♪うさ呂布さんがやってきた。
「新しい街では、上手くやっていけるといいわね。お父様。」
「……ギギ…」
「また、暴れ回ったら駄目よ。お父様。」
「…わかっている、むすめよ。」
「そう?ならいいんだけど。」



うら、うらら。
桜の蕾ほころぶ春陽気。
誘われて公園に繰り出す猫は、ベンチの上でぽかぽかと。

「いいおてんきですにゃあ、ほーとーどの。」
「すっかり、はるだな。」

春の日差しを、身体いっぱい吸い込む様に伸びをする郭淮と。
その隣、大人しく佇んではいるが同じ様に日の恩恵を身体に受けるホウ統。
二匹の猫は、春の訪れを楽しむ様にゆらゆらと尻尾を揺らしながら昼下がりをのんびりと過ごしていた。

ガサ…ッ

「…ん?…ほーとーどの、いま、そこのしげみが うごきませんでしたか?」
「いや、きがつかなかったが…」

伸びを終えて、一息つきつつ降ろした目線の先。
何とはなしに目に付いた公園特有の囲いも兼ねた茂みに、何某かの気配を郭淮は感じたのだが。

「…きのせいですかね、とりかなにか ですかにゃ。」
「ああ、きっとそうだろう。」

ホウ統が察知しなかった事もあり、特に気にする事ではないと思い直し。
また、今度はころりとベンチの上に丸まって日を受けようと―――

ガサッ……ガサ、ガサッ!

「にゃ、にゃあ?」
「な、なにかいるのか?」

……


バッサーッッ!!


「……ギギ!はいとなれい!!」
「にゃああああーっ!?」
「うわああああーっ!?」

その日、揺れる桜の蕾の下。
断末魔にも似た猫の悲鳴が、午後の公園を包み込んだという。



「ちょーこーどの、ちょーこーどの!たいへんですにゃー!!」
「…どうした郭淮、ホウ統。」

バタバタと駆け込む様に帰ってきた二匹の猫に。
只事では無いと思いつつも、冷静に出迎えた張コウは落ち着かせるべく優しく抱え上げる。

「こうえんに、うさぎが でたのですにゃー!!」
「……」
「いや、ちょっとまってください ちょーこーどの!すごく きょうぼうだったのですよ!」
「……兎が?」
「そうですにゃ!まっくろいかたまりが とつげきしてきたのですよ!ねえ、ほーとーどのも みましたよね!?」
「…う、うむ…うさぎ…だったとおもう…」

