ブラウン管まで2メートル
「…テレビがみえませんよ、ちょーこーどの。」
「この様なもの、別に見ずとも良かろう。」

夕暮れを覚えた空は、日曜日の終わりを告げ始めていて。
ベッドの上から何某かのバラエティ番組を観ていた淮にゃんの隣に、張コウは寝転がる。
張コウの方が、テレビに近くて。
その番組を観る気があるのかというと、別段無い。

張コウにしてみれば。
休日くらい、普段留守を任せている猫の相手をしてやろうと思って。
軽く抱き締めてみたものなのだが。

「いやですにゃあ、おれは このばんぐみがみたいのですにゃあ。」

テレビを背にしている張コウの胸元に抱き締められている為、淮にゃんには音しか聞こえない。
どうも、猫の方はそれが気に召さない様子。
腕の中でもぞもぞと動き回り、どうにかして観れないものかと張コウの身体を見越そうとする始末。

「…分かった分かった。」

抱き締めたそのまま。
張コウはごろりと身体を反転させて、淮にゃんの身体をテレビの方へ向けさせると。
猫の機嫌は、すぐ直る。

「にゃ♪よくみえますねえ。」

ゴロゴロと、嬉しそうに喉を鳴らすそれ。
しかし、テレビ相手というのはいただけない。



(折角の休みだというのに、つれない猫も居たものだ。)



「だいじょうぶですにゃあ、ちょーこーどの。」
「…ん…何がだ?」


尻尾を、器用に張コウへと摺り寄せて。


「これがおわったら、ずっと ちょーこーどののことを みててあげますにゃ♪」


猫の目線は、今でもブラウン管を見詰めて。


「……そういう事ではないのだがな……」

呆れた笑みを零しつつ。
つれない猫の背に合わせ、軽く身体を丸めてお揃いに。

ぎゅうと抱き締めても。
気紛れな猫の気持ちまでは、まだちょっとお揃いになれないが。

■終劇■

2007/09/28 了



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