I
「…う〜ん…」

寝台の上で無造作に身体を投げ出し。
まだ少し悦楽で定まらない思考を抑える様に、手の甲を額に当て。
郭淮は天井を仰ぎ見つつ、ぼそりと誰に向けるでもなさそうに呟いた。

「……何だか、色々と釈然としないのは何故でしょうねえ。」
「あれだけ好き勝手しておいてか?」

寝台の端に腰掛けながら息を整えていた張コウは、聞き捨てならぬとばかりに後ろの郭淮へ向かって返す。
最も、言葉の端には余裕を含んだ笑みも見えるが。

「最終的には好き勝手されましたよ、俺。」
「そう望んだのであろう?…最終的には、な。」
「……う〜ん……それを言われますと、まあ…そうですけれど……」

軽く張コウが後ろを見やると。
丁度、ちらり目線を送ろうとした郭淮と眼が合う。
それに思わず居心地を悪くしたのは、郭淮の方で。

「…いいですよ、もう。先に寝させてもらいますね。」

そっぽを向く様にして張コウに背を向け。
不貞腐れているのもあってか、少し身体を丸めて寝に入ろうとする。

「……お前……」


しかしそれでは。

ますます。


「……ふ…仕様の無い猫だ……」

ギシリと寝台を軋ませて、張コウも身体を横たえたると。
適当に羽織っただけの寝間着から覗く、郭淮の肩へと口唇を落として。
ゆっくりと、腕を回し背より抱き締める。

「……」
「…どうした?」

何も言わず、もぞもぞと動き出した郭淮に。
意地張りが腕を退けようとでもしたのかと思ったが、どうやら違う様子。

「……おやすみなさい、張コウ殿。」

くるり、振り向いて。
されど顔を合わせようとはせずに、郭淮は張コウの胸元にしがみ付いた。

ぎゅ、と。
張コウの寝間着を握り締めて、甘え寄り。

「…やれやれ、猫を飼うのも楽ではないな…」

皮肉気味に囁くも、自分の胸元に埋められた郭淮の頭を撫でて。
張コウもまた、眼を閉じる。


猫を掻き抱き、眠り落ちる意識の狭間で。
或いは、虎の方が御すのは楽かもしれぬな、と。
そんな事を考え、微笑う自分が可笑しく。
思うにならず振り回されていて。



取り敢えず。
どうしようもなく愛しい、その猫を。



決して離さぬ様、苦しい程に抱き締めた。

■終劇■



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