206.死神とワルツ/NieR/魔王
怒りの象徴を、私は忘れはしない。
あの日、すべてが崩壊した。



愛していた人が狂い泣き叫び死んでいくのを見ていた。


「ニーアの名を呼ぶのね」


魔王の座で私はぼやいた。同室にいた彼が振り向く。ああなんて哀れな人でしょう。


「お前が愛していたのは」
「ええ」
「そう、か」
「さきにあやまってあるからね?」
「……」


魔王は部屋の扉に向き直すと、背中から不機嫌な雰囲気を撒き散らした。


「お前のオリジナルもそうだった。弟のキルアを愛していた。俺もヨナを愛していたが、家族としてだ。せっかく女のレプリカントを作ったのに、結局心までは」
「ニーアも大好きよ」
「いい。涙をふけ」
「あら?」


言われて頬を触ると、水滴がゆびについた。ああそうか、心の底から失恋したのだ。愛していた彼は、彼の最愛の人を呼び死んだ。


「くやしい」
「俺も悔しいな」


ニーアが腕を掴み、強引に口づけをしてくる。抵抗もなければ受け入れるわけでもない。ただされるがまま。


「俺のレプリカントもユーリに恋をしてるようだな」
「らしいね。でもいいの、もう疲れたから眠らせて」
「そうはいかない」


ニーアは優しく微笑んで、抱きしめて、耳元で囁いた。愛してると言ってくれた。


「主よ、この世界に会えたこと感謝しています」


ユーリは微笑んで、突き刺さった月を眺めた。


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