214.貴方が好きだと笑って言えたら/オリジナル/キルア

やめてやめてやめて。他でもない私の無残な声が幾多も切り裂いた。痛い暗い助けて。神様が嫌いだなんて思ってないのに、救いを求めてるわけでもないのに。そうだろう?私はここにいて、ただひたすら自分の悲鳴を聞いている。

いや、本当は自分ではない。自分の源の話だ。





「キルア、遅くなってごめんな」
「にいさん?」


男の胸には小さな少年がいる。暗い赤色の瞳を鋭く光らせ、にいさん、を見ている。


「俺のせいで、お前はこんなになったんだ。本当にすまない。これからはたった一人の家族として一緒に生きよう」
「にいさんどうしてあやまるの? 僕はにーさんがだいすきだよ!」
「いいんだ、恨んでくれたって構わないさ」


そう言って男は少年をおぶる。傷つけないように大事に大事に。男は片腕で弟を支えた。鋭く尖った剣を抜き、ブーツを鳴らして歩き始める。


「兵器が逃げ出したぞ!!」


通路で衛兵たちが叫ぶ。男は困った顔して背中で眠っている弟を見る。俺がこいつを守らないといけない。これ以上殺したくはないけど、と男はうつむく。


「No.1004止まれ!」
「すみません。俺、急いんでるんで」


男は顔をあげてにっこりと微笑む。


「言うことをきけ!」


兵隊は銃を向ける。騒ぎを聞きつけたのか、少し遠くで金属の足音がする。男は笑ったまま、剣を突き刺す。


「俺、謝りましたからね」

男が笑う。世界を愛してると笑う。そして、組織の人間を切り捨てて逃げ出した。雪の降る夏のこと。



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