誰が為の、子守唄
ゆめをみる。
ゆめをみて。

誰に彼に、夢でも逢うの。
毎夜に想う、願い事。



「ん…」

もぞ、と。
徐庶の腕の中で、統にゃんは既に幾度目かの体勢作りを繰り返して。
夜行を好む猫とはいえ、いい加減に家人と共に眠る刻。
しかしながら、どうした事か今宵は一向に眠気を覚えずに居た。

「…寝付けんのか?ホウ統…」
「…ん、ああ…おこしてしまったか?じょくん。」

不意に、きゅうと抱き締められる腕に強さを覚え。
ゆっくりと背を撫でられながら不眠を問われた事に、少々の申し訳無さを統にゃんは想う。

「すまんな…きにしなくていいぞ。」
「いやいや、そうもいくまい。…そうだ、子守唄を唄ってやろうかの。」
「べ、べつに そこまでしてくれんでも…」

赤子でもあるまいし、と。
続けて遠慮を述べるが、徐庶の方としては決定事項の事らしい。
くつくつと嬉しそうに笑み、すうと息を整えて唄いの準備を始めている。

「ほっほ!気にするな、気にするな。そら…」

統にゃんの額に口唇を落とし、それはそっと、耳へと触れ流れて。
囁く様に紡ぎ出されるテノールの調べ。
ファルセットを混じえずに胸声のみで唄われるそれは、闇に透き通り。
しかし時に低く、バリトンの音域は夢魔の色香と誘惑の華。


高と低が心地良く交じり合い、重なり合い。
鼓動を沈め、共鳴し。



―――嗚呼、唄と歌と共に、夜に溶けてゆく。



「〜♪……っと……」
「…すぅ…」

猫の背を擦るまま。
静かに、しかし朗々と唄いを続けていた徐庶だったが。
気が付けば、その相手は既に眠りを覚えて夢中の住人。

「ほっほ…やれ、寝付いてくれたか。」

くうくうと、一定の規則を持って繰り返される寝息。
その寝顔に浮かぶは、居場所を知る安息。

思わず、むにむにと頬を愛でたくなる。

「…さて、私も寝るとしようかな…」



唄いの絶えた室内に、ただ響くは猫の眠り心地。
けれどそれが、唄い手には何よりの子守唄。

■終劇■

◆庶っちは唄える軍師だもの(*´∀`)
いや、アレは「謡える」とか「詠える」なのカシラ。まあいいか。
ハイ・バリトンからテノールの音域、裏声は入れず。ってのが理想です。

バレンタインのメインは、結局ちょこ淮にゃんという事になったので…猫の日は庶統にゃんメインにしてみました。
いや、本当はどっちも書きたかったんだけどね(涙)
結局本当に短い小噺1本くらいしか出来ませんでしたよ…トホホ。
しかし眠りねた多いな自分!あと食べ物(笑)
何という欲求に素直な…(;´∀`)

多分、これからもそんなのばっか増えると思います(苦笑)
恐らく、一番ねたが浮かぶのが寝起きだからだろうな…微妙に眠くて、お腹が空いているから(笑)

2008/02/22 了



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