♪Strawberry Party!!
キラキラの紅い宝石は。
甘くて、酸っぱくて。


ピーンポーン。

「はーい、どちらさまですかね?…あっ、ほーとーどの。」
「こんにちは、かくわい。」
「さんぽの おさそいですか?」

冬の昼下がり、太陽の権勢は短く儚く弱々しく。
猫には、散歩よりも炬燵で丸くが好ましい。
本日の空は晴れて陽が出ているとはいえ、空気は身を切る様な寒々しさを纏ったままで。
とはいえ、お誘いがあれば話は別だけれど。

「いや、きょうは…」

淮にゃんが来訪の意を問うと、どうも統にゃんは何時もの散歩のお誘いに来た訳では無いらしい。
ちょっと安心。

「ほっほ!私もおりますぞ。」
「にゃ、じょしょさん。…おふたりそろって、というのはめずらしいですね。どうしたんですか?」
「実はですなあ…っと、もしや先客がいらっしゃいますかな?」

ひょい、と。
統にゃんの背後に姿を現した徐庶が、来訪の目的を告げるべく淮にゃんへ目線を下げると。
それと同時、玄関先には張コウや淮にゃんの物とはまた別の靴が揃え置かれている事に気付く。

「かにさんと、ひなさんがきているのですよ。」
「おや、おや。噂の。」
「…じょくん、こうつごうではないか?」
「ああ、そうだの。」
「?」

ふたりの会話を聞いていたが、淮にゃんには全容が知れず事の真意を測りかねて不思議顔。
そんな淮にゃんに、ふたりは向き直って。

「…あがらせてもらっても、かまわぬかのう?」
「ええ、もちろんですよ。どうぞですにゃ。」

何はともあれ。
いらっしゃいませ。


「ちょーこーどの、じょしょさんとほーとーどのでしたにゃー。」
「…という事は。今、ウチには二組の徐庶とホウ統が居るのか…」

何事か、この状況。

「お、ほーとー…に、そいつが おまえさんの"じょしょ"か?」
「おや、おや。此方がうさぎのホウ統ですかな?ほっほ!初めまして、宜しくお願い致しますぞ。」
「…雛が、世話になっている…」
「いやいや、こちらこそ。」

初顔合わせの御挨拶は大事です。
だがしかし。
何故にそれをウチでやるのか、というのは張コウさんの心の声。

「いやはや、急にお邪魔をしてすみませんなあ。」
「それ自体は構わんが…」
「ですが、手土産くらいは持って来ておりますぞ。ほっほ!」
「……まさかとは思うが、苺ではなかろうな。」
「おや、見えておりましたか?」

じゃーん。

「かごにいっぱいの…いちごですにゃあ。」
「たべきれそうになくてのう…」
「え、おまえさんたちも いちごをもってきたのか?」
「えっ?」

先程から蟹さんと雛うさぎさんがあたっている炬燵の上に、何某かの包みが置かれている事は認めていたのだが。
徐庶が「手土産」として持ってきた苺の姿を晒し見せると、雛うさぎさんもその包みを御開帳。

じゃっじゃーん。

苺がずらり。

「…どういう事だ。」
「「母上が送…」」
「いや、いい、分かったからそれ以上は言わずともよい。」

どいつもこいつも。

「何ゆえ、俺のところに持って来るのだ…」
「張コウ殿なら、美味しくしてもらえると思いましての。」
「…パティシエだと…雛から聞いたのでな…」
「全く…」
「いいじゃないですか、おれはうれしいですよ。」

どちらの苺も、粒揃いの器量良し揃い。
それらが煌々と輝きを放つ様は、中々に壮観で。

「……それで一体、何を作れば良いのだ?」

つ、と。
張コウは後から来た徐庶が持つ苺に軽く指を這わせると。
諦めも有る、が。
事実、質の良い苺を前にしているのだから。
一層に良さを引き出そうという職業柄からの想いも、有る。

「やっぱり、いちごパフェがいいですにゃ。」
「おれは、いちごのケーキ。」
「いちごだいふく…」
「まあ、どれも構わんが…しかしこの量を捌くとなると、それではあまり量がこなせぬぞ。」
「そうですなあ。」
「…ならば…」

もきゅもきゅ。

「…そのまま、食べれば良いのではないかと…」
「…いや、おい、それじゃいみがないだろ じょしょ。」
「?…ああ、そうか。」
「……本気だったのか……」

いまひとつ、張コウは。
蟹な徐庶と雛うさなホウ統に対して、どの様な付き合い方をしたものか模索中だったのだが。
何となく、解った気がする。

蟹、普通に食べてるし。

「しかしたしかに…そのままたべるのも、よいかもしれぬな。」
「そうですにゃあ。」
「ふ…何だ、結局俺は無用か。」
「にゃあ、だめですよ。パフェはつくってもらいますからね。」
「ふふ…分かっておる…」