怪訝そうな顔をして郭淮の話を聞いていた張コウだったが、ホウ統の様子からするに大筋で間違いは無いらしい。

「…で、どうしたのだ?」
「いのちからがら ほーとーどのとにげて、しげみにかくれて"きしゅう"したら いっぱつで てったいしましたにゃ。」
「……そうか。」

強襲してきた兎(未確認)も兎だが、伏兵で撤退させる方もさせる方という気が張コウはしたが。
何はともあれ、無事に安堵する。

ピーンポーン。

「ほっほ!一体、どうされましたかの?」
「じょ、じょくん…」
「おや。どうした、どうした?ホウ統。」

郭淮の只ならぬ声が隣にも響いたのだろう。
一緒に出掛けた筈のホウ統が気になってか、徐庶が顔を出し。
それに気が付いたホウ統は、ふらふらと徐庶の元に身を寄せると。

「じ、じつはのう……」

事の顛末を、告げ始めた。



「はて、その様な黒い兎とは面妖ですなあ。」

ずず、と。
折角なので徐庶も中へ上がり、ホウ統を膝の上に乗せ撫でつつ茶を啜り。
猫たちが遭遇した兎について不思議を思う。

「まったくですにゃ。」

ホウ統が、まだ若干立ち直れていない事に対して。
郭淮の方はというと既に立ち直っているのだが、ここぞとばかりに張コウに甘え寄りつつ茶を啜っている。

「しかし、本当にそれは兎だったのか?」
「まちがいないですよ……」

ピーンポーン。

「…今日は客人が多いな、しかし誰も来る予定は無い筈だが…」
「おれが でてきますよ、ちょーこーどの。」

話の腰を折るインターホンに、郭淮は張コウの膝から降りると。
とてとてと向かい、誰が来訪したものかとドアを開ける。

と。

「……ギ…」
「にゃああああああー!!でたー!ですにゃああ!!」
「…ギギ…!ふんさいせよ…!」

ひょいっ…

「お父様、まさか、もう近所で暴れたの?」
「ギ…」
「にゃっ?」

開けた瞬間に目が合ったのは、先ほど遭遇した兎で。
思わず郭淮は逃げるよりも先に、その場に縮こまってしまったのだが。
その身には特に何も起こらず、恐る恐る眼を開けてみれば女性の足元が。

「……え〜と、どちらさまですかにゃ?」

目線を上げれば件の兎を抱かかえており、嘘の様に兎はすっかり大人しくしている。
どうやら、飼い主が居たのかと思ったのだが。

「私は呂姫よ、こっちはお父様の呂布。」
「……おとうさま?」
「そうよ、何か?」
「…いや、なんでもないですけれども。」

少々、普通の飼い主とペットとは違う関係性の様子。
その辺りには、取り敢えず触れないでおく事にした。

「……それで、一体何の用なのだ?」

あれだけ騒げば気付かぬ筈は無く、玄関口には張コウを始め徐庶とホウ統も一部始終を見届けている。

「ここの上に引っ越してきたの。偶にお父様が暴れるかもしれないから、先に断っておこうかと思って。」

それはどうにかならんのか。
というのが、呂親子以外、満場一致の意見であるが。

「出来るだけ、直ぐに刺して大人しくさせるけど。」

いいのかそれで。

「しかしまあ、何故ここに越してきたのですかな?」
「前に住んでいたところ、騎兵と弓兵と攻城兵ばかりだったのよね。お父様を止められないのよ。」
「ははあ。」
「その点、此処は…」

くるり、涼やかな眼をひと回し。
飼い主と猫の双方を呂姫は見回すと。

「槍だし、伏兵だし、貴方もダメ計持ちだから大丈夫そうね。」
「いや、わたしはへいりょくが 7わりくらいのこられると、げいげきしても てったいしないみたいなのだが…」
「連環があるじゃない。」
「いや、それはそうなのだが…」

問題は、そこでは無いと思われます。

「兎に角、これから宜しく頼むわ。…さ、行くわよ、お父様。」
「ギギ…」

パタン、と閉じたドアの奥。
残されたのは、どうしたものやら佇む二人と二匹。

「…なんだか、すごいのが ひっこしてきましたにゃあ…」
「やれやれ…」
「ほっほ!また、賑やかになりそうですなあ。」
「そういうことじゃないだろう、じょくん…」



うら、うらら。
桜の蕾ほころぶ春陽気。
柔らかな光と共に、春は新しい出会いも運びます。

■終劇■

◆3月のにゃんだぶる。
東京では本日桜の開花宣言も出た事ですし、新しい出会いのお仲間は呂親子(?)です。
うさ呂布さんはアレです、ソフト○ンクのCMみたいなものですから(笑)
サイズは勿論、にゃん仔たちと同じくらいですよ。
大戦3で、すっかり呂布たまにハマってしまいましたとも。
呂姫ちゃんも、槍になってくれて僕には使い馴染む様になったし。

しかしまあ、既に現パロと元の大戦とが同居してますね(苦笑)
ねたでネタという事で。
そういう意味では色々とねたが尽きませんよね、呂布たまは。大好きだ!

しかしその…勢いと即興だけで呂親子を出しちゃったんだけど、今後も書くのか僕(;´∀`)
この先どうなる事やら、僕も分かりません(笑)

2008/03/22 了



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