ふたりでしあわせ
「白猫と黒灰猫の二重奏」での台詞を前提にした場面有り。
読まなくても通じない程ではないと思いますが、念の為(*・ω・)
迅速淮の視点でイチャイチャ。


構われたら突き放すくせに。
構ってくれないと寂しいだとか、酷い猫ぶりだと自身でも思う。

"偶々、聞こえなかった"

そうかもしれない、けれど。

"…張コウ殿"

二度目を口にするのが怖い。
どうして自分は、こんなにも返答の無きを恐れているのだろう。
初めから…しょうがない、のに。
こんな気質の自分。
遅かれ早かれ私よりもっと可愛げのある相手が出来る日が来ると。
それが今だというだけ。

"これで最後にしよう"

目の前に在る筈の背中が、ずっとずっと遠くに感じられる。
何故なのか上手く声が出せない。
振り絞り出した自分の声は、惨めに掠れていると感じられて。
お似合いではないか。

「……ちょ、う……ッ…?!」

―――ビックリ…した。
遠い遠い背が振り向かれたかと思うと、名を呼ぼうとした私の掠れ声を遮り急速に距離を詰め。
嗚呼、そんな風に。
見詰めたりしないで下さい。
また、揺らいでしまうから。

「……そんな顔をするな。」

私は今、自分が如何なる表情をしているのか想像が及ばない。
逆に張コウ殿の表情から推察するならば、困惑を生じさせており。
にも関わらず、そんな表情をしている私を諭す口振りはとても。

「お前に意地悪をしてみようというのは、匙加減が難しいな。」

…意地悪?
少し呆れ混じりに困った顔を浮かべながらも、貴方が微笑む。

"キライになったんじゃ"

そう、言い出し掛けた言葉よりも先に張コウ殿の手が私の兜に伸ばされ、額が露になった―…と。
あたたかな感触。
私の額に落とされた張コウ殿の口唇は、抗えぬ程に心地好くて。
刹那に触れ寄せた、たったそれだけで蕩けそうな思考。

「……ふふっ…」

ずらした兜をそっと戻し、先程から固まったままでいる私の様子が可笑しかったのか、張コウ殿から短い笑みが漏れる。
更には、ぽんぽんと頭を撫でて。

「…いいのです…よ。」
「何がだ?」
「私が張コウ殿に、私にとって大切な人になる…等と言ってしまった事が枷ならば。気にされなくて…いいのですよ。」

あんな事を言ったからだ。
余計な言葉で、きっとずっと、縛り付けてしまっていたんだ。

「初めは…その言葉を気に掛けてお前と接していたかもしれん。」
「っ、ちょうこ…う、どの…」

逞しい腕に引き寄せられる身体。
駄目です、こんなに。
近付いたら―――

「…だが今はそれだけではない、俺は…俺の意志で、お前とずっと一緒にいたいと思っている。」

何て、優しい声だろう。
戦場は元より、平時に於いても聞いた事のない柔らかな。
そんな柔和な声では、掻き消す事が出来ないではないですか。
この、早鐘の如き鼓動を。
爆発しそうな心臓の脈動を。

「…に……す、か…?」
「ん?」
「本当に…私は、張コウ殿の傍に居ても良いのです…か?」
「当たり前だろう。」

一段と大きく跳ねる心臓を見透かした様に胸元へ寄せられた掌。
装具越しに伝わる筈は無いと分かっていても、感じられる掌の熱。
幸せとは何であるかを、私に教えてくれている気がした。

■終劇■

◆2017年も当サイトへの御来訪ありがとう御座いました!
2018年も変わらずのんびり更新だと思いますが、まったり気長にお付き合い頂けたら幸いです。
既に年が明けてから、そこそこ経ってしまっていますが(滝汗)
何はともあれ神速迅速(*´∀`)
診断メーカーの結果からシチュエーションを戴きました。

【幸せそうな2人が見たい】
相手の名前を呼ぼうとした瞬間、じっと見つめられてからおでこにキスをされ、聞いた事のない優しい声で「ずっと一緒にいたい」と言われて、心臓が爆発しそうになる神速張コウ×迅速郭淮
https://shindanmaker.com/597297

デコチューをイメージし易いのは看破淮の方かもしれない(笑)
でも迅速淮の場合は、兜を少しずらす過程が入るのが良いかも。
イチャコラしている神速迅速を今後も増やしていきますぞ!

2018/01/20 了



あきゅろす。
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