いちごパフェの危機!
これは一大事と張コウに釘刺し強請る淮にゃんは、ぐりぐりと頭を撫でられてパフェ無効の危機を無事回避。
そのまま、ひょい、と。
張コウは猫を抱え上げて。

「…では、戴くとするか。」
「にゃあ♪」
「お前たちも、炬燵にあたってはどうだ?」
「ほっほ!それでは失礼しますぞ…そら、ホウ統。」

ひょいっ。

「わっ、わたっ、わたしまでかかえなくてよい!じょくんっ!」
「良いではないか、ほっほ!」

徐庶に抱え上げられ、ぱたぱたと暴れる統にゃんと、全く気にする様子の無い徐庶を見て。
成る程、「徐庶」というのは何処もこういう人間らしい。と、心中で確信したのは雛うさぎ。
身に覚えが有る光景らしい。

「やはり、こうごに たべるべきですかねえ。」

三組三様、苺を囲んで炬燵にあたり始めると。
早速淮にゃんは腕を伸ばし、ふたりの徐庶が持って来た苺を両の掌にひとつずつ乗せる。
どちらにしようかな?

「どっちも うまいぜ。」
「って、ひなさんはやっ。」
「…すでに なんこめなのだ…」

どちらから食べたものか、決めかねる淮にゃんと。
まずは自分の徐君の苺へ手を伸ばした統にゃんを余所に。
もしゅもしゅと、既に蔕の山が築かれ掛けている雛うさぎさん。

「せっかくのりっぱないちごなんですから、もうちょっとこう、ていねいにといいますかね…」
「そうかい?」

淮にゃんの言に、口へ運ぼうとした苺を少し離して。
雛うさぎさんは、まじまじと苺を見詰めてみる。
紅い実が持つ綺羅具合もさる事ながら、蔕の緑がまた、紅を引き立たせる様に瑞々しく映えて。

「…じょしょの、ひとみのいろみたいだな。」
「…そうか?」
「ああ、あかもみどりも…きれいで、おれはすきだぜ。」
「……そうか……ありがとう、雛…嬉しい…」

なでなで。

「…っ、ば、ばかかにっ!べっ、べつにおれは じょしょがすきっていったわけじゃねえぞ!」
「ああ…」

ぐしぐし。

「なーでーるーなー!」
「うらやましいですにゃ…」
「どこがだ!」

引き続き、蟹さんから撫でられ続けている雛うさぎさんは。
結局、苺を自棄食い中。

「ちょーこーどの、いちごをたべさせてくださいにゃ。」
「何だ、急に…」
「たいこうするには、これしかありませんよ。」
「…何の張り合いだ…全く…」

あーん、と。
一体、幾つの苺を想定しているのやら。
めいっぱい淮にゃんは口を開いて、張コウにおねだりを。

「ふっ…やれやれ。」

張コウが丁寧に蔕を取って、苺を猫の口へころり転がすと。
むぐむぐ、しっかり味わって。

「…おいしいですにゃ♪」
「俺に言ってどうする、言うなら徐庶に言え。」
「それはもちろんですけれど…ちょーこーどのにたべさせてもらうのは、やはりとくべつですよ。」
「……ふふっ。」

淮にゃんが、苺のふたつめを希望して。
雛うさぎさんが、未だに撫で撫でされながら苺を食べている傍で。

「ほーうとう♪そら、あーん♪」
「き、きみまで びんじょうしなくてもよいっ!」

統にゃんは、周囲の流れ的にそんな気はしていたが。
案の定、徐庶はにこにこと満面の笑みを湛えながら苺を摘んで準備完了、統にゃん待ち状態。

「そら、そら。遠慮せず、な?」
「…あ、う……うむ……」

控え目ながら口を開くと、ころんと転がり込む苺。
よくよくと味わえば、先程自分で食べた苺と同じ苺の筈なのに。


筈なのに。
嗚呼、そうか。

猫たちも兎も、同じきもち。



キラキラの紅い宝石は。
甘くて、酸っぱくて。
キュン、と。
貴方を想う時と、同じなの。

■終劇■

◆1月5日と1月15日の2回チャンスがあったにも関わらず、あにまるの日まで過ぎて苺の日(殴)
…いやスミマセン、年末年始を怠け過ぎました。
取り敢えず、メイン3組飼い主さんとあにまる全員顔見知りの仲にするのが目的な感じです。
しかし揃ったら揃ったで、庶統と蟹雛の各々の呼び分け方をどうしたものやらてんやわんや(笑)
だってどっちも徐庶とホウ統なんだもの(メダパニ中)

2009/01/25 了



あきゅろす。
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