239.愛の発生するところ/DV/カナト

「こんなところに居たんですか、ユーリさん…」

書斎で『卒業』を読んでいると、不機嫌そうな形相でカナトが入ってきた。

「なんで僕に何にも言わないで勝手に行くの?」
「本が読みたかっただけよ」
「僕より大事なの?」
「そんなわけないでしょ。でもずっと一緒にいたら疲れちゃうから、たまにはこうやって一人で…」

カナトがゆっくりと近付いてくる。以前と目は座ったまま。ばさばさと人の本山を崩して行く。本が痛むじゃないかこの野郎と思ってカナトを睨み返すと、そこには悲痛そうに涙をためている表情があった。

「ユーリさんはわかってないんですよ!! 僕は貴方と居て全然疲れないのに!! 僕のこと嫌いだからそんなこというんだ…!!」

バサーっと本が勢いよく舞い散る音。彼の腕の中にいるテディが今にもはち切れそうだ。大事なものなのにぞんざいな扱いをするもんだ。

「カナト」
「なんですか」
「愛してるよ?」
「っ! またそうやって誤魔化そうとする! あの人みたいに!!」

焼け焦げた匂いがする。多分、怒りにかまかけて炎をちらほらまいたのだろう。

「しょうがないなー」

そう言ってぎゅっと抱き締める。だって本当に愛してるんだもの。





炎の中でワルツを



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