の恋人は素敵な人です。優しいし気配りできるしうるさくないし本が好きだし、何より一緒にいてとても穏やかな気持ちでいられます。けど、たったひとつ不便なことがあります。それは…

「ユーリさん、また告白されていましたね? それも僕の目の前で」
「あはは、委員長系のブーム到来なのかしら」

そう! 私の恋人は目の前にいても気付かれないほど影が薄いのです。ワックでバニラシェイクをすする彼はどこか機嫌が悪そう。表情があまり変わらない人だから、なんとなく、だけど。

「私は友人には言っているんだよ? 黒子くんとお付き合いしてるって。一応」
「今の一応は前に掛かるんですよね?」
「そうよ。だって私はあまり友達いないもの」
「いないっていうか、作らないっていうんですよ。貴方のやり方は」

飲み切ったバニラシェイクを握力で潰すなんてらしくないなあ。けどちょっと怖いから今は言わない。

「それにユーリさんの断り方が可愛すぎるから相手が調子に乗るんですよ。まったく…本当はキツイお嬢様系の性格なのに」
「赤くなっちゃうのはしょうがないでしょ!? 別に好きでそうなってるわけじゃないんだから!」
「まあ確かにユーリさんが可愛いのに罪はないですからね」
「可愛い可愛い言うな。黒子くんのほうがずっとかわい「何か言いました?」…いえ」

いたたまれなくなって、ストロベリーシェイクをすする。無表情だから逆に怖いって言うのもあるし、こんなに怒ってる黒子くんも珍しい。

「ああ、いいこと思いつきました」
「何?」
「言ったら絶対止められるので言いません」
「黒子くん…?」
「さ、バニラシェイクも飲み終わりましたし、行きますか」
「また外出るの…」

黒子くんは腰が上がらない私の手を引っ張って、分別されたゴミ箱へカップを放り投げる。

「せっかく眼鏡も髪もセットしたのに消極的ですね? 次ナンパが来たら僕が撃退してあげますから大丈夫ですよ」
「完全に前半がネックになってるのに!」
「はいはい、いいから行きますよ」


私の恋人は素敵な人です。強引だし表情は読めないし何考えてるかよくわからないけど、こんな私のことを可愛いと言って外に連れ出してくれます。そして何より困ったことがあります。

「こうすれば、流石に誰も手を出さないでしょう」

予想もしない大胆さが彼には見え隠れすることです。


(翌日、校内放送で付き合ってる宣言をかましてくれましたとさ)



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