ぷちっとHalloween♪
※さんぽけの郭淮襲来〜諦観の後盾〜開催&ハロウィン記念、更新時には両方終了してるけど気にしない。
通常の神速迅速や淮にゃん話とはまた別の、ぷち張コウ&ぷち郭淮の姿をイメージして書いています。


―――とりっく おあ とりーと…

「…ん?」

季節は秋を迎えて深まり。
不意に吹いた一陣の涼風が張コウの傍を通り過ぎる。
ヒュウ、と耳に届く風の音。
そんな自然の奏でに耳を澄ませていると、消え入りそうな声で、けれども確かに誰かの声が聞こえた。
馴染みなど無い筈だが、何故か親しみを覚える口上。
発した主を求め、張コウが周囲を見回せば。

「あ…張コウ、殿。」
「…郭淮?」

何時から居たのか張コウも気付けぬ程、静かに。
だがしかし気付かれて少し困惑した様な表情の郭淮が佇んでいた。
声の主が郭淮である事は明白で、何故なら―――

「どうかしたのか?…俺に用か?」
「いえ、その。…何も聞こえなかったのでしたら、それで構わない事です。」

あくまで普段通りの姿勢を見せようとする郭淮だが。
何故か、兜が「つい先程までは外していたが、理由あって慌てて被り直した」風にズレており。
そして後ろ手で隠せていると思っているのだろうが、黒猫と思われる付け耳の先がチラッと見えてしまう。

「ふ…確かハロウィン…だったな。」
「…そうですね。」
「菓子を貰いに来たか?」
「お菓子よりも、お肉が好きですので。病にならない体力を付ける為には、お菓子は余計です。」

口を「へ」の字にして、「むうっ」とでも言いたげな顔。
否定の意を見せたいのだろうが、張コウにしてみれば愛しいだけ。

「だが、黒猫の付け耳まで用意しているだろう。」
「!…それは…」

後ろ手の付け耳を隠しきれていなかった事に郭淮は気付いたが、既に遅い。
それでも、指摘に対する自らの反応からしてバレていると解っていても。
付け耳を完全に隠そうとするもので。
素直になりきれない様子に、張コウの口元が綻ぶ。

「その付け耳を付けて、もう一度…言ってくれ。俺も菓子を渡す準備をしていたからな。」

こうなってしまったら素直に郭淮の方から「もう一度」を求めるのは難しい。
しかし付き合う内に次第に解ってきた、そんな時は特段に飾らず自分が伝えれば良いのだと。
戦以外は不器用なところがある直情的な張コウからすれば、寧ろ容易い事。

「…私の兜、持ってもらっても構わないでしょうか。」
「ああ、構わんぞ。」

観念して後ろ手を外した郭淮は、黒猫の付け耳を露にして自身の少しズレた兜に手に掛ける。
外した兜を張コウに持ってもらい、付け耳を付け。

「…とりっく おあ とりーと…です。」
「ふふっ、お前からなら悪戯でも別に良いのだがな…こんなので納得してくれるか?」

郭淮の兜を持ったまま、傍に用意して置いていた袋から取り出したのは棒付き飴。
橙と白で構成された渦巻きの飴は、とても大きな物で。
カボチャのオバケがあしらわれた包装。

「ありがとう、御座います。」

想像していたよりも大物が出てきた為か、郭淮は一瞬、困った様な顔を見せはしたが。
受け取った時には、満更でもない様子。
まじまじとカボチャのオバケを見詰める姿が、猫耳も相まって可笑しくも可愛らしい。

「…しかし、その…」
「何でしょうか?」
「黒猫も良いが、やはりお前には白い猫耳の方が良いな。いや、どちらも似合うが…俺の好みの話だ。」
「好み…」

一度、飴から張コウへ向けられた目線が再び飴に戻る。
ほんの少しの思案を経て、紡がれる言葉。

「…私の好みを少々、訂正します。お肉が好きですけれど、お菓子も……好きです。」
「…そうか、なら菓子を準備した甲斐があった。」

大きな飴で表情は隠されてしまったけれど。
何となく、張コウには郭淮がどんな顔をしているのか分かるような気がした。

「さて、そろそろ拠点に戻るか。」
「ええ…あっ、その前に兜を返して下さい。」
「もう少し黒猫のままでいてはどうだ?」
「駄目です、つまりその…張コウ殿の他に、こんな姿を見られる訳には…」
「ふふ、俺から兜を返してもらえずとも、付け耳は自由に外せば良いだろう。」
「!!…それも、そうですね…」

珍しく張コウに一本取られた郭淮は、そそくさと黒猫の付け耳を頭から外す。
飴と付け耳を手に、顔を下げてバツが悪そうに―――

……すぽっ。

「あ…っ…」
「兜は返したからな。…少しズレているみたいだから、それはお前で直してくれ。」
「…少し、どころではありませんよ。」

精一杯の文句を返し、ズレた兜を正すと。
やたらと大きな飴と黒猫の付け耳を手にしている事を除けば、何時もの郭淮に元通り。

「それじゃ行くぞ。」

当たり前のように差し出された張コウの手。
今日も、あまり素直にはなれなかった。
だからせめて、この手だけは。

ぎゅ…

無言で繋がれた手は、とても控え目で。
けれど確と互いを感じ取る事が出来る。
秋の涼風吹く中。
ふたつでひとつの影は、静かな歩みを始めた。


(―――…お肉が好きですけれど、)

(お菓子も、"張コウ殿も"…好きです。)

■終劇■


◆前置きに書きましたが、さんぽけにて10月25日〜11月1日まで開催された郭淮襲来イベ記念でした。
襲来で来てくれるのが最も簡単に親交度を10に出来るし、ハロウィン時期に淮とか完全に自分得。
大戦3迄と比べて厚遇過ぎて困惑している(笑)
そして襲来淮の武具進化をしようとしたら、槍と兜は分かるが最後が肉だったという衝撃。
ち、知力にボーナス振り無いの!?いや、特技に募兵を持てるようになるのは嬉しいけれども肉!
レベルアップ時に「病には敗けん!」とか言い出すし、迅速と同じ筈なのに何だか別のイメージが…
という訳で、気付いたらぷち郭淮にお肉が大好き体力作りキャラが付いてしまっていました(*´∀`)
また、ぷちキャラで小噺を書くかは未定ですけれど。
何かしら今回設定したキャラ付けを活かせそうなネタが浮かんだら、モソモソと書きたいです(*´ω`*)

2018/11/15 了



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